最新作『ディスクロージャー・デイ』はスティーヴン・スピルバーグ監督自身にとっても重要な一作と言えそうです。というのも、本作が彼が監督人生を通じて描いてきた「エイリアン系SF映画」の集大成と見られているから!これまでにスピルバーグが生み出したヒット作を振り返りながら、なぜこのジャンルに彼が惹かれ続けているのかを探っていきましょう。(文・渡辺麻紀/デジタル編集・スクリーン編集部)

そのフィルモグラフィーで圧倒的に多いエイリアン関連作品

画像: 『E.T.』に登場した「地球外生命体」とスピルバーグ Photo by Mark Sennet/Getty Images

『E.T.』に登場した「地球外生命体」とスピルバーグ
Photo by Mark Sennet/Getty Images

スティーヴン・スピルバーグの最新作『ディスクロージャー・デイ』(26)がアメリカで大きな話題になっている。「近年のスピルバーグ作品の最高傑作」という絶賛の声や、「予告編も観ないほうが映画をより楽しめる」等のアドバイス、さらには「スピルバーグはアメリカ政府からUFO情報を提供して貰って作った」のウワサ話等、さまざまなコメントが氾濫している。考えてみればこの作品、初期段階では全米公開日のほうが先に発表され、タイトルはしばらく伏せられていた。おそらく、さまざまな謎や驚きが散りばめられていて、予備知識ゼロで観るほうがいい映画になっているのだろう。

全米公開直前の情報によると、気象予報士(エミリー・ブラント)が生放送中に地球外からのパワーに憑りつかれてしまうというストーリー。スピルバーグが得意とするエイリアン系SF映画だ。

そう、スピルバーグはエイリアンが大好きなのだ。「インディ・ジョーンズ」や「ジュラシック・パーク」シリーズ等のようなSFファンタジーも数多く手掛けているが、そういうなかで断トツに多いのが“エイリアン映画”。『ジョーズ』(75)でブレイクしたのち、『未知との遭遇』(77)を撮り、82年には普遍的に愛されることになる大ヒット作『E.T.』を生んだ。05年にはH.G.ウェルズの侵略SF小説の映画化『宇宙戦争』をリメイクし、続いてエイリアンと関係なさそうなアドベンチャー・シリーズの第4弾『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08)にも最後、未知の生命体と宇宙船を登場させた。

画像: 『ニューヨーク東8番街の奇跡』

『ニューヨーク東8番街の奇跡』

画像1: 【エポック・メイキングな名作を生み出す天才監督スティーヴン・スピルバーグ】スティーヴン・スピルバーグとエイリアン系SF作品

『ニューヨーク東8番街の奇跡』

DVD:1,572円(税込)
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
© 1987 UNIVERSAL STUDIOS AND AMBLIN PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

画像: 『カウボーイ&エイリアン』のプレミアにやって来たスピルバーグ Photo by Kevin Winter/Getty Images

『カウボーイ&エイリアン』のプレミアにやって来たスピルバーグ
Photo by Kevin Winter/Getty Images

画像: 『TAKEN』 TM & © 2003 DreamWorks L.L.C. All Rights Reserved

『TAKEN』
TM & © 2003 DreamWorks L.L.C. All Rights Reserved

一方、映画の製作総指揮作品では、ちっちゃなフライングソーサーのようなメカニカルな宇宙人と人間の交流を描いた『ニューヨーク東8番街の奇跡』(87)、人間界に潜むエイリアンたちを取り締まる「メン・イン・ブラック」シリーズ(97〜19)、開拓時代を舞台にしたカウボーイVSエイリアンを描くグラフィックノベルの実写映画化『カウボーイ&エイリアン』(11)、そして宇宙からやってきた機械生命体「トランスフォーマー」シリーズ(07〜)等があり、TVでも製作総指揮を担当したミニシリーズ「TAKEN」はエイリアンと三世代に亘る人間家族のかかわりを描いた異色のアブダクトものだった。やっぱりスピルバーグのフィルモグラフィーにはエイリアン系映画やドラマがたくさんある!

画像: 『トランスフォーマー』

『トランスフォーマー』

画像2: 【エポック・メイキングな名作を生み出す天才監督スティーヴン・スピルバーグ】スティーヴン・スピルバーグとエイリアン系SF作品

『トランスフォーマー』

4K Ultra HD+ブルーレイ:6,589円(税込)
Blu-ray:2,075円(税込)/DVD:1,572円(税込)
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング

© 2007 DreamWorks LLC and Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS and all related characters are trademarks of HASBRO. © 2007 HASBRO. All Rights Reserved. © 2017 DW Studios LLC and Paramount Pictures.

スピルバーグのエイリアンに対するスタンス

監督作も製作関係作も圧倒的に多いのだから、この重複も当たり前だろうと思うかもしれない。が、スピルバーグには監督としてのポリシーがある。自身が憧れるフィルムメーカーは『ローマの休日』(53)、『ベン・ハー』(59)等を手掛けた往年の名匠ウィリアム・ワイラー。なぜ彼なのかといえば、ジャンルを問わず手腕を奮っていたから。つまり監督としてのスピルバーグは「同じことを繰り返したくはない。常に新しいものにチャレンジしたい」という姿勢を貫こうとしているということだ。このとき彼がチャレンジしたいと言っていたジャンルはミュージカルと西部劇だった。後年、ミュージカルは『ウエスト・サイド・ストーリー』(21)を監督したので、残るは西部劇になるのだが。

という話はさておき、だったらやっぱり、このエイリアン系作品の多さは気になってしまうではないか。実際、スピルバーグは『未知との遭遇』の40周年アニバーサリー・エディションに収録された特典映像で、こんなことを語っている。

「私は『未知との遭遇』を『ジョーズ』のまえに撮りたかった。UFO現象に興味をもっていたところ、ウォーターゲート事件が起こり、地球外生命体の来訪とか、もっと重大な真実が隠蔽されるのではないかと考えていたんだ」

画像: 『未知との遭遇』 Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『未知との遭遇』
Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

スピルバーグはここで、UFO現象のほうが全米を揺るがしたウォーターゲート事件より重大な真実だと考えていると告白したことになるし、彼にとって『未知との遭遇』は非常に重要な作品ということもわかる。なぜ重要かと言えば、彼が16歳のときに脚本を書き監督もしたSF映画、『Firelight』のリメイクになるからだ。彼の自伝的映画『フェイブルマンズ』(22)でも描かれていたこの円盤の攻撃を描いた作品、スピルバーグにとっては初の長編作品(何と2時間20分もあるらしい)で、ちゃんと劇場でプレミアまでやっている。当人は「最悪の映画」と言っているようだが、思い入れは強いに違いない。

ただし、リメイクとは言ってもエイリアンの目的は正反対だ。『Firelight』は小さな町を破壊しようとする宇宙船を描いているが、『未知との遭遇』の夜空を覆う光のシャンデリアは決して人間を攻撃しない。言語ではなく音楽を用いて人類に話しかけ、子どもの心をもつ純粋な男(リチャード・ドレイファス)を選んで宇宙船に招き入れる。50、60年代に登場したエリアン系映画の多くは彼らを侵略者、人類の敵として描いていたがスピルバーグは真逆のエイリアンを生み出したことになる。それはこの後に撮る『E.T.』にも共通している。地球に残された、見てくれは決してかわいいとは言えないE.T.(エクストラ・テレストリアル/地球外生命体)と、彼を故郷の星に届けようとする子どもたちの友情を描き、このエイリアンもまた善良な訪問者になっている。

This article is a sponsored article by
''.