時代を超えて読み継がれ、女性のバイブルと名高い不朽の名作小説「若草物語」。その映画化に、現代を代表する女性監督グレタ・ガーウィグが挑みます。本年度アカデミー賞6部門で候補に上り、話題沸騰中の本作の出来栄えを確かめました。(文・杉谷伸子/デジタル編集・スクリーン編集部)

彼女たちに自分を重ねずにいられなくなる瞬間がある

しかし、それから25年。いまや、夢を持つのは大前提。その夢をいかにしてかなえるかが、この作品の肝になっている。姉妹それぞれの物語が丁寧に描かれるなか、これまでになく大きなウエイトが置かれているのが、画家を目指しながらも自分の才能の限界を知り、裕福な青年との結婚を控えるエイミー。

しかも、アームストロング版では成長してからをサマンサ・マシスが演じていたエイミーを、本作ではフローレンスが1人で演じている。おかげで少女時代のエイミーのローリーへの想いに、お金持ちとの結婚を夢見る子供の無邪気な憧れ以上のニュアンスを感じさせると同時に、ローリーをめぐるジョーとエイミーの女心の複雑さもより立体的に。

注目POINT!
末っ子エイミーの大きな存在感

画像3: 評論家レビュー「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

画家を目指しながらも自分の才能の限界を知る末っ子エイミーの存在が大きくクローズアップされる

資産家との結婚を期待されながらも貧しくても愛のある結婚を選び、現実の厳しさに直面しつつも、自分が心から求める幸せが何かを知るメグ。愛する音楽を通じて、ローレンス氏の悲しみを癒すベス。姉妹の生き方も物語もそれぞれだからこそ、その誰かに、いや、もしかしたら彼女たちすべてに、思わず自分を重ねずにいられなくなる瞬間があるはずだ。

でも、自分らしく生きるためには経済力も大切。メリル・ストリープがシニカルなユーモアを交えて演じる裕福なマーチ伯母の言葉のみならず、作家としてのジョーのある選択が、女子もしっかり社会や経済の仕組みをわかっていないといけないと気付かせてくれるあたりも、まさに今どき!

メグの夫ジョン・ブルックにはジェームズ・ノートン。フレデリック・ベアにはルイ・ガレル。そして、ローリーにはティモシー・シャラメというタイプの違うイケメンたちが、ままならない人生に向き合いながら、それぞれの愛し方で姉妹に向き合う男性たちを陰影豊かに演じているのもお楽しみ。

注目POINT!
「レディ・バード」の名コンビ再び!

画像4: 評論家レビュー「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

「レディ・バード」でも組んだシアーシャ&シャラメの名コンビがキャラクターの関係性に説得力を与える

ティモシーはローリーのイメージとは違うと感じる向きもいるだろうけれど、傷心を抱えたパリでの日々には、ティモシーの物憂げな雰囲気がよく似合う。なにより、『レディ・バード』でも組んだシアーシャとのコンビは、ジョーとローリーがソウルメイトであることを空気感でも楽しませる。こんな素敵な親友やパートナーと出会えたらと思わせる。それもまた『若草物語』の時代を超える魅力のひとつだ。

グレタ・ガーウィグ監督インタビュー

これまでのどの監督作よりも “自伝的”な作品よ

注目POINT!
現代を代表する女性監督による「若草物語」

画像5: 評論家レビュー「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

「レディ・バード」など現代女子のリアルを描いてきたグレタ監督(右)が「若草物語」を今に甦らせる

『物心がついた時から「若草物語」は私の一部だった。ジョーを自分の分身みたいに思っていたの。だからあのキャラクターから何かを生み出したいとずっと思ってきた。長い間ずっと作りたいと願ってきた映画よ。ティモシー(シャラメ)から聞かれたの。なぜ「若草物語」なの?と。私は彼に言った。

これは私にとって「レディ・バード」以上にパーソナルな映画。私のすべてよ、と。私が描きたいのは表現者としての女性、そして女性とお金の物語よ。今まで誰も掘り下げてこなかった側面から原作を描きたかった。私の中ではかなり具体的なイメージができていたの。こういったら奇妙に聞こえるだろうけど、これまでのどの監督作より自伝的な作品よ』

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
2020年6月12日(金)公開

監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン
配給:ソニー・ピクチャーズ

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