2026年は印象派の巨匠クロード・モネの没後100年。この9月に公開を迎える新作『モネと時間旅行』をはじめ、名画や画家を題材にした映画には、画家たちの人生や、絵画に秘められたドラマが詰まっています。この秋は映画を入り口に、美術の世界を旅してみませんか。きっと一枚の絵がこれまで以上に魅力的に見えてくるはずです。(文/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『モネと時間旅行』より © STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques

『ルノワール 陽だまりの裸婦』
Renoir(2012)

《浴女たち》誕生に秘められた“幸福の画家”の真実

© 2012 FIDELITE FILMS / WILD BUNCH / MARS FILMS / FRANCE 2 CINEMA ©Photo: Jean-Marie Leroy

印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワールの晩年を、生涯の集大成とされる《浴女たち》誕生を軸に描く。第一次世界大戦下の南フランスを舞台に、リウマチに苦しみながらも創作への情熱を失わないルノワールと、戦場から帰還した息子ジャン、そして新たなモデルとなる若い女性アンドレとの交流を繊細に映し出す。柔らかな陽光に包まれた南仏コート・ダジュールの風景や、ルノワールの絵画を思わせる豊かな色彩も見どころ。「私の絵に、暗い色はいらない」という、“幸福の画家”とも称されるルノワールらしいセリフも心に残る。

名画MEMO )《浴女たち》

ルノワールが生涯にわたって繰り返し描いた“浴女”をテーマに、1918~19年に完成させた最晩年の大作。映画にも登場するアンドレはルノワールのお気に入りのモデルとなり、《浴女たち》をはじめとする晩年の作品にも着想を与えた。病に苦しみながらも創作を続けた画家の集大成ともいえる一枚だ。

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『ルノワール 陽だまりの裸婦』
監督:ジル・ブルドス 出演:ミシェル・ブーケ、クリスタ・テレ

『フリーダ』
Frida(2002)

波乱の人生を描き続けた情熱の画家

Photo by Susana Gonzalez/Newsmakers

メキシコを代表する画家フリーダ・カーロの波乱に満ちた人生を描き、第75回アカデミー賞で2部門(作曲賞・メイクアップ賞)を受賞した伝記映画。18歳のときに遭った交通事故で瀕死の重傷を負ったフリーダ(サルマ・ハエック)は、療養生活の中で絵画に没頭するようになる。やがて壁画家ディエゴ・リベラ(アルフレッド・モリーナ)と運命的な恋に落ち、愛と裏切り、病との闘いを経験しながら、自らの痛みや人生を絵に刻み込んでいく。情熱的な演技でフリーダを体現するのは、同じメキシコ出身のサルマ・ハエック。彼女が残した名画の数々と実写の世界が溶け合う、独創的な映像表現も魅力。

名画MEMO )《二人のフリーダ》

1939年に描かれた、フリーダ・カーロの最もよく知られた作品の一つ。リベラとの離婚を経験した年に生まれたもので、異なる装いの二人のフリーダが並んで座る姿は、彼女の二面性や心の葛藤を表しているとされる。映画では、《二人のフリーダ》をはじめ数々の名画が人生の一場面と重なるように登場し、フリーダの人生と芸術の深い結びつきを映し出す。

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『フリーダ』
監督:ジュリー・テイモア 出演:サルマ・ハエック、アルフレッド・モリーナ

『ターナー、光に愛を求めて』
Mr. Turner(2014)

光を描き続けた巨匠の知られざる人生

©Channel Four Television Corporation, The British Film Institute,Diaphana, France3 Cinéma, Untitled 13 Commissioning Ltd 2014

『秘密と嘘』『ヴェラ・ドレイク』などで知られるイギリスの名匠マイク・リー監督が、“光の画家”と称される英国ロマン主義の巨匠J.M.W.ターナーの晩年を描く。世間の常識にとらわれず、我が道を行くターナーを、ティモシー・スポールが圧倒的な存在感で演じ、第67回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。自然の光や海、空の移ろいに魅せられ、旅を重ねながら新たな表現を追い求めた画家の姿を、ターナーの絵画を思わせる詩情豊かな映像美で描き出す。撮影のディック・ポープはカンヌ国際映画祭芸術貢献賞を受賞し、アカデミー賞撮影賞にもノミネートされた。

名画MEMO )《戦艦テメレール号》

1839年に発表されたターナーの代表作。役目を終えた戦艦「テメレール号」がタグボートに曳かれていく姿を、幻想的な夕焼けの中に描いた。2005年にBBCの一般投票で“英国で最も偉大な絵画”に選ばれ、20ポンド紙幣にもその図柄が採用されている。映画では、ターナーがこの戦艦に魅せられる姿や、《戦艦テメレール号》の制作風景も描かれる。

