成田 陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて38年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。
「サスペリア」徹底解説はコチラから!
ルカ(監督)がダンサーの役をやらないかと聞いてきたのでびっくり
「サスペリア」のダコタ・ジョンソンはほとんど憑かれたように肉体を酷使して踊り続けている。今までどちらかというと受け身のセクシーな若い女性という役柄が多かっただけに「変身」「激演」「演技派への目覚め」などとポジティヴに評価され、当人も一皮むけた感じでつるりとした顔で会見に現れた。
『オリジナルの「サスペリア」は、「胸騒ぎのシチリア」の撮影中にルカ(グァダニーノ監督)に見ないかいと言われて見たのだけれど、ホラー映画に興味があったから、結構楽しんで見たのよ。そうしたら彼がダンサーの役をやらないか?って聞いて来て、びっくり。小さい時に他の女の子と同じようにバレエをちょっと習ったことがあるけれど、それは遠い昔でもう体が固くなって上手に踊れないって訴えたら、2年間の期間をあげるから練習してみなさいって言うじゃない。うーん、女優としての幅を広げたいし、何でも習うことに挑戦を感じるからやってみようって決心したのよ。
実際にレッスンを受け始めて、その野性的で自然なスタイルにびっくりしてしまった。ほら、バレエはストイックな表情で音を立てず、羽根の様に軽く、柔らかく動くのが美しいとされているでしょう。ところがエキスプレッション・ダンスは、生々しくて原始的で、口から痛々しい声を吐き出しながら、呼吸とソウルを一緒にして体を激しく動かして表現するという全く別物だったのね。
毅然として謝らない態度が又、独特だった。踊ってみると凄く開放感を覚えるし、自分の肉体を尊敬するという精神を養うことに気がついたのよ。バレリーナや、モデルのような美しさという概念の体の形に縛られず、自分自身の肉体に自信を持って、それをパワフルに使って表現して行くというスタイルに私はすっかり魅せられてしまった。ピナ・バウシュ(ドイツの有名なダンサー)のビデオを見てはそのパワフルな動きに唸っていたわね』
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自分の志を貫く祖母のティッピ・ヘドレンは私にとって憧れなのよ
『撮影の1年前になって専門家に付いて体の筋肉をつけるエキササイズを始めて、どんどんボディー・シェイプが変わって行ったのだけれど、6ヶ月後には「フィフティ・シェイズ」シリーズの撮影が始まって。でもダンスは続けていたのよ。撮影の2ヶ月前には1日6時間から8時間、ダンスの練習とリハーサルに入って北イタリアでの撮影中は野菜と果物とプロテインばかりのダイエットだった。でも金曜日になるとハンバーガーを食べて、ワインを1本飲んでいたわ。その美味しさったらなかったわね。
踊りより難しかったのはドイツ語!パーフェクトに話さなければならないので毎日練習してドイツ人と会話をしていたのよ。でも私は新しいことを習うのが大好きなの。次々と体得して行くと自分の再発見にも繋がるから。可能性を試す毎に女優として成長して行くと信じているし。まだまだ女優としての自信などないし、自信を持つレベルにはまだ到達したくないのよ。未知の分野がたくさんあって、その全てに入って行きたいの。共演のティルダ(スウィントン)みたいに男性の役に挑戦することだって、考えているのよ。
祖母(「鳥」などのティッピ・ヘドレン)からは女優としての心構えなどたくさん教えられた。祖母は永遠にエレガントで、知性にあふれていて、いまだにライオンのサンクチュアリーを経営しているほど自分の志を貫く、強い意志の持ち主で、私の憧れの的なのよ。
セクハラ撲滅を目指す「MeToo」や「Time's Up」の様な社会活動が沸き起こって、凄く嬉しい。私もしっかりと支持しているし、ハリウッドに限らず、もっともっと女性の立場が向上するように戦っていきます』
交際中のクリス・マーティンのことを聞くと愛犬の話にすげ替えてしまうという巧みなテクニックも見せてくれた。
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