カバー画像:Photo by Manuel Lagos Cid/Paris Match/Contour by Getty Images
実写へのこだわりを深めつつ、理論物理学に基づくCGにも挑戦

実写で撮れるものはすべて撮った『インセプション』(2010)

『インセプション』
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©2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
スパイアクション『インセプション』(10)は学生時代のアイデアをもとに、長年にわたり取り組んできたオリジナル作品。相手の潜在意識に潜入するスパイチームの活躍が描かれる。街が折りたたまれたり夢の階層の崩壊などスペクタクルにCGを使いつつ、アスファルトを蹴散らし路上を走る列車や、街中が連鎖的に爆発する幻想的な爆破カットは実写で撮影。重力が変わる廊下シーンに使われた、360度回転するセットも話題を呼んだ。撮影可能なものは実写で撮る姿勢は本作によって定着した。

スタジアムを実際に爆破!1/3超がIMAX®撮影『ダークナイト ライジング』(2012)

『ダークナイト ライジング』
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© 2012 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved. BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.
次は何を実写で撮るか注目された『ダークナイト ライジング』(12)は、バットマンの完結編だ。飛行機が宙吊りにされ解体されたり、破壊力の弱い火薬を仕掛け実際にスタジアムを爆破するなど主要アクション&スペクタクルは実写で撮影。本編165分のうち約70分にIMAX®を使用した。

理論物理学に基づくCGも話題に『インターステラー』(2014)

『インターステラー』
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©2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
最新の理論物理学に基づく宇宙SF『インターステラー』(14)は、崩壊する地球から移住するための惑星を探す物語。アインシュタインの方程式や相対性理論に基づく計算データで作製したリアルなブラックホールのCGは、物理学の学会誌でも取り上げられた。カナダの広大な敷地に撮影用のトウモロコシ畑を作り砂嵐を起こしたり、四次元空間をセットで組むなど実写主義は本作でも踏襲。撮影監督はその後ノーラン組で活躍するホイテ・ヴァン・ホイテマで、砂嵐の襲来やロケット打ち上げ、ミニチュアを使った宇宙船、水や氷の惑星など60分を超えるシーンがIMAX®で撮影された。船内からの宇宙映像は俳優が反応できるようセットの外に立てたLEDスクリーンに投影。後のバーチャルプロダクションの先駆けになった。
時間を操る演出は極致に。IMAX®での撮影比率も増加

ついに全編の7割超をIMAX®で撮影『ダンケルク』(2017)

『ダンケルク』
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© 2017 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
『ダンケルク』(17)は、ドイツ軍によって港町に追い詰められた英仏兵士40万人の脱出作戦を描いた戦争映画。明確な主人公を置かず、追い詰められた兵士と船による救援隊、護衛の戦闘機の3つの視点で戦場を体験させる没入型の作品だ。ノーランは陸=1週間、海=1日、空=1時間という異なる時間軸を行き来しながらクライマックスで集約する『オデュッセイア』に通じるスタイルで構成。戦闘機や駆逐艦など実機や艦船を動員し、上映時間106分のうち70%越の約80分がIMAX®で撮影された。

時間の順行・逆行を同時に映した『TENET テネット』(2020)

『TENET テネット』
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Tenet © 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
続く『TENET テネット』(20)は、未来から時間を逆行しながら攻めてきた未来人と戦うCIAエージェントの物語。編集で自由に時間を操ってきたノーランにとって、必然というべき題材だ。時間移動についてノーランは時間を飛び越えるのではなく、物理学の法則に沿って実時間をかけた逆行と設定。同じ空間で順行・逆行する人物が格闘するなど時間の流れを視覚的に表現した。俳優やスタントマンが巻き戻るような演技をしたり、後ろ向きに走行する改造車を使うなど逆行も実写で表現。大型旅客機が空港施設に突っ込むシーンを中古の実機で撮影するなど、本作でも実写主義が貫かれた。上映時間150分のうち約半分の70分超をIMAX®で撮影した本作は、パンデミックで配信への切り替えが加速する中、ノーランのスクリーンへのこだわりを世に知らしめた。
人間ドラマもIMAX®で映す── そして『オデュッセイア』で未知の領域へ

細部の表現にもIMAX®が威力を発揮『オッペンハイマー』(2023)

『オッペンハイマー』
4K Ultra HD+ブルーレイ:7,260円 (税込)
Blu-ray:2,075円(税込)
DVD:1,572円(税込)
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
※記事公開時の情報です。
原子爆弾開発で中心的な役割を担ったロバート・オッペンハイマーと、米原子力委員会委員ストローズの確執を描いた伝記映画が『オッペンハイマー』(23)だ。ノーランはオッペンハイマーの主観映像をカラー、ストローズの視点や歴史的事実など客観映像は白黒で撮影。2つの視点でオッペンハイマーの人物像を浮き彫りにした。初の核実験トリニティ実験や物理現象はアナログの手法で撮影。ミニチュアや火薬、炎、光、煙などなどさまざまな素材を組み合わせ、壮絶な映像を生み出した。180分のドラマ中心の本作だが70分を超えるIMAX®シーンを撮影。研究施設から衣装、小道具まで正確に再現された30〜40年代を体感させるためラージフォーマットが効果を発揮。本作のためにコダックの協力でIMAX®用の白黒フィルムが開発された。一作ごとに新たな挑戦を続けてきたノーラン。全編IMAX®撮影による『オデュッセイア』でノーランは次の段階へと入っていく。
クリストファー・ノーラン、『オデュッセイア』に関する発言集
ノーランは「オデュッセイア」をどう捉え、いかに映画化したのか──その言葉に耳を傾けてみましょう。
〈『オデュッセイア』映画化への思い〉
「乗り越えるべき課題はあったが、私は古代ギリシャ神話の世界を蘇らせ、その物語や豊かなテーマの数々をこれまで見たことのない形で表現するという熱意に燃えていた」
「今回映画化に取り組むまで私自身気づいていなかったが、私のどの作品にもそれ(『オデュッセイア』)が息づいていることを改めて発見できた」
「(映画化が)大変なのは当然だ。何しろ『オデュッセイア』(過酷な旅路)なのだから」
〈本作の方向性について〉
「 “カメラが捉えるスペクタクルこそが全て”というかつての映画制作に回帰するのも悪くはないが、VFXが持つ力でもファンタジーを追求することはできる。本作ではこれら二つを融合し、やりたい事を全てやろうと考えた」
「古代ギリシャなどを題材にした映画の多くは、18〜19世紀ヨーロッパの新古典主義絵画やロマン派時代のオーケストラ音楽など、特定の時代のアートや音楽からヒントを得ているが、本作は映像的にも音楽的にもそれらの二番煎じのようなものにしたくなかった。物語にリアリティを持たせ、世俗的かつモダンで共感できるものにしたかった」
『オデュッセイア』
2026年9月11日(金)公開
アメリカ/2026/2時間52分/配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
監督:クリストファー・ノーラン
出演:マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ロバート・パティンソン、ルピタ・ニョンゴ、サマンサ・モートン、ゼンデイヤ、シャーリーズ・セロン
photo by Melinda Sue Gordon © Universal Studios. All Rights Reserved.
