毎月公開される新作映画は、洋画に限っても平均40本以上!限られた時間の中でどれを見ようか迷ってしまうことが多いかも。そんなときはぜひこのコーナーを参考に。スクリーン編集部が“最高品質”の映画を厳選し、今見るべき一本をオススメします。今月の映画は現代の歌姫レディー・ガガが主演を務め、アカデミー賞最有力との呼び声も高い「アリー/スター誕生」です。

「アリー/スター誕生」
2018年12月21日公開
監督/ブラッドリー・クーパー
出演/レディー・ガガ、ブラッドリー・クーパー、サム・エリオット
巨匠クリント・イーストウッドがかつて映画化を熱望していた企画を「アメリカン・スナイパー」のブラッドリー・クーパーが監督・主演を務め、自身初の監督作品として映画化。1937年の「スタア誕生」以来、幾度も映像化された不朽の物語に現代的な視点を加え、ショービジネスの華やかな世界を舞台に、歌手を夢見るひとりの女性の運命の恋、栄光と葛藤を描く。現代の歌姫レディー・ガガが映画初主演し、自ら曲も書き下ろしている。

作品あらすじはコチラから!

編集部レビュー

ダメ夫目線で見たらまた違った感動がありました

男って基本マッチョだから、意外とすぐポキッと折れる。でも女はしなやかで、すべてを受け止めてしまえる。敵わないよなあ。なのにマッチョ自慢の男はまだまだ多いわけで。今さらなぜ「スター誕生」?と思ったけれど、そう考えると今こそタイミングなのかも。でも本来監督するはずだったクリント・イーストウッドがそこ意図するかなあ。むしろこれは、自滅するしかない哀れなマッチョな男への挽歌なのではないだろうか。

なんて感じたのもおそらく僕がおっさんになったから。バーブラ版を見たのは中学生の時。ダメな夫に愛を捧げた女の一途さという方程式で見たけれど、ダメな夫目線でこの物語を見る日が来るとは。レディー・ガガの女優としての才能の煌めきもステキだけど、監督ブラッドリー・クーパーが自ら演じたダメ夫に向ける、アホだな〜的な優しい視線が感動的でした。

レビュワー:近藤邦彦
編集長。ダメ夫の兄を演じたサム・エリオットが超カッコいい。低音すぎる声がセクシーでそういえば「アーロと少年」でも感動したっけ。

“師匠”イーストウッドを継ぐ監督の誕生

10年近く前、来日したブラッドリー・クーパーに話を聞く機会に恵まれた。そして彼が、「エレファント・マン」のような人の心を動かす作品を作りたいと情熱的に語ってくれたのを思い出す。

そんな彼が初監督に選んだのが本作だ。自信がなく夢を諦めていた女性が本物の愛と出会い、人生を変えていくという物語自体は、もう見慣れた古典ともいえる。それがどうだろう、ラストのガガの熱唱の後には席を立てなくなるほど圧倒されていた。二人の苦しいほどの愛に、歌の力に、何より真実を描こうとする誠実な演出に。

そこには“師”イーストウッドの影響もあるはずだ。でも同時にクーパー自身の深い映画愛を感じた。劇中に『人の心に響く何かを表現できるかは才能とは別の問題』というセリフがある。でもこの作品からはその“何か”を強く感じた。またすごい監督の誕生だ。

レビュワー:疋田周平
副編集長。劇中の歌唱はなんとすべて生収録だとか。コンサート場面ではガガ様の本物のファンが“観客役”として会場を埋めたそうです。

女優レディー・ガガ誕生の瞬間を見逃すな

世界的歌姫レディー・ガガが主演ということで、ガガ様の歌が聞けるな〜くらいの甘い認識で挑んだ本作。予想をはるかに裏切る熱演に、女優レディー・ガガ誕生の瞬間を見届けたような体験でした。

冒頭から、ガガ様オーラを完全に消し去り普通の女の子アリーになりきっていることに驚き。瑞々しいスッピンを惜しげもなく披露しているところも素敵!ブラッドリー・クーパーが、会うなり彼女に化粧を落とすように指示したのだとか。監督ナイスです。

