ゾンビ・パニックのロンドン郊外でダメ男たちが決死のサバイバル
『ベイビー・ドライバー』でハリウッド作品に本格的に進出し、ヒットを飛ばした英国の俊英エドガー・ライト監督と、『ミッション:インポッシブル』シリーズでのトム・クルーズの相棒ベンジー役が板に付いたサイモン・ペグ。そんな彼らの2004年の出世作『ショーン・オブ・ザ・デッド』は、世界的に好評を博したが、当時日本では劇場公開されないままDVDとしてリリースされた。そんな冷遇にもかかわらず、本作は日本でも熱烈な支持を受け、今やライト&ペグの代表作に挙げられるほどだ。そんな幻の快作が15年の時を経て、ついに、ついに、日本の映画館で初上映されるのだから、ファンとしては喜ばずにはいられない。
ゾンビ・パニックに襲われたロンドンの郊外を舞台に、ダメ男たちが必死のサバイバルを繰り広げる物語。ライト監督と主演のペグはいずれもゾンビ映画の巨匠ジョージ・A・ロメロの大ファンで、彼にオマージュを捧げるつもりで本作を撮ったという。とはいえベースはホラーではなく、彼らの初タッグ作品にして原点でもあるTVシリーズ『SPACED 俺たちルームシェアリング』のようなコメディの要素が主体。現代のロンドンに本当にゾンビが現われたらどうなるのかをシミュレーションしつつ、ナンセンスなギャグと、現代人のホンネを軽妙に散りばめていく。
ライトとペグのコンビは脚本を兼任して、才気を遺憾なく発揮。共演はこの後『宇宙人ポール』『ワールズ・エンド酔っぱらいが世界を救う!』など、ペグとのコンビで人気コメディ俳優の地位を築き上げたニック・フロスト。他に『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』のペネロピー・ウィルトンやベテランのビル・ナイらが脇を固める。後に『SHERLOCK/シャーロック』でブレイクするマーティン・フリーマンもチラリと顔を見せる。
STORY
家電量販店に勤務する29歳のショーンは恋人リズに別れ話を切り出されて焦っていた。しかし、同居している悪友エドと自堕落な生活をおくっているのだから自業自得。そんな折り、人々が次々と謎のウィルスに感染し、ゾンビ化する大事件が発生する。ショーンはリズを救うために一念発起。さらに離れて暮らしている母を助けだし、パブへと立てこもった。だがゾンビはどんどん増え、ついにはパブにも乱入してくる。ショーンはこのパニックから生き延びることができるのか!?
作品をもっと楽しむために知っておきたい5つのこと
01:
巨匠ロメロも認めたゾンビ愛
ゾンビの習性はジョージ・A・ロメロの作品を踏襲しており、そこには深いリスペクトが。当のロメロは滅多に他のゾンビ映画を褒めないが、本作については称賛を惜しまなかった。この後ロメロは20年ぶりのゾンビ映画『ランド・オブ・ザ・デッド』を撮るが、その際にはライトとペグを招き、ゾンビ役で特別出演させている。
02:
ペグの衣装は一種のみ
ショーンは最初から最後まで、職場の家電ショップで着ている白いシャツを身に付けている。つまり、ペグの衣装はこの一種のみで、それはゾンビとの戦いを経てどんどん汚れていく。これは『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスが終始タンクトップ姿だったことに発想を得てのこと。ボロボロになるまで戦う闘争心の表われでもあるのだ。
03:
エドガー・ライトの音楽オタクぶり
多彩な楽曲を起用するライトのスタイルは本作ですでに完成されている。クイーンの他に、スペシャルズやスミス、アッシュなどのカリスマ的アーティストの楽曲をフィーチャー。インディーズのアーティストにも目配せしている点がイイ。ちなみにライトの次回作はベテランのエレクトロポップ・ユニット、スパークスのドキュメンタリー。
04:
クイーンの名曲が笑撃的!?
クイーンの名曲“ドント・ストップ・ミー・ナウ”に合わせて、ショーンらがパブでゾンビをビリヤードのキューでボコりまくる!これは捧腹絶倒の名場面にして、『ベイビー・ドライバー』のリズミカルなアクションの原点でもある。他にクイーンの曲はラストで“ユー・アー・マイ・ベスト・フレンド”がフィーチャーされる。
05:
ペグ&フロストの名コンビ
ショーン役のペグとエド役のフロストは、ライト監督のTVシリーズ『SPACED俺たちルームシェアリング』で共演して以来の仲。この後もライト監督作や『宇宙人ポール』で息の合ったお笑い演技を披露した。その後、彼らの共演は5年ほど途絶えていたが昨年、久々に『スローターハウス・ルールズ』で顔合わせが実現。
「ショーン・オブ・ザ・デッド」
Shaun of the Dead
2019年3月29日(金)公開
原題:死者のショーン/イギリス/2004年/1時間39分/カルチャヴィル配給
監督:エドガー・ライト/出演:サイモン・ペグ、ニック・フロスト、ケイト・アシュフィールド、ペネロピー・ウィルトン、ビル・ナイ
©Images courtesy of Park Circus/Universal