中級編:
後味が悪くても、ハッピーエンドじゃなくても満足!クセの強さに引き込まれる!
魂の救いを描いた珠玉のラブストーリー
「シークレット・サンシャイン」(2007)
塩田ポイント:ラストは“神”ならぬ“髪”に救われる映画
事故死の夫の故郷で再起を誓う妻に、今度は最愛の息子を殺される悲劇が。失意の彼女を癒せるのは、付かず離れず見守る野暮天男の、彼女も気づかぬ愛だった。男が女の髪を散髪するラスト。これは“神”ならぬ“髪”に救われる映画。弱者を優しく照らすイ・チャンドン監督の世界。
決してハッピーエンドではないが、絶望はしない。同じくチョン・ドヨン主演なら、辛い過去からHIVに感染した女を愛し抜く純朴男「ユア・マイ・サンシャイン」も絶品。
「シークレット・サンシャイン」(2007)
絶望のどん底に突き落とされたシングルマザーと、彼女をそっと見守る不器用な男の魂の救済を描いた物語。2007年カンヌ国際映画祭女優賞を受賞のチョン・ドヨンの見事な演技が胸を打つ。静かで印象的なラストシーンは一見の価値あり!
監督:イ・チャンドン
出演:チョン・ドヨン、ソン・ガンホ、チョ・ヨンジン
ⓒ2007 CINEMA SERVICE CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED
若きガンホが息子役!リストラ一家大暴走のブラック・コメディー
「クワイエット・ファミリー」(1998)
塩田ポイント:日本版では、自殺客を実は私が演じております(笑)
脱サラ家族が始めたペンション。やっと来た客は翌日死体で発見。悪評恐れて埋めたばっかりに・・・。人生の不条理やアイロニーをシニカルな笑いのうちに描き、韓国映画ルネッサンスを担った作品。
「パラサイト」では親父役のソン・ガンホが息子役で出演しており、若い(笑)。これの日本版ミュージカル・リメイクが、三池崇史監督「カタクリ家の幸福」。キ・ジュボンが演じた自殺客を、日本版では実は私が演じております(笑)
「クワイエット・ファミリー」(1998)
リストラを機にペンション経営に乗り出した一家にふりかかる災難を描いたノンストップ・ホラー・コメディー。やっときた客は次々と変死。埋葬を繰り返す中、家族はすっかり穴掘り上手に。「パラサイト」の家族と比較して観るのもおすすめ。
監督:キム・ジウン
出演:ソン・ガンホ、パク・インファン、チェ・ミンシク
©︎1998 ILSHIN INVESTMENT.CO.Ltd. All Right Reserved
日本漫画大好き!ポン・ジュノおすすめ漫画を映画化!
「オールド・ボーイ」(2003)
塩田ポイント:人間の血生臭ささえ感じさせる、骨太エンターテイメント
「パラサイト」のソン・ガンホ、そしてイ・ビョンホン、イ・ヨンエが共演した「JSA」で知られるパク・チャヌク監督だが、より自身の持ち味を発揮するのが“復讐三部作”のうちの本作。日本の漫画を原作に、生き生きとした生身の人間の血生臭ささえ感じさせる、骨太エンターテイメント。
カンヌでタランティーノ審査員長が大絶賛。もともとはポン・ジュノが、先輩であるチャヌクに、是非とも撮って欲しいと持ち込んだ企画なのだとか。
「オールド・ボーイ」(2003)
理由もわからないまま15年も監禁されていた男が突然解放された。男はなぜ誘拐されたのか。謎を明らかにするとともに復讐を心に決めたが、そこには想像を絶する策略が隠されていた。韓国映画のパワーをガツンと感じる衝撃作。
監督:パク・チャヌク
出演:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・へジョン
©︎2003 SHOW EAST
上級編:
狂気、欲望、復讐。大胆な映像表現と緻密なストーリー。この満足感、韓国映画でしか得られない!
