今月の一本
「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」
2021年1月8日(金)公開
2020年制作
監督/エープリル・ライト
知られざるスタントウーマンたちの仕事にスポットを当て、映画史に残る数々のアクションシーンの裏側に迫るドキュメンタリー。製作総指揮を務めるのは「ワイルド・スピード」シリーズなど数々のアクション映画に出演してきたミシェール・ロドリゲス。
作品のナビゲーターとしても出演し、スタントウーマンたちの素顔に迫っている。「ゴーストバスターズ」(2016)監督のポール・フェイグら映画人たちがコメンテーターとして登場。
© STUNTWOMEN THE DOCUMENTARY LLC 2020
編集部レビュー
どんなに危険な目に遭っても戻りたい魅力的な世界とは?
近年では「デッドプール2」のスタントマン死亡事故など、時々そうした悲報をハリウッドニュースで耳にすると、あれだけ激烈なアクションシーンの裏で命を投げ出してスタントを演じる人の存在を思い出す。
「バイオハザード」だったかで、撮影中の事故で大けがした女性スタントマンもいた。そんな人たちの仲間を描く本作は、我々がいつも見ているのに気づかない映画の真実を語ってくれる。
登場する元ベテラン女性スタントマンが、『もう一度現場に戻りたい』と涙するシーンが印象的。どんなに危険な目に遭い、大けがをしても“戻りたい”という撮影現場はどれだけ魅力的なのだろう。
その時この映画の中にも出て来るタイトルだが、バート・レイノルズ主演の「グレート・スタントマン」を思い出した。あそこで描かれていたスタントマンたちの心意気は、確かに彼女たちが言うように“魅力的”だったから。
レビュワー:米崎明宏
編集長。元祖「ワンダーウーマン」とか「チャーリーズ・エンジェル」とか、懐かしい作品の映像も出てきて、それも見どころの一つ。
彼女たちの闘いは映画のもう一つの歴史
映画の裏方たちについてそれほど多くが語られる機会はない。だから“スタントウーマン”に光を当てた本作はそれだけで貴重な記録だ。作品の中心になるのは名作映画の印象的なアクションシーンの数々とその裏にいた彼女たちの証言。
彼女たちの発言一つ一つが度肝を抜かれることばかりだ。いわく『車にひかれる練習は実際にひかれるしかない』……映画ファンでも初めて知る事実の連続に驚きと興奮を禁じ得ないだろう。
しかし映画が進むと、その驚きは次第に感動に変わっていく。それは、名シーンの裏に彼女たちの命がけの献身があることがわかるからであり、彼女たちの苦闘が“女にはムリ”という男性社会の象徴だった業界の在り方さえ変えてきたことがわかるからだ。
彼女たちの闘いは、映画のもう一つの歴史でもある。映画のこれからの見方を確実に変えてくれる一本だ。
レビュワー:疋田周平
副編集長。ナビゲーターがM・ロドリゲスというのも最高! “ワイスピ” 新作はスタントウーマンの存在を意識しつつ見てしまいそうです。