SNSを中心に社会現象を巻き起こし、映画も大ヒットを記録した『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』。その待望の続編となる映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』8月7日(金)の公開を前に、原作者・汐見夏衛先生へのインタビューが実現。作品に込めた元教員ならではの想いや、映画版での大胆な設定変更に隠された制作陣の深い原作愛、そして前作に続き、主題歌を書き下ろした福山雅治さんとの「鎮魂」を巡るエモーショナルな対談の舞台裏まで、作品への愛が詰まった貴重なお話をたっぷりとお届けします。(取材・文/ほりきみき)

魂が共鳴するキャストの演技と、福山雅治が紡ぐ百合への歌

──主演のキャストお二人の演技をご覧になって、先生の原作のイメージと共鳴した部分、逆に「新鮮な驚き」だった部分を教えてください。

百合に関しては、原作との比較というよりも、私自身も映画『あの花』を何度も観た上で今作を拝見したので、「あの百合がこんな風に成長したんだな、こんな大人になったんだな」という感慨深さがすごくありました。

10代の頃の百合が持っていた真っ直ぐな感情を根底に残しながら、理不尽な先輩教員に対してちょっと歯向かってしまうような気の強さもある。その一方で、社会人として、先生として、きちんと社会性を身につけて頑張っている雰囲気がすごくリアルに出ていて、説得力があって素敵だなと思いました。原作とは年齢設定が全く違うので、映画の制作陣やキャストの皆さんが色々と考え抜いて作り上げてくださった「大人の百合像」だと思うのですが、本当に『あの花』の百合の未来として、とても感慨深く観させていただきました。

涼に関しては、本当に私のイメージにぴったりでした。彼が持つ好青年感というか、素直で明るくて、でもちょっと繊細で気弱なところもある……そういう涼のイメージを、細田(佳央太)さんはそのままの空気感で演じてくださっていました。

細田さんご本人と撮影現場で少しお話しさせていただいたのですが、ものすごく熱心に色々と質問をしてくださって。その佇まい自体が、本当にまさしく「好青年」という雰囲気そのものだったので、本当にぴったりなキャスティングだな、素敵だなと思って観ていました。

画像1: 魂が共鳴するキャストの演技と、福山雅治が紡ぐ百合への歌

──作品をご覧になって、小説では表現できない、映画ならではの表現を感じた部分はありましたか。

いっぱいありました。やっぱり文字での表現と映像での表現とでは、だいぶ違いますよね。

前作の『あの花』を映画で観たときも、やっぱり空襲のシーンが本当にすごくて。私自身、小説の文章でも空襲の恐ろしさや、日常がいきなり奪われる恐怖をしっかり書きたくて、色々と体験談を調べて全力で書いたのですが、どうしても文字だけだと表現に限界があるんですよね。それが映像になると、激しい音や、リアルな炎の色、その熱量などが一瞬で伝わってきて、本能的に「恐ろしい」と分かる。そこが映像の持つ大きな力だなと改めて感動しました。

小説だと、どうしてもモノローグなどで心情を詳しく書き込んでしまうので、説明的になりがちです。それを役者さんの演技や、BGM、効果音だけで表現できてしまうのが、やっぱり映画ならではですよね。大人の世代の方々にとっても観づらくならないよう、ファンタジー感が強くなりすぎない絶妙な良い塩梅で表現されていて、素晴らしいなと思いました。

──前作に続き、今作でも福山雅治さんが主題歌を担当されています。「邂逅」を初めて聴いたとき、どのような印象を受けましたか。また、前作「想望」との違いについてはどのように感じられましたか。

前作の「想望」は、全体としてとても切なく、物語の結末にぴったり寄り添うような楽曲でした。本編を観終えたあとにあの曲が流れることで、一気に感情が押し寄せてくるような、強い余韻を残してくれる主題歌だったと思います。

それに対して、今回の「邂逅」は、最初に聴いたときにどこか明るさを感じたのが印象的でした。音楽的なことは専門ではないので感覚的なお話になってしまうのですが、切なさの中に、未来へと開いていくような光が差し込んでいるように感じられて、その新しさに心を動かされました。

今回の物語は、葛藤を抱えていた百合が、少しずつ前を向いて生きていこうとする過程が描かれています。そのラストに寄り添う楽曲として、「邂逅」はまさにぴったりで、物語の行き着く先をやさしく照らしてくれているように感じて、とても感動しました。

