「ブレードランナー2049」とは?
驚愕の新事実が判明!
最大の衝撃は、ハリソン・フォード演じる前作の主人公デッカードと、レプリカントのレイチェルの間に子供が生まれていたこと。レイチェルは死去、デッカードは行方不明になっている。レプリカントは進化し、寿命制限のないネクサス8型が作られるが、反乱を起こして製造中止になり、タイレル社は倒産。ウォレス社の新型レプリカントは人間の命令に従順。旧型レプリカントを“解任”するブレードランナーは、今やレプリカントの仕事になっている。気になるのは、デッカードが人間かレプリカントかの答だが、それは今回も観客各自が判断するように描かれている。
そんな「ブレードランナー2049」は見れば見るほど情報が詰まってて、とてもすべては紹介できない。その中でも興味深い部分をピックアップして紹介しよう!
「ブレードランナー2049」トリビア12選
01: 前作のあの人、あのアイテムがそのまま登場する
前作でデッカードが、レイチェルをレプリカントかどうかテストしたシーンの音声が再生され、逃亡後のレイチェルを撮影した写真も出てくる。また、デッカードの同僚ガフも登場。彼は高齢者用施設にいるが意識は明晰で、前作同様に折紙をしており、“羊”の折紙を主人公であるブレードランナーKの前に置く。“羊”は前作の原作であるP・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を意識したものだろう。
02: 前作を踏まえた類似シーンは数え切れない
Kとレプリカントが格闘して壁をぶち破るシーンは、デッカードと、ルトガー・ハウアー演じるレプリカントのロイ・バッティの格闘シーンに酷似。前作は人工蛇の鱗に番号があったが、今回は眼球に番号がある。ジョイが着ている透明なレインコートは、前作の女性レプリカント、ゾーラのレインコートにそっくり。前作の屋台群は、自動販売機のスタンド群に進化。音声入力の画像拡大装置も進化して登場。レプリカント製造者のウォレスの部屋の黄昏色の照明は、前作のレプリカント製造会社タイレル社の応接室の照明と同じ色調。Kが犬を見てデッカードに本物かと尋ねるのは、デッカードがタイレル社でフクロウを見て、レイチェルに本物かどうか聞いたことを連想させる、などなど数え切れない。
03: 木彫りの馬とユニコーン
Kには子供時代の木彫りの馬の思い出があり、実際の木彫りの馬を手に入れる。「ブレードランナー ファイナル・カット」ではデッカードがユニコーンを夢想する。木彫りの馬とユニコーンは、どちらもまずイメージとして登場し、どちらも馬に似ているが本物の馬ではないところに意味がある?
04: 前作のボツになったシーンが本作で復活してる!
これらは監督が意図的にやったと発言している。冒頭近く、Kがレプリカントの自宅に侵入すると鍋が煮えているシーンは、前作で絵コンテが描かれたが撮影されなかったシーン。この絵コンテはドキュメンタリー「デンジャラス・デイズ:メイキング・オブ・ブレードランナー」にも出てくる。また、Kがデッカードに遭遇する時、デッカードはスティーヴンソンの古典冒険小説「宝島」を引用するが、これも前作の未撮影場面へのオマージュ。脚本には、デッカードがレプリカントに襲われて入院中の調査官を訪ねると、彼が「宝島」を読んでいるという場面があった。
05: Kの名前はカフカの小説から?
ライアン・ゴスリング演じる主人公は認識番号から「K」と呼ばれているが、ジョイは彼を「ジョー」と呼ぶ。また、デッカードに名前を問われた彼は「ジョー」だと答える。この「K」と「ジョー」は、「変身」で知られる作家フランツ・カフカの不条理小説の主人公の名前を連想させるもの。「城」の主人公は測量士K、「審判」の主人公はヨーゼフ・K。ヨーゼフは英語ではジョーゼフで、短縮するとジョーになる。もっとも、作中でジョイの広告が言うように、英語の「グッド・ジョー」は「いい人」という意味の慣用句。ジョーはここからの引用かも。
06: Kの住んでいるビルにカタカナの「メビウス」の文字
Kが住んでいるビルの入り口のドアの上には、日本語のカタカナの「メビウス」の浮き彫りがあり、このビルの屋上にはカタカナの「メビウス・アパート」という文字の看板がある。メビウスは、オリジナル作「ブレードランナー」が多大な影響を受けたバンドデシネ(フランス製コミック)の人気作家の名前だ。
07: レプリカント製造者ウォレスの目が不自由なのは…
レプリカントを製造する技術があるのに、製造者ニアンダー・ウォレスの両目はなぜ不自由なままなのか。それは映画のシーンのように、複数のドローンを目として使う方が便利だからかもしれないが、別の説もある。前作のレプリカント創造者エルドン・タイレルは、レプリカントのロイに両目を潰されたので、そのオマージュとの説も?
08: ウォレスはラヴをエンジェルと呼ぶ
ウォレスは自分の製造したレプリカントを「エンジェル」と呼ぶが、前作 本作で復活してる!でロイが仲間のレプリカントを「天使(エンジェル)」という言葉で表現していた。彼はアジア系の眼球製作者チュウを訪れた時に、ウィリアム・ブレークの詩「アメリカ:ひとつの預言」のアレンジで「天使も焼け落ちた 雷鳴とどろく岸辺 燃え盛る地獄の火」とつぶやいて「お前の造った目で俺が見せられたものを お前に見せてやりたい」と言っている。
09: ガラテア症候群のガラテアって?
DNAが同じ男女双生児の女児は、ガラテア症候群(GalatianSyndrome)で死亡したとの記録が残っていた。この病名は、前作のタイレル社員セバスチャンが若年性老人病“メトセラ症候群”で、メトセラが聖書中の長寿の人物の名前だったことを踏まえたものかも。スペルは少し違うがガラテア(Galateia)なら、ギリシャ神話でピグマリオンが彫った女性の彫像の名前。この彫像はピグマリオンに愛されて人間になる。
10: Kが読んでいる「青白い炎」は「ロリータ」のナボコフの異色作
Kのアパートに置いてあり、ジョイが手に取ろうとする本はナボコフの「青白い炎」。警察署でKが状態をテストされる時の言葉にも、この作品中の文章が使われている。「青白い炎」は、ある文学者が、別の詩人が書いた長編詩に注釈を付けて出版しようとするが、その注釈の分量が本編の2倍以上の膨大なものになっていくという作品。ひょっとしたら、この詩と注釈の関係が、前作とこの続編の関係に似ているという自虐ギャグ?
11: ジョイのシステム起動音は「ピーターと狼」
Kがジョイを起動するときになる音楽は、プロコフィエフ作曲の「ピーターと狼」。この楽曲は、猫はクラリネットのこの旋律、小鳥はフルートのこの旋律というように、キャラクターを楽器と旋律で表現した作品。その“手で触れないもので表現されたキャラクター”というところが、ジョイと同じだ。
12: 前作のあの名曲が一度だけ聞こえてくる
ラスト近く、Kが一人になった時に流れる音楽は、前作の名曲「ティアーズ・イン・レイン」。死を目前にしたロイが、オリオン座近くやタンホイザー・ゲートで見た光景を語り「そんな思い出も時間と共にやがて消える。雨の中の涙のように」と言うシーンに流れるあの曲だ。ロイは雨の中で首を垂れたが、Kは静かに降る雪の中で天を見上げる。