林 彰洋
1987年5月7日生まれ。東京都東大和市出身。195㎝の長身で、ハイボールには絶対的な強さを見せる大型ゴールキーパー。冷静な判断力と的確なコーチングにも定評があり、最後尾からチームに安定感をもたらす存在。2007年に日本代表初選出。Jリーグ初出場は2012年。FC東京には2017年から所属。2019年にはJリーグベストイレブンに選出された。
森重 真人
1987年5月21日生まれ。広島県出身。日本屈指のセンターバックとして、1対1の強さ、打点の高いヘディング、ビルドアップ能力を併せ持ち、セットプレーから高い得点能力も発揮する。日本代表として国際Aマッチ41試合2得点。Jリーグの初出場は2006年。FC東京には2010年から所属している。Jリーグベストイレブンには5度選出されている。
第二次大戦後、ナチス兵士が英国との平和の架け橋となった実話を映画化
「キーパー ある兵士の奇跡」
2020年10月23日(金)公開
スポーツの持つ力をいろんな角度から見せてもらえた作品です(森重)
──まず映画をご覧になっての率直な感想をお聞かせいただけますか。
森重 真人(以下、森重)
「実話というところで、実際によくドイツの戦争、ナチスの映画はありますが、一人の人にスポットライトを当ててそれがサッカー選手でという映画は初めて観ました。
戦争の中でいろんなことが起きていたんだなということを初めて知りましたし、ある意味そういう中でもサッカーをしていたんだなということが印象的でした。どういう時代でも状況でもサッカーボールひとつでできるのがサッカーですし、ボールひとつでみんなを笑顔にするというか、サッカーを楽しむこともできるし、観ている人も楽しませることができるし、スポーツの力をいろんな角度から観させてもらったなという印象です」
林 彰洋(以下、林)
「僕は実際にヨーロッパでサッカーをプレーしていた経験があるので、あれほどのバッシングではないですが、人種差別のようなものを感じたこともあります。それをどうやって乗り越えていくかというと実際のサッカーのプレーで見せていくしかなくて。
プレーを見せて上手いなと思われると差別的な発言を本当にクリアしていける、人として認められるようなところを感じたのが印象的でした。まさにその時代に、そして戦争が起こった後ならより差別の状況も酷かったと思います。
危機的状況の中でも、彼の存在意義だったりとか、サッカーで認めさせられる、垣根を越えたというのはサッカーの良さだなと改めて思いました。ヨーロッパでサッカーをしていた時も本当に同様の思いを感じたので、リアルな状況、サッカー(フットボール)というのを表現しているのかなと思いました」
──主人公の「バート・トラウトマン」のことはご存じでしたか。
林
「僕は正直知らなくて、インターネットで調べました。銅像になるような選手というのを知らなかったです。僕はゴールキーパー(以下、GK)をやっているのですが、その当時のソ連のGKで世界一だと言われていた選手がいて、その人が、“僕が世界でナンバーワンだけど、トラウトマンがその次にくる”という発言をしているのを知った時に、本当にすごい選手なんだなって感じましたし、首の骨が折れてもサッカーをやっている選手ってなかなかいないと思います。
FAカップの決勝戦で首が折れてもセービングを何度もしていたと書いてありましたし、メダルをぶら下げた時には首が曲がっていたという話が載っていて、そういうのを読んだりすると、僕だったら即刻退場しているんだろうなと思いました」
森重
「みんなそうだよ(笑)」
林
「ただ、経緯を考えると彼からすればそこで存在意義を出していくしかないし、自分の生きる道はサッカーで証明していくしかないという思いもあったでしょう。やっぱり戦争を乗り越えている人だったので、負けてたまるか精神ではないですが、そういう気持ちのみでやっていたのではないかと思いますね。
イチスポーツですけれど、それを考えるとただのスポーツとは思えないというか、たかがスポーツと言われながらも想いを乗せた大きなコミュニケーションツールのひとつなんだと思いました。すごく感慨深かったです」
森重
「僕も全く彼を知らなかったですね。この映画を観て、そういう中でサッカーをして、そこまでいった選手がいたということを知りました」
林
「森重選手は現役の選手もあまり知らないですよ(笑)」
言葉が通じない人とでもサッカーでコミュニケーションをとることができるんです(林)
──時代は違うものの、同じサッカー選手として共感する点はありましたか。
林
「僕はやっぱりコミュニケーションのひとつとしてサッカーが使えるというところ。自分もそうでしたが言葉が話せなくて、コミュニケーションが全然取れないのにサッカーをすると通じ合えるというのがサッカーの醍醐味のひとつで、一つ挙げるとしたらサッカーがコミュニケーションのひとつになることが描かれていて共感しましたね」
森重
「映画を観ていて、環境が良くなかったり、自分がいる場所がない中で、自分が目指すべきところがちゃんとあって、環境のせいにしないで自分なりにできるトレーニングをやったり、目標に向かって自分がやるべきことを重ねていく姿が心に残りました。
どの時代も自分がやった分だけ、その成果を得られるというか、目標に向かって厳しい環境の中で努力している姿は共感できました」
──感動したシーンはありましたか。
林
「感動したシーンはいくつかありますが、やはり彼が存在を認められた時。すごい感動しました。あとFAカップで優勝した時に人種の垣根を越えたところも」
森重
「僕も同じで、ファンにも、チームメイトにも認められて、主人公が自分の存在をしっかり示せたのはこの映画のクライマックスでもあると思うので、そこが一番感動しましたね」