そして何より、歌詞が本当に素晴らしいんです。まだ詳しくはお話しできないのですが、かつて大切に想っていた人がいながら、現代で別の誰かに惹かれてしまう――百合の複雑な心の揺れが、とても詩的で美しい言葉で表現されていて。映画を観終えた方が、エンドロールで流れる歌詞を噛みしめながら、物語の余韻に浸っている姿が自然と目に浮かびました。

それにしても、福山さんの言葉選びの豊かさには、いつも驚かされます。「邂逅」というタイトルもそうですが、日常ではなかなか使わない言葉を、物語の核心を射抜くかたちで、こんなにも美しく提示してくださる。その感性の鋭さには、本当に圧倒されます。

実は前作の「想望」のとき、私はその言葉を知らなくて、「もしかして造語なのかな」と思ったほどでした。でも調べてみるときちんと存在する言葉で、「こんな言葉をどこから見つけてくるんだろう」と驚いたのをよく覚えています。作品に込めた想いを、たった二文字でこれ以上なく的確に表現してくださる、その力には毎回感嘆しています。

……ここからは少し個人的な思い出になってしまうのですが(笑)、中学生の頃、好きなJ-POPの歌詞をノートに書き写すのが趣味で、当時から福山さんのことが大好きで、何度も歌詞を書いていました。特に「Squall」が大好きで、あの曲の情景が目の前に広がるような感覚に、何度も心を動かされた記憶があります。

前作の「想望」でも、ふと夕焼けの情景が立ち上がるような歌詞の瞬間があって、そのときに視界がぱっと開けるような感覚になり、思わず鳥肌が立ちました。そんなふうに、ずっと憧れてきた福山さんに、自分の作品に寄り添う主題歌を書いていただけるということ自体が、私にとっては本当に夢のようなことで……言葉にしきれないほどのうれしさを感じています。

──福山さんが主題歌を書き下ろすことが発表されたときのコメントに「汐見先生が僕との会話の中で印象に残っているとおっしゃっていただいた「鎮魂」。」という一文がありました。福山さんとどのようなお話をされたのでしょうか。

前作の「想望」が完成して、映画が公開されるタイミングのときに対談をさせていただいたんです。その際に福山さんが、「いつも映画やドラマの主題歌を作るときは、これは『誰に対する鎮魂歌(レクイエム)』なのか、誰の魂を鎮めるための曲なのかをいつも考えて作っている」とおっしゃっていて。特に今回のような、命が関わる物語においてはそうだとお話しされていました。

前作では、「今回は彰の鎮魂歌だろう」と考えられたそうです。実は原作の「あの花」の小説は、最後に少しだけ彰目線のエピローグが入って終わるのですが、映画は徹底して百合目線で描かれていて、彰の最期のシーンはあえて省かれていました。でも、その省かれた彰の想いの代わりに、エンドロールで「彰目線」の主題歌である「想望」が流れるという構成になっていたんです。百合目線の物語が、最後は彰の歌で包まれて終わる。福山さんが「誰の魂を鎮めるか」を突き詰めてあの曲を作られたと聞いて、本当に衝撃を受けましたし、すごく印象に残っていました。

ですから、今作の「あの星」の主題歌はどういう気持ちで作られたのかなと思ったときに、「邂逅」の楽曲や歌詞を聴いて、これはどちらかといえば「百合に寄り添う曲」なんだなと感じました。ずっと過去を抱えたままで、どこか心を閉ざし気味だった百合を励まして、未来に目を向けさせるような、そんな優しさがあるなと。過去の悲しい恋を「鎮魂」する、と言うと少し言葉が硬いかもしれませんが、過去の想いを美しく昇華させて次の一歩へ進ませてくれる、そんなお考えで書かれた歌詞なんじゃないかと勝手に思って感激して、福山さんに感想をお伝えしたんです。

そうしたら、福山さんが主題歌発表のコメントで、私のその拙い想像に対してお返事をくださるような形で触れてくださって……。福山さんのコメントにあった「今作においてそれは、哀しみや苦しみを過去に封じ込めるのではなく、心に宿し共に前進することと解釈しております」という言葉は、まさに私の感じた想いに、福山さんがさらに深い答えを返してくださったということなのだと思います。

