「荒野の七人」「大脱走」「シンシナティ・キッド」「ブリット」––––数々のアクション映画で当時の男たちを夢中にさせたスティーブ・マックイーン。クールでカッコよくて、何よりその鮮烈な生きざまは憧れだった。もうあんなスターは出て来ないかも知れない。でも彼の雄姿は私たちの心の中でまだ生きている。生誕年を迎えるいま、スターチャンネルではマックイーンの出演作を完全網羅で放送!あの時抱いた熱い思いをもう一度、甦らせてみようではないか。(文・秋本鉄次/デジタル編集・スクリーン編集部)

スピードと反逆だけじゃない真に女性を愛し、愛された男

「ゲッタウェイ」の共演で結ばれた二人目の妻、アリ・マッグロー

晩年の辛い日々も語ろう。1975年から彼は約2年、突然活動を停止する。「ゲッタウェイ」で共演後、結婚した2番目の妻の女優アリ・マッグローとの不仲説、自身の肥満説、体調不良説、精神的疾病説などが渦巻く。私は、彼も人の子、充電期間でしょ、とご気楽に構えていた記憶がある、〝復帰第一作〞「民衆の敵」も違和感を感じたし、続く「トム・ホーン」も不調だった。1979年の夏頃から、体調不良説が徐々に信憑性を得るようになった。

画像: 俳優休業後、復帰作となった「民衆の敵」

俳優休業後、復帰作となった「民衆の敵」

大病とは無縁の男の体を病魔は蝕んだ。結果的に遺作となる「ハンター」の撮了直後に倒れる。病名は肺ガン。彼はヘビースモーカーだった。撮影合間のショットの多くで喫煙する彼の姿がある。まあ、当時は大人の男の喫煙は当然というか、一種のステイタスだった。私も吸っていたが、50歳を前に止めた。それは〝マック兄ィ〞の教訓かも知れない。

最期を看取ったのは3人目の妻、バーバラ・ミンティ

彼は暗雲を吹き払おうとするかのように、1980年1月、同棲中のモデル、バーバラ・ミンティと3度目の結婚をし〝ガンとの闘争宣言〞をするが、11月7日の手術後、帰らぬ人となった。遺作「ハンター」は日本では死の直後、お正月映画となった。違和感を覚えつつ、万感の思いで観た。幾分痩せて見えた。老眼鏡シーンも切なかった。

画像: 最後の雄姿を見せた遺作「ハンター」

最後の雄姿を見せた遺作「ハンター」

アクションは精一杯奮闘していたが、電車の屋根の危険シーンなどはダブルを使ったそうだが、もはやどうでも良かった。評論家という立場を離れ、ただただ、一ファンとして〝最後の雄姿〞を目に焼き付けていた。新しい命の誕生で終わるラストは、次世代に後を託す彼の〝遺言〞なのか。

そろそろ、結論付けよう。マックイーンとはどんな人物だったのか。

翌8日、彼の遺体は荼毘に付され、翌々日の9日には告別集会が行われた。正式の葬儀は遺言に従い行わず、遺灰も遺言通り、飛行機で太平洋に散かれた。あたかも、前記の「パピヨン」のラストのように、大海原で今もマックイーンの魂は漂っている!ここで特記したいのは、未亡人バーバラはもとより、元妻ニール・アダムス、前妻アリ・マッグローも姿を見せていることだ。告別式に3代の妻が一堂に会すなんてことは希有だろう。

最初の妻は舞台女優だったニール・アダムス

彼の人生の様々な紆余曲折、毀誉褒貶、悪名功名があろうと、3人のとびきりの女性が、彼を恨むことなく、無視することなく、本心から死を悼み、参列してくれたことが、彼の最大の財産であり、〝人徳、人柄〞だったのではないか。スピードと反逆だけじゃない、真に女性を愛し、愛された。この一点だけで、男として最高にカッコいいヤツだぜ、と語り継ぎたい。

スティーブ・マックイーン、いや〝マック兄ィ〞、その比類なき魅力を、生誕90年のこの機会にこそ!

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