ハリウッド映画界を代表する監督・俳優のクリント・イーストウッドが、2020年5月31日で90歳を迎えます。マカロニ・ウエスタンへの出演、「ダーティハリー」の大ヒット、2度のアカデミー賞監督賞受賞など輝かしい経歴を持ち、いまだ現役で活躍を続けるイーストウッドのこれまでの映画人生を、4つの時代に分けて振り返ってみましょう。今回は後編です。(文・松坂克己/デジタル編集・スクリーン編集部)

前編はこちら↓

Photos by Getty Images

クリント・イーストウッド

1930年5月31日、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。高校卒業後に働いたあと軍に入隊し、除隊後に映画界入り。TV「ローハイド」で人気者に。イタリアでマカロニ・ウエスタン「荒野の用心棒」などに出演後ハリウッドに戻り、「ダーティハリー」(1971)の大ヒットでトップスターになる。「恐怖のメロディ」(1971)で監督デビュー。以後、俳優・監督として活躍。「許されざる者」(1992)と「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)でアカデミー賞監督賞・作品賞受賞。

監督業で躍進

1993年 ついにアカデミー賞監督賞受賞

画像: 初めてアカデミー賞監督賞に輝いた「許されざる者」

初めてアカデミー賞監督賞に輝いた「許されざる者」

亡くなった二人の監督、セルジョ・レオーネとドン・シーゲルに捧げられた〝最後の西部劇〞「許されざる者」(1992)で、ついにイーストウッドはアカデミー賞の監督賞に輝いた。こだわってきた西部劇での受賞はいかにもイーストウッドらしい。彼は製作も兼ねているので作品賞のオスカーも手に入れたわけだ。憎まれ役で共演したジーン・ハックマンも助演男優賞に輝いた。

イーストウッド62歳、これ以後、出演だけの作品は翌1993年の「ザ・シークレット・サービス」などほんの数本で、監督業に比重が移って行く。

年齢を活かした役回りで監督・主演

当時絶頂期だったケビン・コスナーを主演に迎えたロードムービー「パーフェクト・ワールド」(1993)、世界的ベストセラーの映画化でメリル・ストリープと初共演となった大人の恋愛ドラマ「マディソン郡の橋」(1995)、大統領の犯罪を目撃した男のサスペンス「目撃」(1997)、無実の死刑囚を救おうとする社会派サスペンス「トゥルー・クライム」(1999)といった監督兼主演作では60代という年齢を活かした役回りで、渋い燻銀の魅力を見せてくれていた。

画像: メリル・ストリープ共演の「マディソン郡の橋」

メリル・ストリープ共演の「マディソン郡の橋」

その合間には若手のジョン・キューザックに主演させたサスペンス「真夜中のサバナ」(1997)のような監督のみの作品も送り出している。

出演者たちも次々とオスカー受賞

画像: 「ミスティック・リバー」では出演者にオスカーをもたらした

「ミスティック・リバー」では出演者にオスカーをもたらした

2003年の監督作「ミスティック・リバー」は人気作家デニス・ルヘインの傑作ミステリーの映画化だが、これでショーン・ペンがアカデミー賞の主演男優賞を、ティム・ロビンズが助演男優賞を獲っている。イーストウッドの演出力が傑出したものであることが再び証明された。この作品は作品賞・監督賞の候補にもなっていたのだが、それを逃した無念は、早くも翌年晴らされることになる。

画像: 二度目のアカデミー監督賞受賞作「ミリオンダラー・ベイビー」

二度目のアカデミー監督賞受賞作「ミリオンダラー・ベイビー」

「ミリオンダラー・ベイビー」がオスカーで作品・監督・主演女優(ヒラリー・スワンク)・助演男優(モーガン・フリーマン)の主要四部門を制したのだ。この時イーストウッドは74歳。監督賞受賞の最高齢記録だ。

出演しない監督作が続くが…

画像: 「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」製作報告のため来日も(右から二人目)

「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」製作報告のため来日も(右から二人目)

その後も、第二次世界大戦末期の悲惨な日米決戦〝硫黄島の戦い〞を日米双方の視点から描く二部作「父親たちの星条旗」(2006)「硫黄島からの手紙」(2006)、アンジェリーナ・ジョリーを主演に1920年代に実際にあった少年誘拐事件を描いた「チェンジリング」(2008)と監督作を送り出し続け、とても70代とは思えない精力的な活動を続けるイーストウッド。もう自身が主演することはないだろうと思われていたのだが……

音楽の面でも活躍

画像: 音楽担当としてだけ参加した「さよなら。いつかわかること」

音楽担当としてだけ参加した「さよなら。いつかわかること」

イーストウッドは音楽の才能にも恵まれており、自作のスコアを度々担当してきている。音楽担当としてクレジットされたのは「ミスティック・リバー」(2003)からで、その後も「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)、「父親たちの星条旗」(2006)、「チェンジリング」(2008)、「ヒアアフター」(2010)「J・エドガー」(2011)で音楽も担当、珍しいところではジョン・キューザック主演のヒューマン・ドラマ「さよなら。いつかわかること」(2007)では音楽・主題歌のみでクレジットされている。

This article is a sponsored article by
''.