Photo by The Print Collector/Getty Images

『ターナー、光に愛を求めて』

DVD:¥4,180 (税込)
発売・販売元:アルバトロス

©Channel Four Television Corporation, The British Film Institute,Diaphana, France3 Cinéma, Untitled 13 Commissioning Ltd 2014

『ターナー、光に愛を求めて』
監督:マイク・リー 出演:ティモシー・スポール、ドロシー・アトキンソン

『永遠の門 ゴッホの見た未来』
At Eternity's Gate(2018)

ゴッホの目に世界はどう映ったのか

© Walk Home Productions LLC 2018

『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督が、孤高の天才画家フィンセント・ファン・ゴッホの晩年を映画化。生前ほとんど評価されることがなく、それでも創作に没頭し続けたゴッホの姿をウィレム・デフォーが鬼気迫る演技で体現し、オスカー・アイザックやマッツ・ミケルセンら豪華キャストが共演する。物語は史実をなぞるだけでなく、ゴッホが世界をどのように見つめ、自然や光を感じ、それを絵画へと昇華していったのかを映像で表現。まるで画家の視点を追体験するような、没入感あふれる作品となっている。“美術史最大のミステリー”といわれるゴッホの謎の死にも、一つの答えを提示する。

名画MEMO )《ひまわり》

ゴッホが南フランス・アルルで1888~89年に描いた、花瓶に生けたひまわりをモチーフとする連作。現在、ロンドンや東京などに複数の作品が残され、ゴッホ作品の中でも特に広く知られている。アルルの「黄色い家」にゴーギャンを迎えるために制作されたといわれ、本作でもゴッホが自ら部屋の壁に《ひまわり》を飾るシーンが登場する。

Photo by VCG Wilson/Corbis via Getty Images

『永遠の門 ゴッホの見た未来』
監督:ジュリアン・シュナーベル 出演:ウィレム・デフォー、ルパート・フレンド

『セザンヌと過ごした時間』
Cézanne et moi(2016)

才能を認め合った二人の芸術家の友情

©2016 – G FILMS –PATHE – ORANGE STUDIO – FRANCE 2 CINEMA – UMEDIA – ALTER FILMS

“近代絵画の父”と称されるポール・セザンヌと、不朽の名作「居酒屋」「ナナ」で知られる文豪エミール・ゾラ。幼い頃から友情を育み、芸術家になるという夢で結ばれていた二人の半生を実話に基づいて描く。画家を志しながらもなかなか評価されず苦悩するセザンヌ(ギヨーム・ガリエンヌ)と、作家として成功を収めていくゾラ(ギヨーム・カネ)。対照的な道を歩んでいく二人の姿を、南フランスの美しい風景を背景に丁寧に映し出す。『モンテーニュ通りのカフェ』のダニエル・トンプソン監督が長年温めた企画を映画化し、才能を認め合う芸術家同士ならではの複雑な友情を浮かび上がらせる。

名画MEMO )《サント=ヴィクトワール山》

南フランスにそびえるサント=ヴィクトワール山は、セザンヌが繰り返し描いた代表的なモチーフ。光や季節によって表情を変える山の姿を、数多くの油彩画や水彩画に残している。映画では、この山を望む風景がラストシーンを飾り、セザンヌが生涯見つめ続けた景色を印象的に映し出す。

Photo by Leemage/Corbis via Getty Images

『セザンヌと過ごした時間』
監督:ダニエル・トンプソン 出演:ギヨーム・ガリエンヌ、ギヨーム・カネ

『画家モリゾ、マネの描いた美女〜名画に隠された秘密』
Berthe Morisot(2012)

マネが描いた女性は“印象派”の中心人物だった

© K'ien Productions - 2012 Reserved.

印象派を代表する女性画家であり、巨匠画家エドゥアール・マネのミューズでもあったベルト・モリゾの物語。19世紀フランス、女性が画家として認められることが難しかった時代に、モリゾはマネと出会い、そのモデルを務めながら、自らも画家として才能を開花させていく。互いに刺激を与え合った二人の関係や、印象派誕生の時代背景を織り交ぜながら、一人の女性が自らの道を切り開いていく姿を描く。モリゾがモデルを務めた《バルコニー》など、マネが描いた名画の数々も登場し、二人の関係を絵画を通してたどることができる。

名画MEMO )《バルコニー》

1868〜69年に描かれた、マネを代表する名画の一つ。バルコニーに佇む人々を描いた作品で、左側の女性がベルト・モリゾ。映画では《バルコニー》の制作風景などを通して、画家とモデルという枠を超えて刺激を与え合った二人の関係が描かれ、この名画をより深く味わう手がかりを与えてくれる。

Photo by Laurent Lecat/Electa/Mondadori Portfolio via Getty Images

『画家モリゾ、マネの描いた美女〜名画に隠された秘密』
監督:カロリーヌ・シャンプティエ 出演:マリーヌ・デルテルム、マリック・ジディ

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