〜今月の3人〜
大森さわこ
映画評論家。ケン・ローチ監督の引退作『オールド・オーク』に感動。以前、彼にもらったサインも大事にしています。
金子裕子
映画ライター。我が家の音響システムを再チェックし、大音響でミュージカル映画三昧。やっぱり『ヘアスプレー』は傑作。
松坂克己
映画ライター・編集。最近はオンラインのみの試写がだいぶ増えてきたが、やはり映画はスクリーンで見たい。
大森さわこ オススメ作品
『ツイッギー』
60年代に一世を風靡した人気モデルの
人物像に迫った心に残るドキュメンタリー

評価点:演出4/演技3/脚本4/映像3/音楽4
あらすじ・概要
細い体とショートカット、大きな瞳が印象的なモデルのツイッギー。16歳で売れっ子モデルとなるが、4年で引退。その後は女優となり、共演男優とも結婚。しかし、途中でつまずきもあった…。
ツイッギーは1960年代のイギリスを代表するファッション・モデル。絶頂期に日本の森永のチョコレートのCFにも登場。中性的でキュートなスタイルが新鮮で、お茶の間でも人気者となった。この映画はそんな伝説の人物に追ったスリリングなドキュメンタリー映画である。

華やかな60年代風俗だけではなく、映画では彼女の人生全体が俯瞰される。現在は70代で、優雅で品のいいレディとなったツイッギー本人が証言者となって過去を振り返る。敬愛するケン・ラッセル監督の『ボーイフレンド』(71)で女優として成功後は、歌手、舞台女優、テレビショーの出演者としても活動。私生活では恋人との別れや結婚生活の破綻があっても、前向きに自然体で生きてきた女性の記録として心に残る。監督は女優でもあるサディ・フロスト。前作『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』も快作だったが、この新作で監督としてさらに本気度を見せる。ポール・マッカートニー親子をはじめゲストも多彩で、全体の構成もいい。
公開中、アンプラグド配給
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金子裕子 オススメ作品
『ママと神さまとシルヴィ・バルタン』
難病を抱えた息子への母の無敵な愛を
絶妙な笑いと涙のさじ加減で描く人生讃歌

評価点:演出5/演技5/脚本4/映像4/音楽5
あらすじ・概要
1963年、パリ。6人兄弟の末っ子ロランは生まれつき内反足で、一生歩けないと宣告される。が、それを信じない母は希望を捨てず孤軍奮闘。いっぽう室内にこもるロランはシルヴィ・バルタンの歌声に心癒されていく。
内反足として生まれた移民の少年。医者からは「一生ひとりで歩けない」と診断されながらも、激烈な母の愛と憧れの歌手シルヴィ・バルタンの歌によっていくつもの奇跡に出会う実話物語。
「私が息子を守る。ミラチクバ!(私の人生を捧げる)」と決意し、あらゆる神と聖人に祈りを捧げながら奔走しまくる母の愛は無敵! 医者も児童福祉局もかなわない。
現実はシリアスだが、その孟母ぶりをコメディタッチで描いているのがとても新鮮。監督が、精子提供によって533人の子持ちになった男を描いた奇想天外コメディ『人生、ブラボー!』(11年)のケン・スコットと知れば納得。親離れしたい息子と子離れできない母の軋轢を正攻法で描きながら、笑いと涙のさじ加減も絶妙な人生讃歌の仕上がり。再現された60年代のパリの街並みやファッションも目に楽しい。なにより「あなたのとりこ」「アイドルを探せ」などバルタンのヒット曲の数々が流れるなかに、ご本人も登場! 嬉しいサプライズだ。
公開中、クロックワークス配給
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松坂克己 オススメ作品
『オールド・オーク』
市井の民を描き続けてきた巨匠ケン・ローチが
分断と排斥の時代に贈る共存と希望の物語

評価点:演出5/演技4/脚本5/映像4/音楽4
あらすじ・概要
2016年、寂れた炭鉱町にシリアからの難民がやってきた。町に唯一残されたパブ“オールド・オーク”の店主TJは難民の女性ヤラと知り合い思いがけない友情を育むが、町には難民を受け入れようとしない人々もいて……。
1936年生れだから今年なんと90歳を迎えるイギリスの監督ケン・ローチ。TVを経ての映画デビュー作『夜空に星のあるように』(67)以来50年以上に渡って作り続けてきた作品は一貫して庶民の生活と闘争を描くものだ。今回も英国北東部の炭鉱の町を舞台に、シリア難民の受け入れをめぐっての分断と諍い、そこからの共存への道・希望が紡がれていく。ローチ自らが最後の作品と語っているように、まさに彼の集大成ともいうべき作品に仕上がっている。
出演者もプロの俳優というよりは、元々は他の業種に就いていたのが様々な理由でローチと知り合い映画に出ることになった人が多い。主役のTJに扮したデイヴ・ターナーは労働組合出身でローチの調査行に同行後『わたしは、ダニエル・ブレイク』に出演した。難民ヤラ役のエブラ・マリは実際にイスラエル占領下のシリアからやってきた。そういった人々の演じる庶民はリアリティに溢れ、ローチが描こうとしている“現実”をまさに体現している。ローチでなければ描けない作品と言えるだろう。
公開中、ファインフィルムズ配給
©Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023



