1917 命をかけた伝令
2020年2月14日(金)公開
「アメリカン・ビューティー」のオスカー監督サム・メンデスが、第一次世界大戦が苛烈を極めていた1917年の戦場のある一日の物語を“全編ワンカット”という画期的な映像で映画化。1600人のの命がかかた重要な伝令をを託された若きイギリス軍兵士二人の決死の任務を描く。「はじまりへの旅」のジョージ・マッケイが主演を務めるほかコリン・ファースら英国を代表する俳優がゴールデングローブ豪華競演。GG賞の監督賞・作品賞を制し、アカデミー賞でも本命の一本に。
監督:サム・メンデス/出演:ジョージ・マッケイ、ディーン・チャールズ・チャップマン、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ
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編集部レビュー
大がかりなロケーション撮影が生む戦場の本物感
最近は何でもCGで作れてしまうことへの反発だろうか、大がかりな撮影に妙に感動してしまう。これこそ映画だ!ってね。本作で何よりたまげたのは、よくもこれだけリアル戦場を作り上げたなあ、ということ。塹壕ってこんなに大きかったの!?とか、泥沼の最前線とか果てしない廃墟群とか。しかもワンカット撮影だからさらにリアル度UP。本物の戦場体験と言ってもいいんじゃないだろうか。
正直、ドラマ性よりも臨場感とかスケール感とかが見どころの映画だと思う。そういう意味では、クライマックスの人海戦術による突撃シーンは圧巻の迫力。同じワンカットということもあり思い出したのが「史上最大の作戦」のノルマンディー上陸における空撮シーン。今だったら絶対CGで合成するだろうけど、あれだけの人数を動かすバカみたいなエネルギーが、たまらなくいいと思えるのだ。
近藤邦彦
サム・メンデスのワンカット撮影といえば「007 スカイフォール」を思い出す。屋内を回って屋上へ。いかにもなワンカット感がいいです。
戦場をただ駆けるワンシーンが忘れられない
第一次世界大戦終結から約100年。その経験者がもうほぼいない今、それが映画で改めて語られる意味は大きい。同時期に記録映画「彼らは生きていた」も公開されるが、こちらは監督が祖父の体験談から構想したという企画だ。
本作の最大の特徴は「戦争映画をワンカットで撮る」という空前の試みにあるが、その手段と効果が物語上“不可欠”になっていく点に真の面白さがある。重大な伝令任務を託された若き兵士の一日の物語。高まる緊張感や没入感を、その革新映像がさらに加速する。気づけば戦場の空気を皮膚感覚レベルで体感することになるのだ。
その極致が終盤のシーン。爆撃の中を主人公が命がけで走る。まるでメロスのように、ただ友のため、約束を果たすために。その瞬間の映像の奇跡に、感情の共鳴に心が震える。この場面だけでも本作が忘れられない一本になった。
疋田周平
副編集長。英国の有名俳優たちがピンポイントで登場しているのも 本作の見どころ。マーク・ストロング登場シーンの“溜め”がいい!
圧倒的な没入感が戦場の恐ろしさを物語る
二人の若者が重要な任務を携えて、友軍の拠点までひた走る。数多存在する戦争映画のなかで、ともすれば平坦になってしまうこのストーリーを“全編ワンカット”という撮影手法が新しい映画体験に作り上げています。逆に言えば、複雑なストーリーにしないことがこの作品のミソなのかもしれません。
ただひたすらにある場所を目指す。そんな映像が不適切な表現かもしれませんが、なんだかRPGのように思えて、自身も主人公と行動を共にしている感覚に。まさに没入感。その興奮を助長するかのように現れる超VIP俳優の数々。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、キャストを下調べして行くもよし、反対に知らずに観るのも面白いかもしれません。
大物俳優探しは、あくまでオマケとして...この没入感こそが戦争という負の歴史を肌で感じさせる強いメッセージとなっていました。
阿部知佐子
とはいっても、やっぱり所々に現れる名優たちに監督自身が楽しん でいる節を感じます。だってあの登場の仕方とか狙っているとしか...