守っているはずの少女からおじさんも力をもらっている
インド映画として歴代3位の世界興収。日本でもロングランヒットを続け、いよいよDVD発売が話題の「バジュランギおじさんと、小さな迷子」。国も宗教も異なる少女とおじさんとの出会いは運命のいたずらか。異国で迷子になった少女が出会ったのは、心底真面目で正直すぎる、でも実に頼り甲斐のあるおじさんだった。少女を故国に帰そうと、おじさんの奮闘努力は国を越えて人々の心を動かす。おじさんがそこまでの力を発揮できたのも、少女という存在があったから。そんなおじさんに守られ自分の居場所に戻った少女は、おじさんの大きな背中を忘れないに違いない。
「バジュランギおじさんと、小さな迷子」(2015)
正直者でお人好しのインド人青年(サルマン・カーン)は、迷子になったパキスタン人少女を家に帰そうと大奮闘。
NY市長選に出馬を表明した富豪が、自分のキャンペーンのため利用しようとしたのは施設にいた少女アニーだった。「ANNIE/アニー」の少女とおじさんの関係は最初、かなり打算的。少女は本当の親を探すためおじさんの話にのっかり、ふたりの利害関係は一致。でも、仕事がすべてだったおじさんがふと自分の人生をふりかえったのは、見つかった両親のもとにアニーが去ったときのこと。〝子どもアレルギー〞だったはずのおじさんの寂しい心を癒してくれたのは、ほかでもない、そばにいればうっとうしかった少女アニーなのだった。
「ANNIE /アニー」(2014)
ビジネス第一だった大富豪(ジェイミー・フォックス)が、天真爛漫な少女と出会ったことで純真な心を取り戻す。
本当の両親と暮らすことが少女にとって最善とはかぎらないと考えさせてくれるのが「メイジーの瞳」だ。少女メイジーにとって実の父親より一緒にいて居心地がよいのは、母親の再婚相手だった。おじさんというにはかなり若いこのおじさんは少女の言動をさりげなく気遣っていてくれる。自分をほったらかしの両親より一緒にいる時間が長い、血のつながらないおじさんに懐いてしまう少女の不安と寂しさがたまらない。
「メイジーの瞳」(2012)
実の親が無関心な少女を見守ってくれたのは、母親の再婚相手の青年(アレクサンダー・スカルスガルド)だった。
そもそも女のコはおしゃまなもの。同い年でも男子と女子とでは精神年齢に大きな開きがある。ませた少女はガキっぽい少年をどこかバカにしているようにも見える。
「ゴーストワールド」の少女たち、同年代の男子がバカに見えて仕方がないイーニドとレベッカが出会ったシーモアは、これは年齢からいってまぎれもない、ぱっとしない、ホンモノのおじさんだ。でもおじさんは歳を経ているだけあって、少女たちにはない経験知がある。少女とおじさんの間に交わされるとりとめのない会話がなんともいえない空気感を生み出し、そのことになぜかとても感動する。
「ゴーストワールド」(2001)
高校を卒業したものの毎日ぶらぶらしている二人の少女は、社会になじめない中年男と出会い共感を覚えていく。
「さよなら、退屈なレオニー」のレオニーとスティーヴも同じようなタイプの少女とおじさん。学校からも親からも逃げ出したい少女が出会ったのは風采のあがらない、しかしギターの腕だけは確かなおじさん。他の誰とも口をききたくないレオニーが、この冴えないおじさんとだけ話をする。一緒にギターを弾く。なにも事件は起こらないし、おじさんがこの少女を守りたい、なんて考えるわけでもない。お互いの存在と価値観を信頼している、そんな少女とおじさんの関係が心に残る作品だ。
「さよなら、退屈なレオニー」(2018)
世の中不満だらけの女子高生レオニーは、全然サエないけれどギターの上手いおじさんにギターを習うことに。