
キャリーは、初めて体験する学校生活に戸惑うことばかり © Amazon Content Services LLC
物語の骨格は同じまま、現代のキャリーを描く
原作は、スティーヴン・キングが1974年に発表した長編小説『キャリー』。女子高生キャリーは、幼い頃に父を失い、狂信的な母親に抑圧され続け、クラスメートたちからもいじめられ続けて、次第に奇妙な力を発揮するようになり、やがて、その力が大惨事を引き起こす------。この小説が原作の、ブライアン・デ・パルマ監督、シシー・スペイセク主演の名作映画『キャリー』(76)も有名だ。
今回のドラマ「キャリー」は、この名作の時代背景を"現代"に変えて描くもの。物語の骨格は同じまま、人物設定や環境に"現在ならこうなるだろう"という脚色が施され、新たな物語が紡がれていく。
このドラマでは、キャリー(サマー・H・ハウエル)がクラスで浮いてしまうのは、それまで彼女がずっと学校に通わず自宅で学ぶ在宅学習だったから。キャリーの母親(サマンサ・スローヤン)は娘を愛しているが、娘を俗悪な世間から守ろうと度を越して過保護になっている。キャリーをいじめるクラスメイトたちにも、それぞれの事情がある。
そこに、現代ならではのSNS、スクールカースト、ハラスメント、モンスター・ペアレントなどの諸問題が絡んでいく。ドラマは前知識なく見ても充分に楽しめるが、原作や映画版と比較して見ると「なるほど、現在ならこうなるか」という脚色の面白さがプラスされるのだ。

キャリーと母親は、お互いを思いやりながらも複雑な気持ちを抱いていく © Amazon Content Services LLC
マイク・フラナガンの "スティーヴン・キング愛" と "大胆な脚色の技" が融合
クリエイターのマイク・フラナガンは、スティーヴン・キング作品でお馴染み。彼は子供時代からキングの大ファンで、キング原作の映画『ジェラルドのゲーム』(17)が評価され、同じくキング原作の『ドクター・スリープ』(19)、『サンキュー・チャック』(24)の監督・脚本も手掛けている。キングの信頼も厚く、キングは本作のフラナガンの構想を絶賛し、製作総指揮に参加している。
その一方で、マイク・フラナガンが魅力を発揮してきたのが、"大胆な脚色の技"を駆使したドラマシリーズだ。幽霊屋敷を描くシャーリー・ジャクスンのゴシック小説『丘の屋敷』(59)を、その屋敷に住む一族の物語として再構築するNetflixドラマ「ザ・ホーンディング・オブ・ヒルハウス」(18)、ヘンリー・ジェイムズの小説『ねじの回転』(1898)をはじめ『古い衣装のロマンス』(1868)などジェイムズの複数の短編小説をひとつの物語として紡ぐNetflixドラマ「ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー」(20)、エドガー・アラン・ポーの同名小説を、現代の大企業経営者一族の物語として描くNetflixドラマ「アッシャー家の崩壊」(23)は、どれも脚色の妙技で魅了する。
そんなフラナガンの、スティーヴン・キング愛と、大胆な脚色の技が掛け合わされたのが、ドラマ「キャリー」なのだ。
こうして創造されたドラマ「キャリー」は、表面的な姿は変えながら、同時に、時代が移っても変わらない、原作の根底にあるテーマを浮かび上がらせる。キャリーが、真に立ち向かわなくてはならなかったものは何なのか。キャリーが、心から欲したものは何なのか。それらが明らかにされていき、キャリーを不遇から救う物語にも見えてくるのだ。

原作が同じなので、映画『キャリー』と比べたくなるシーンも多い © Amazon Content Services LLC
マイク・フラナガンの次回作は『エクソシスト』の再構築
そんなフラナガンの新作は、名作映画『エクソシスト』(73)を、スカーレット・ヨハンソン主演で再構築する映画『The Exorcist: Martyrs(エクソシスト:殉教者たち)』(2027年3月12日全米公開)。ティザー予告編で、ヨハンソン演じる刑事が「アメリカの連続殺人鬼たち、H・H・ホームズ、ナイト・ストーカー、ジェフリー・ダーマー、バンディ、ゲイシー、サムの息子も、"自分は取り憑かれている"と主張した」と話すのを聞くと、次はその方向からの脚色か!と、期待が高まる。その前にまず、ドラマ「キャリー」でフラナガンの脚色の技をたっぷり味わっておきたい。
*ドラマ「キャリー」はPrime Videoにて独占配信中
