〜今月の3人〜
金子裕子
映画ライター。週2日ペースで泊まりに来る男子大学生から、新世代が好む音楽や映画の情報を収集中。
斉藤博昭
映画ライター。エアー監督にインタビューしたら、ジャーマン・シェパードを飼ってて最後は安楽死させたと。悲しい…。
米崎明宏
映画ライター。「伊東四朗一座リターンズ!? in 浅草公会堂」のプラチナチケットをなんと運良くゲット。爆笑でした。
金子裕子 オススメ作品
『進行曲 マーチングボーイズ』
台湾次世代スターたちの織りなす清々しい友情に
うっとりさせられる青春部活映画

評価点:演出5/演技4/脚本4/映像4/音楽5
あらすじ・概要
1990年代。台湾屈指の進学校に通うジャン・ハオは、医学部進学を強いる父に内緒でマーチングバンド部に入部。天才肌の問題児リウ・ジーチュワンや優等生の部長タイチェンと部活に励むが、あることから廃部の危機に。
「最も男を魅力的に撮る監督」と称されるジャン・ルイジー監督自身が魅せられたマーチングバンドを題材に、部活にありったけの情熱を注ぐ男子高校生たちを活写した珠玉の青春部活映画。
1990年代台北。名門進学校のマーチングバンド部に入部した学生たち。トランペット担当のハオは医大入学を強いる父のプレッシャーに苛まれ、同級生ジーチュワンは天才ゆえに孤独を抱えるトラブルメーカー。部員たちが立ち向う悩みや困難は過去の青春映画と似ていても、その解決プロセスがユニークで新鮮。加えて、退部を迫る父にハオが切々と訴える「僕が親なら、子供の声に耳を傾ける」や、無謀な“冒険”に出る後輩たちに向けて先輩たちが叫ぶ「後輩よ、恐れるな。先輩がそばにいる」というエールなど、青春をとっくに忘れてしまった大人たちの胸にも響くセリフも絶妙だ。

台湾の美しき次世代スターたちの織りなす清々しい友情にウットリし、彼らが吹き替え無しで披露するマーチングバンドのパフォーマンスのラストに拍手鳴り止まず。
10月23日公開、メイジャー配給
©2025 Marching Next Media. All Rights Reserved.
斉藤博昭 オススメ作品
『ハート・オブ・ビースト』
犬好きの人だけでなく、そうでない人も
泣かせる人と犬の絆を描いた傑作

評価点:演出5/演技5/脚本5/映像5/音楽4
あらすじ・概要
退役軍人のジェームズは、戦地での任務を共にしてきた軍用偵察犬のオーディンを連れてアラスカへ向かう。しかしジェームズの操縦するセスナ機が奥地に不時着。彼らは帰路を探して大自然の中をさまようことに。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でも犬との絶妙なやりとりをみせたブラッド・ピットが、今回はその相性の良さを全編でフルに発揮。この俳優は、余計な忖度をしない純粋な相手役によって、強烈なカリスマ性、神々しさ、そして素顔の優しさが漂ってくるのだと、納得してしまった。ブラピが犬のオーディンに向ける慈しむような眼差し。そしてオーディンからブラピへの献身的な行為を眺めているだけで、至福の時間が過ぎていく。戦地が夢に出てきてうなされる、危険な場所を前にビビるなど、オーディン役の犬(親子4頭)の高難度演技にも最後まで驚かされた。

こうして犬と人間の絆に没入できるのは、デヴィッド・エアー監督が物語を横道に逸れずに描き切ったから。自身以外の脚本のせいか演出は誠実で、得意のアクションでの迫力と緊迫感、さらに元軍人の精神も宿らせて、全方向での見ごたえを完備した。冒頭から結末は何となく予想されるが、ここまで切なく、崇高で美しい幕切れとは…。犬好きの人は嗚咽、そうでない人も涙にむせぶ大傑作。
公開中、東和ピクチャーズ・東宝配給
©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
米崎明宏 オススメ作品
『ポンペイ、雲の下に生きる』
火山の麓に広がる2つの街、
ポンペイとナポリに生きる人々の営みを時空を超えて繋ぐ

評価点:演出4/出演者3(※)/脚本4/撮影4/音楽4
※本作に出演した人
あらすじ・概要
古代ローマの暮らしを現代に伝える世界遺産で、ヴェスヴィオ山の麓に広がるナポリ。そして地下に眠る古代ローマの大都市ポンペイ。火山の街の2000年に渡る歴史と、今を生きる人々の営みを鮮烈に映し出す。
これまでにもベネチアやベルリンで最高賞を受賞してきたドキュメンタリー映画の巨匠ジャンフランコ・ロージの最新作で、本作でもベネチアで審査員特別賞を受賞。個人的には彼の作品を見て来た中で一番親しみやすく感じられた。
今回ロージが扱ったのは、古代ローマの大都市ポンペイ。2000年も前にヴェスヴィオ山の噴火によって一昼夜で灰の下に消えたこの旧都市の近郊にはナポリの街が広がり、現在も人々の営みが続く。埋没したポンペイの遺跡は発掘や盗掘で元の姿通りではないが、映像に捉えられたのは、考古学博物館で働く女性、盗掘被害の調査官、消防局の指令センター従業員、子供たちの勉強の面倒をみる男性、発掘作業を進める東京大学のチームまで様々な群像で、そこに遥か昔に存在したポンペイの人々の生活が要所要所で垣間見える。両者の時間の隔たりを繋げるのはいつの時代も人間を天空から見ている雲だ。本作に感じられる親しみやすさは、たれ込める雲の下で生きる人間の歴史に注がれるロージの眼差しの優しさに外ならない。
公開中、ビターズ・エンド配給
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