カバー画像:『隣人たち』より © 2023 MINSTINCT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
イントロダクション
閑静な雰囲気が漂う1960年代アメリカ郊外。お隣り同士で幸福な家庭を築いていた主婦セリーヌとアリスは、共に同い年の一人息子を持ち、親友として互いを理解し合っていたが、ある悲惨な事故をきっかけにその関係が一変してしまう。疑心暗鬼に陥り急速に悪化していく二人の運命の行方は?

バーバラ・アベルの小説を基に、ベルギーのマグリット賞で史上最多の9部門を受賞したオリヴィエ・マッセ=ドゥバス監督の『母親たち(原題)』のハリウッド・リメイクで、主演のジェシカ・チャステインとアン・ハサウェイの2大女優が共同で製作も務めているサイコ・スリラー。監督は『博士と彼女のセオリー』などで国際的に活躍するベテラン撮影監督のブノワ・ドゥロームで、これが監督デビュー作となり、本作では撮影も兼任している。共演はノルウェー俳優のアンデルシュ・ダニエルセン・リー、『いまを生きる』のジョシュ・チャールズら。全米では気鋭のNEONが配給して話題となっている。
あらすじ
1960年代アメリカの大都市郊外で、隣り合う家に住むセリーヌ(ハサウェイ)とアリス(チャステイン)は、それぞれ余裕ある家庭の主婦で、同い年の一人息子を持つ親友同士として、幸福な生活を送っていた。ところがセリーヌの誕生パーティの翌日、体調不良で学校を休んでいたセリーヌの息子マックスが、自宅のバルコニーから転落し、急死するという不幸な事故が起きる。最愛の息子を失ったセリーヌは2度と子供を望めない身で、夫ダミアン(チャールズ)の落ち込みも一層だった。打ちひしがれる2人の姿に、現場を目撃しながら助けられなかったアリスも罪悪感を覚える。

やがてセリーヌは悲しみを共有するかのように、アリスの息子テオとの距離を縮めていく。彼女は徐々に立ち直り、アリスとの関係も元に戻ったように見えたが、アリスは些細なことをきっかけに、セリーヌの行動に疑問を持ち始める。もしかしてセリーヌは息子を救えなかった自分を恨み、復讐しようとしているのではないか?…と。
登場人物
セリーヌ(アン・ハサウェイ)
一人息子を失う悲劇に見舞われる主婦。再度妊娠できない身のため喪失感が深い。
セリーヌ(アン・ハサウェイ)
アリス(ジェシカ・チャステイン)
親友セリーヌの行動に疑念を持ち始める隣人。不安症の再発を危惧されている。
アリス(ジェシカ・チャステイン)
見どころ
Check - 1 スタッフが惚れ込んだオリジナル版
本作はベルギー映画『母親たち(原題)』のリメイク。このオリジナルはベルギーの人気作家バーバラ・アベルの小説「Derrière la Haine」を基に、オリヴィエ・マッセ=ドゥパス監督が2018年に映像化したもの。本国のマグリット賞で史上最多の9部門を受賞し、トロント映画祭で上映された際にジェシカ・チャステインをマネジメントする製作者ポール・ネルソンが惚れ込み、これを受けたジェシカは共演に親友のアン・ハサウェイを提案。ジェシカとアンがそろってプロデュースも兼任することが決まったという。オリジナルのマッセ=ドゥパスが監督する予定だったが、家族の緊急事態で降板し、ジェシカとアンが以前一緒に仕事をした経験がある撮影監督のブノワ・ドゥロームに「あなたが監督もしませんか?」とアプローチし、ドゥロームの監督デビューが決まったという。
Check - 2 ヒッチコック作品の影響
本作の物語は、郊外に住む家族のドラマからアルフレッド・ヒッチコック作品的なスリラーへと移行する。ドゥローム監督は「ヒッチコックは映画産業に数多くの革新をもたらし、フロイト的概念を信じていました。いま彼の作品を見ると実に現代的だと気づきます、現代の多くの映画よりモダンなんです」と言う。ヒッチコックの影響を受けている映画人は多く、製作のポール・ネルソンもその一人。「私もヒッチコック作品の大ファンです。『隣人たち』はそのトーンと雰囲気あるスリルを強く想起させました」とこの映画がヒッチコック的要素が強いことを認めている。「本作のスリルの一部は、アリスやセリーヌの心の内が読めない点にあります」と彼が言うように、2人の主人公がどんな考えを持っているか確実に見せないことで不安感を増すような演出になっている。
Check - 3 1960年代カルチャーの再現

本作の舞台となる1960年代はアメリカの古き良き時代というイメージがある。ドゥローム監督は「私はアメリカ生まれではないですが、60年代の映画が大好きで、視覚的にもこの時代に強く惹かれます」と言う。彼がこの時代を正確に再現するために組んだのが、プロダクションデザイナーのラッセル・バーンズと衣装デザイナーのミッチェル・トラヴァーズ。2人は密に連携を取り、特にトラヴァーズはセットも衣装も「すべてが同じ頭脳から生まれたように感じさせたかった」という。「女性たちが自宅に飾る美術品はどんなものか。子供に作る朝食まで、抽象的な細部にこだわりました」と胸を張る60年代の家具、建築、主婦が着る服装、夫が着る衣装など、彼らの表現したディテールも味わいたい。
COLUMN
アン・ハサウェイとジェシカ・チャステイン
2大オスカー女優本格激突!
本作の最大の見どころの一つと言えそうなのが、2人の大物スターの直接対決を目の当たりにできることと言えそう。セリーヌを演じるアン・ハサウェイとアリスを演じるジェシカ・チャステインは、これまでも『インターステラー』(15)『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』(22)といった共演作があるが、今回のようにがっぷりと組んだ演技合戦を見せるのは初と言っていい。先にこの企画に着手したジェシカが、共演者としてアンをチョイスしたのだが、どちらもプロデューサーを兼ねるほど乗り気になった作品だ。

製作者の一人ポール・ネルソンは「ジェシカとアンは素晴らしい友情で結ばれていて、脚本から衣装、ヘアメイクに至るまで、それぞれのキャラクターを深く考察する姿勢が共通しています。またもちろんどちらも名優ですから、互角の演技を繰り広げる様子は圧巻でした」と証言している。セリーヌは一人息子を失い、その現場に偶然居合わせた隣家の友人アリスをどう見ているのか? アリスは罪悪感に苛まれながら、自分の息子と距離を縮めていく悲劇の友人セリーヌとどう向き合うか? 緊張感に溢れた関係をスリリングに演じる2人の熱演はどちらも一級品だ。
『隣人たち』
2026年7月24日(金)公開
アメリカ=ベルギー=フランス=イギリス/2024年/1時間34分/ギャガ配給
監督:ブノワ・ドゥローム
出演:ジェシカ・チャステイン、アン・ハサウェイ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジョシュ・チャールズ
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