実話を基にしたクライムサスペンスの真骨頂
「チェイサー」(2008)
塩田ポイント:これがデビューのナ・ホンジン監督の才能は桁外れ
猟奇犯罪者を刑事達がチェイスする映画は、古今東西腐るほどある。が、この作品が面白いのは、「追撃者」(原題)が元刑事で、今は風俗店デリヘルの経営者、という点である。いわば売春という罪が、殺人という罪を追いかけるのだ。
人間の原罪と原罪がせめぎあう、生/性と死の相克のアクション映画。面白くなかろう筈がないではないか。濡れた映像の冴えたサスペンス。これがデビューのナ・ホンジン監督の才能は桁外れと言うしかない。
「チェイサー」(2008)
韓国を震撼させた実際の連続殺人事件がベースとなっている本作。元刑事とシリアルキラーの狂気と狂気がぶつかり合う凄み、スピーディーな展開とハイテンションでスリリングな演出にはリアルに息が苦しくなる。
監督:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ソ・ヨンヒ
© 2008 Big House / Vantage Holdings. All Rights Reserved.
鬼才キム・ギドクの原点!全世界に衝撃を与えた官能作品
「魚と寝る女」(2000)
塩田ポイント:ギドクにとって憎しみは愛であり、残酷は優しさなのだ
一見すると反道徳な物語ながらも、そこに浮かび上がり、見えてくるのは、人間の罪、業、性、その痛みであり哀しみだ。世界に対する、監督キム・ギドクの愛と憎しみ。ギドクにとって憎しみは愛であり、残酷は優しさなのだ。
それを美しく幻想的に、詩的な映像で訴えてくる、これこそが、映画だ!世界三大映画祭を制したギドク作品はどれもお薦めだが、先ずは世界的に認められる契機となった「魚と寝る女」から見てみよう。
「魚と寝る女」(2000)
孤独な女と追い詰められた男が激しく求め合い、傷つき合う姿を官能的な映像美でミステリアスに映し出す。残酷的でショッキングな映像が世界各国の映画祭で物議を醸した問題作でありながら、世界の映画祭で数々の賞を受賞した。
監督:キム・ギドク
出演:ソ・ジョン、キム・ユソク、バク・ソンヒ
©︎2000 MYUNG FILMS All Rights Reserved.
愛の不確かさを描く!アンチ“韓流”コメディー
「妻の愛人に会う」(2006)
塩田ポイント:タクシー代が安い韓国だから成り立つ企画
妻の浮気相手をシメてやろうと、その男の運転するタクシーに乗り込むが、ソウルから江原道まで行く羽目となる、気弱な中年男のロードムービー。タクシー代の安い韓国だから成り立つ企画で、バカ高い日本じゃ出てこない発想だろう。
監督のキム・テシクは日本映画学校に留学した変り者ゆえ、その日韓ギャップからのアイデアかも。男がバスに乗り込む様を一瞬で見せる省略法のショットなど、天才的マジック映像のつるべ打ちは必見。
「妻の愛人に会う」(2006)
妻を寝取られた男と、寝取った男二人が数日間のタクシー旅へ。シニカルでユーモラスな展開は男女の愛と嫉妬を鋭くえぐり出してゆく。韓流スター出演なしの作品だが、世界各国の映画祭で一大旋風を巻き起こしたニュータイプの韓国映画。
監督:キム・テシク
出演:パク・クァンジョン、チョン・ボソク、チョ・ウンジ
パラサイトに影響を与えた韓国映画の名作をリメイク
「ハウスメイド」(2010)
塩田ポイント:常に韓国社会の構造に肉薄する作風
「パラサイト」が参考にしたと云われるキム・ギヨン監督の「下女」(1960年)。その現代版リメイクが、イム・サンス監督の「ハウスメイド」だ。豪邸に住み込む、若く無口で素直なメイドをめぐる、欲望と狂気の物語。現代韓国社会の階級制度を真正面から描きたかった、とイム監督。
常に韓国社会の構造に肉薄するその作風。上流階級、弁護士一家の空虚な生活を、粋に、エロティックに活写した「浮気な家族」も超お薦めだ。
「ハウスメイド」(2010)
上流一家に仕える無口で従順なメイド。危うい魅力の彼女に一家の主が体の関係を求めて以来、次々と不可解な出来事が!一家とメイドたちの人生をかけた駆け引き。豪華邸宅を舞台に繰り広げられる、禁断にして究極のサスペンス。
監督:イム・サンス
出演:チョン・ドヨン、イ・ジョンジェ、ユン・ヨジョン
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