韓国の若き巨匠ポン・ジュノの最新作「パラサイト 半地下の家族」が世界中で大絶賛されている。2019年年5月にカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞して以降、お目にかかれる日を心待ちにすること7か月強、ついに日本にも上陸。なぜここまで人々を熱狂させるのか。観客の心に“パラサイト”する理由に迫る!(文・塩田時敏/デジタル編集・スクリーン編集部)

2ページ目にネタバレを含みますのでご注意ください!

“パラサイト”するワケ3
舞台がポン・ジュノ作品おなじみの“地下”

画像: デビュー作「ほえる犬は噛まない」でも地下の場面が

デビュー作「ほえる犬は噛まない」でも地下の場面が

地下室、もしくは地下はポン・ジュノ映画の肝である。監督デビュー作「ほえる犬は噛まない」では、団地の地下駐車場で警備員のオッサンが犬鍋を食べるシーンが肝であった。私はこのシークエンスで一瞬にしてポン監督のファンになる。ペットが失踪した団地住民の階層と団地労働者階層がここで交わるのである。

余談だが、韓国の某映画監督に犬鍋(ポシンタン)をゴチになった事があるが、正直脂っ濃くて食えたもんじゃなかった(笑)。

画像: 下水溝や川底など地下を連想させる場所が登場する「グエムル」

下水溝や川底など地下を連想させる場所が登場する「グエムル」

最もポピュラーな「殺人の追憶」では殺人現場の側溝が、「グエムル 漢江の怪物」は川の底からや下水溝が肝になる。「スノーピアサー」は雪の中を走る列車そのものが動く地下室、密室である。この場合、先頭車両が支配層、後方車両に被支配層という分かり易過ぎる構図が、かえって面白さを削ぐ結果にもなったが。

画像: 「スノーピアサー」の舞台は列車=動く地下室

「スノーピアサー」の舞台は列車=動く地下室

ポン・ジュノは対立的な層、富裕層と貧困層の対立を描くという作家ではない。注意深くシリアスに社会を眺めていくと、それがいつしかシニカルな笑いの作品に結実するという、特有な作家性を持つ監督である。「パラサイト」もどちらの層に肩入れしている訳ではない。ただ、386世代(1990年代)に30歳代で、1980年代の民主化運動に関わった、1960年代生まれ)の末に連なる者としての反骨精神は抜けられない。

そこが、極一部の富裕層ではない、大多数の韓国民層の支持を得て、昨年の韓国興収第二位(ちなみに一位は「エクストリーム・ジョブ」)という大ヒットを記録したのではないか。むろん韓国が実際に超競争社会であり、超学歴社会であって決定的な格差を生んでいるのは言うまでもない。

キム・ギヨン監督の古典名作「下女」、それをリメイクしたイム・サンス監督の傑作「ハウスメイド」等々、階級格差映画は韓国映画の伝統だ。文政権の最低賃金引き上げによる、働き方改革の失政で20代の失業率は10%、大学、大学院を出ても3人に1人しか就職出来ない韓国の現実。いや、日本も似たような状況は直ぐそこだ。2020年度のスクリーン誌ベストワンは「パラサイト」になると断言する。

記者会見&舞台挨拶
ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホ来日!

二人揃っての来日は 「グエムル」以来13年ぶり!
Photos by Tsukasa Kubota

2019年12月26日、ポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホが「グエムル漢江の怪物」以来13年ぶりにそろって来日し、記者会見に出席した。20年来の付き合いだという二人は会見中も息ピッタリ。

「パラサイト」の撮影中にお互いをスゴイと感じた瞬間を尋ねられると、ソンは『本作は芸術家としての一つの頂点なのでは。監督の進化の終わりはどこなのか。私をドキドキさせてくれる唯一の監督です』と回答。監督も『難しい場面も彼であれば観客を説得できるだろうという信頼があった。根本的なところで信頼できる俳優』と大絶賛。互いの強い絆を感じられる会見となった。

翌27日もそろって舞台挨拶に登場。鑑賞直後の興奮冷めやらぬ観客を前にソンは『オファーを受けた際は当然社長役だと思っていたのですが、まさか半地下にいる役だとは夢にも思いませんでした』と明かし、会場を沸かせた。

画像: 互いを知り尽くしている監督とソンは 今回で4作目のタッグ

互いを知り尽くしている監督とソンは 今回で4作目のタッグ

「パラサイト 半地下の家族」公開中
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