一部ネタバレを含みますのでご注意ください!
アリ・アスター監督
1986年7月15日、ニューヨーク出身の34歳。2011年から7本の短編を発表し、2018年に「へレディタリー」で長編デビュー。2020年1月には「ミッドサマー」のPRで初来日を果たし、にこやかな笑顔を振りまいてくれた。次回作は4時間を超える“ナイトメア・コメディー”になるのだそう。
一部ネタバレを含みますのでご注意ください!
「ミッドサマー」はいわば「へレディタリー」の拡大延長である
言ってみれば、このカルト儀式の続き、拡大延長が「ミッドサマー」なのである。ホルガ村には、四季にも似た命のサイクルがある。18歳までの子供時代が春、36歳までの夏は巡礼の旅。そして54歳までの秋が労働の季節で、冬は人々の師となり、72歳で命のサイクルを終え、新たな生命に生まれ変わらなければならない。
西欧版〝楢山節考〞とも言うべき、小さな民俗共同体の嫌らしさ、それ故の面白さ。妖しいまでの長閑さ、特異のエロティシズムに、ついつい惹き込まれてしまう。コミューン維持の為、外部の血を導入するセックス儀式の面妖さ。メイクイーンを選ぶダンスの歓喜。
クイーンになったヒロインのダニーは、神への捧げ物を選ばなければならないが、生け贄となるのは元彼⁈ のダメンズ、クリスチャンという皮肉(邪教に対するキリスト教徒を意味する役名も皮肉)。ホラーというよりは破局のラブストーリーではないか。実は脚本執筆直前に、アスター監督は失恋した、というから穏やかではない。
映画の導入部ではダニーと、両親を道連れに心中する双極性障害の妹とのトラウマもじっくり描かれる。単なるホラーなら端折るシークエンスだが、これがあるためジャンル映画としては異様な長さの上映時間。だが、この人間関係の機能不全こそ、アスター監督が描きたい所なのだろう。だからホラーを超越して、アリ・アスター映画はシリアスにカルトとなる。
さて、アスター教の信者となった人々に是非見て頂きたいのが、1973年のイギリス映画「ウィッカーマン」(監督ロビン・ハーディー)だ。これぞ「ミッドサマー」の原点とも言うべき、土俗的異教の不気味さ面妖さ、カルトの真髄に迫る傑作。あ、ニコラス・ケイジによるリメイクは、忘れて貰って構いません(笑)。
「ミッドサマー」Blu-ray+DVD 豪華版3 枚組(スチールブック仕様・初回生産限定版)
2020年9月9日(水)発売
販売:TCエンタテインメント
価格:8,300円+税(3枚組)、BD豪華盤=6,800円+税(2枚組)、通常版BD=4,900円+税ほか
特典:解説リーフレット封入、ポストカード3枚セット封入、メーキングほか
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