私の世代にとって、福山さんは物心がついてJ-POPを聴き始めた時から、毎週のようにテレビの歌番組で輝いていた大スターです。うちの母も「ましゃ!」と言って熱狂していましたし(笑)、家にアルバムもあったので本当によく聴いて育ちました。私は昔から小説が好きだったこともあって、音楽を聴くときも歌詞をすごく重視するタイプだったのですが、そんな憧れの福山さんから、自分の作品のためにこんなにも素晴らしい歌詞を贈っていただけて、本当に、言葉にできないほどうれしいです。

画像2: 魂が共鳴するキャストの演技と、福山雅治が紡ぐ百合への歌

──監督やスタッフの方々とのやり取りの中で、作品への信頼を強く実感された瞬間はありましたか。

実は前作の『あの花』の段階から、制作についてはかなり思い切ってお任せしていたんです。スタッフの皆さんとは舞台挨拶などでお会いする機会が多かったのですが、『あの星』の制作決定が発表された際に、プロデューサーの西さんが「一番喜んでほしいのは汐見先生です」とおっしゃってくださって。その言葉を聞いたときに、こんなにも温かい思いで作品に向き合ってくださっているんだと感じて、本当にうれしく、胸がいっぱいになりました。

普段のやり取りの中でも、スタッフの皆さんの言葉の端々から、原作を大切にしようとしてくださっている気持ちが伝わってきていました。だからこそ、企画書を拝見した段階から不安はまったくなく、「今回もお任せしよう」と自然に思うことができました。

実際に完成した作品を観て、心から「いい映画だな」と感じました。映画と原作では設定やストーリーに違いもありますし、特に『あの星』は大きく変わっている部分もあります。でも、百合は涼と出会い、惹かれ合いながらもそれぞれに葛藤を抱え、最後にはある決断をする――その物語の軸はしっかりと受け継がれていましたし、二人の根底にある人物像も変わっていません。

言うならば、味付けは違っても、同じ素材から生まれた料理のような感覚でしょうか。原作のエッセンスを丁寧にすくい取りながら、映画として新しい形に再構築してくださったのだと感じています。

『あの花』に続いて、『あの星』もまた、こうして素晴らしい作品として届けていただけたことを、本当にありがたく思っていますし、感謝の気持ちでいっぱいです。

画像3: 魂が共鳴するキャストの演技と、福山雅治が紡ぐ百合への歌

<PROFILE> 
汐見夏衛(しおみなつえ) 
鹿児島県出身。愛知県在住。 
高校の国語教師として働きながら、小説サイト「野いちご」で趣味として小説の執筆をスタートした。2016年に『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版)で書籍化デビュー。2023年に著書『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(スターツ出版)が映画化。映像化作品は本作が3作目となる。 <その他の主な著作に『まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい』(スターツ出版)、『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』(KADOKAWA)、『さよならごはんを今夜も君と』(幻冬舎)などがある。

『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』8月7日(金)より全国ロードショー

画像: 映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』予告【8.7(fri)公開】 youtu.be

映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』予告【8.7(fri)公開】

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<STORY> 
空に消えた彰(水上恒司)との別れから7年。 
彰の夢でもあった高校教師になった百合(福原遥)は、忙しい毎日を送るが、彰への想いは、1945年の百合が咲く丘に取り残されたままだった。
そんな彼女の前に、彰の面影を持つ青年・涼(細田佳央太)が現れる。臨時的任用教員として百合のクラスの副担任になるという。自分を真っ直ぐに想ってくれる涼に揺れ動く百合であったが、彰を裏切るようで、恋の一歩を踏み出すことができない。
葛藤の中、百合が出会ったのは、ホスピスで穏やかな余生を過ごす年老いた千代(倍賞千恵子)だった――。
石丸(伊藤健太郎)を失った後、千代(出口夏希)が歩んだもう一つの愛の形。そして千代から百合に託されたのは、出撃直前の彰が遺した、未来の百合へ贈る一冊の本。そこに込められたメッセージとは…?
夏祭りの夜、星降る丘に奇跡が舞い降りる――。

<STAFF&CAST> 
監督:新城毅彦 
脚本:山浦 雅大 
出演:福原 遥、細田 佳央太、出口 夏希、豊嶋 花、井之脇 海、伊藤 健太郎、中嶋 朋子、倍賞 千恵子 
配給:松竹 
© 2026「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」製作委員会  

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