スター街道を駆け上がる姿は、自身もショービズ界の頂点に君臨するガガ様だからこその説得力。歌唱シーンはもちろん、有名になることで目まぐるしく変わる環境の変化に戸惑う姿に観客が感動するのは、彼女の人生そのものが演技に反映されているから。今この役を演じられるのは彼女以外いないのではと思ってしまいました。

レビュワー:阿部知佐子
劇中歌がグラミー賞にノミネートされ、オスカーも期待されるガガ様。二つのトロフィーを手にしたら向かうところ敵なしですね。

ガガの“光”とクーパーの“影”

レディー・ガガ主演、アカデミー賞最有力!そんな声が飛び交う本作。これはきっとガガ様を見る映画なんだな、という私の勝手な予想を見事に裏切ってくれました!もちろん本筋はトップスターへと駆け上がるアリー。ですが、それと対比して描かれるジャクソンの人生に涙が止まりませんでした。アリーへの愛が深いだけに、彼女が成功すればするほど、ジャクソンの苦悩、焦燥、虚無感、陰影が色濃くなっていくのが見ていてつらいほど。それこそ、飲まなきゃやってられないっていう気持ちが画面から痛いほど伝わってきました。

そしてそれは、B・クーパー監督がとても巧みだったということ。唐突な場面展開に最初は戸惑いましたが、あえて説明せずに想像させる演出が、見終わるとなんだかじわじわと余韻が残り、しばらく物語から出てこられませんでした。ちょっとクセになる感じです。

レビュワー:中久喜涼子
試写室だったので仕事モードで抑えましたが、素の状態で見ていたら号泣していたと思う。今でも予告編だけで泣けます。。

歌手として頂点を極めたガガの乙女な演技にドキドキ

俳優や歌手など、ショービズ界で成功できる人は一握りだ。今作が映画初主演となるレディー・ガガは、これまで大なり小なりのステージで幾度となくパフォーマンスをしてきた世界的なアーティスト。場数を踏んでいるはずの彼女だが、アリーが最初にステージに上がるシーンは本当に初めて表舞台に出る少女のようだった。ガガの演技が初見だからだろうか……どのシーンも初めて◯◯する人に見えたし、いちいち本当にこういう経験をしたことがあるのかなと考えてしまうのだ。歌手として成功したガガだからこそ、いつでも頂点を目指した頃の気持ちに戻れるのかもしれない。それが反映された演技はとても魅力的だった。

忘れられないのがアリーとジャクソンが距離を縮めるシーン。なんだか生々しく、恋が生まれる瞬間を物陰から覗き見しているようで非常にドキドキした。

レビュワー:鈴木涼子
クーパーからのリクエストで劇中では“すっぴん”も披露しているガガ様。あえて本名の“ステファニー”と呼びたくなるかわいらしさです!

名作を現代風にアレンジし見事な手さばき

ブラッドリー・クーパーが何度も映画化された名作をどのくらいアレンジしてくるかと思ったら、ロマンスの本筋はほとんどオリジナルのままだが、脇役の設定やカメラ演出などを大幅に現代風に近づけて、初監督ながら見事な手さばきを見せてくれた。先に監督候補だった師匠(?)イーストウッドが、彼に企画を手渡したのも、先見の明があったということか。

でもこの物語は元来アレンジし易いのかも。個人的にフランス版パロディーと解釈している「アーティスト」も基本は同じ筋。これはオスカーも取ったが、振り返れば本家37年版も7部門候補で脚本賞受賞、54年版も主演男女優賞ほか6部門候補に。舞台の映画界を音楽界に変えた76年版も4部門候補で歌曲賞受賞とオスカーに愛されまくり。そして今作もオスカー最有力といわれていて、こんな割のいいリメークは他にない?

レビュワー:米崎明宏
「スター誕生」というと、ワンちゃん版パロディーの「名犬ウォントントン」(1976)をもう一度見たくなる。この映画ソフト化されない……

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