韓国の若き巨匠ポン・ジュノの最新作「パラサイト 半地下の家族」が世界中で大絶賛されている。2019年年5月にカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞して以降、お目にかかれる日を心待ちにすること7か月強、ついに日本にも上陸。なぜここまで人々を熱狂させるのか。観客の心に“パラサイト”する理由に迫る!(文・塩田時敏/デジタル編集・スクリーン編集部)

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画像: キム一家が暮らす半地下住宅は何かと不便

キム一家が暮らす半地下住宅は何かと不便

一家4人全員無職のキム家が、家庭教師と嘘ぶく長男を先ず始めに、IT企業のCEOパク家の4人家族に次々と寄生開始。この富裕層であるパク家の瀟洒な豪邸も面白い。高台に建つ一軒家で、視覚的にも富裕層と貧困層の高低が一目瞭然に表される。窓から見える景色も全く異なる。というか、パク家のリビングの大きな窓からは、緑の美しい中庭しか見えない。世俗の下々の事など富裕層の目には映らぬのだ。

広すぎる邸内には、当然にも視角から漏れる死角もあり、そこがまたドキドキハラハラ、ときにニヤニヤなサスペンスを生み出す穴場となる。パク家にまんまと寄生したキム家の面々が、パク一家の旅行の不在ににつけこんで繰り広げる宴会の面白さときたら!

だがしかし、突然の台風でパク一家がご帰還。さらにはパク家をクビになった元・家政婦は(還って)来た!このドタバタを文字で書き連ねても、さほど面白くはならないだろう。だが、ひとたびポン・ジュノの映像マジックにかかると、視線、イマジナリーの交錯やすれ違いが、映画ならではの面白さを醸し出すのである。

ソファーの“上”で事が始まるパク夫婦、の傍のテーブルの“下”で息を殺して隠れ、見つめるキム一家。ワルガキの息子が一人佇む中庭のテントの可笑しみは、映画でなければ描けない。

そしてパク邸最大の死角、半地下ならぬ“全地下”の存在。さらに追い討ちかける、縦構造の格差社会表現。この知られざる地下室(建築法改正の防空壕にも関わるのか!?)からの展開は、ポン監督自らの指令で触れる事は出来ないが、ジャンル映画好きなポン・ジュノの面目躍如たる映画的興奮へと突っ走るのであった。

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