マルチアーティストとしてフランス映画に取り組むマチアス・マルジウ監督。アニメーションの初監督作品を発表後、渾身の最新作は長編実写作品『マーメイド・イン・パリ』。フランスの映画界はコロナ禍で大きな打撃を受け、映画の上映にも悪影響は多大。その分、日本での上映に期待を寄せるという監督。日本の劇場公開に先駆けて、昨年12月に開催されたフランス映画祭2020横浜で、すでに上映を果たし、監督の来日は叶わなかったものの、人気を集め話題となりました。セーヌ川の洪水でパリに打ち上げられた人魚と、恋にハートブレイクな男の出会い。時代を越えた人魚伝説が、今回はどのように描かれるのか注目です。待望の大人のためのファンタジー、次々展開する、おとぎ話の絵本を紐解くような煌めくシーンは、こんな時期だからこそ、私たちの心を明るくしてくれるプレゼントに他なりません。リモートでパリと繋がることが出来、心優しい監督のインタビューに、ときめきました。

病を乗り越えた自分を、励ますための映画

さて、マルジウ監督からも、この作品へのこだわりをお話しいただきましょう。

画像: 病を乗り越えた自分を、励ますための映画

──まずは、フランスは多大なコロナ感染拡大に見舞われ、映画界も大きな打撃を受けたとのこと。お見舞い申し上げたいです。この作品はコロナ禍での上映となったのですね。

「作品が完成して、いざ上映となって、三日後に映画館は休館となりました。この映画に使われている曲も含めてのコンサートも中止。その他の予定していたコンサートもすべて止まりました」

──制作には影響はなかったのでしょうか?

「そうですね。ちょうど編集作業の頃にコロナの感染が広がってきました」

──そういう時期に完成したからなのか、この作品は、今の時期に心が縮まり、想像力も、創造力も失いかけそうな私たちに、とてもよく効くお薬みたいに思えるんです。事実に基づく話の映画化という作品が最近は多かった中で、このようなファンタジーが、物凄く心に沁みて折れそうな気持も救われる。素晴らしいプレゼントを、ありがとうございますと申し上げたいです。

「実はそう思っていただけて嬉しいのは、まさにそう感じていただくために作ったような映画なんですよ。

コロナはまだなかった頃ですが、私自身が重大な病から立ち直った後、作ったからです。11ヶ月もの間、滅菌状態の病室にいた自分の治療ために作ろうと。自分の体にとって良いものは、他の人の体にも良い効果をもたらすのではないかと信じて」

ロマンとファンタジーに込めた、強いスローガン

──そうでしたか。ご自分を鼓舞させるためにも、映画を作られたんですね。

「言うなら、想いを込めた手紙を小瓶に詰めて海に流し、それを誰かが奇跡的に拾って読んでくれたらという気持ちで作った映画なんです。だから今、それが届いた気がして、とても嬉しく感じました」

──なるほど。その気持ちが私の心に届いたというわけですね。素敵です。

「この作品は、軽いロマンチック・コメディのようではありますが、実は戦いの映画でもあります。今の時代、世界中にシオニズムがはびこり、フランスでも極右や極左が政治的に台頭して、ポピュリズムの時代になりました。そういう時代に忘れられてしまいがちな価値について取り戻したいという思いがあるんです」

──ロマンチックなファンタジーの中にも、こだわりのスローガンが……。

「愛もそうですし、優しさ、隣人や家族の大切さ。家族は時に意見が違ったりしますが、支えになる大切なもの。そういったことを詩的な形で、好奇心をもって冒険好きな形で生きていく。それが私にとって生きるということなんです。この映画を観ていただき、それが響いたとおっしゃっていただけたことは、この映画が成功したということになりますから、大変嬉しいんです」

画像: ロマンとファンタジーに込めた、強いスローガン

──それは、こちらも本当に嬉しいです。この映画の試写状を一目見て、作品を拝見したくなったから、きっと以心伝心だったんでしょうか?それにしても監督が50年代にこだわるのは、失われつつある価値観が、まだあった時代だからでしょうか?

50年代とアニメへの想い

「50年代は私の両親の子供時代です。この頃のロックン・ロールの持つ無頓着な明るさが好きです。フランスにおいては、この時代はすべてが可能で、開放的で、私にとって重要な時代なんです。

この映画の主人公は50年代のロックン・ロールの初期のファンであるので、50年代風の服装をしています。彼が経営する店『フラワーバーガー』も時間が止まっているような空間ですね」

──今回の主役は、人魚です。監督の最初の映画はアニメーションでしたから、今回こそ、アニメーション向きかと思われますが、あえて実写にされたのはなぜでしょう?

「私はジブリが大好きですし、初監督したアニメーション作品の『ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓を持つ少年』は、10年かけて作りました。

その時に、声の出演してしてくれたアクターたちと接してみて、次の映画はアクターを実写で活かしたものにしたいという気持ちにさせられました。アニメ制作でも、映画的な光を意識してこだわって作りましたし。

逆に、今回はアニメーションではないけれど、アニメ的要素をかなり入れています。色やキャラクターもどこか漫画的ですし、一部、アニメ的映像も入れています」

──なるほど、そういう試みが素晴らしいですね。ところで、映画に登場する、たくさんのレトロな品々は、監督のコレクションですか?

物が捨てられない主人公は、監督の分身

「そうですね、主人公のガスパールは、何一つ捨てられない男ですが、彼は私の分身そのものです。だから、私のコレクションはたくさんあります。映画にはそれらを使いましたし、さらに蚤の市でも買いましたよ」

インタビューの最後にそう伺って、同じく物を捨てられない筆者は嬉しさのあまり、自慢のコレクションの品の一つ、母の古い足踏みミシンを監督に披露させていただきました。

しかも、監督が無邪気に喜んでくれたことは、身に余る光栄なことで、本当にハッピー。これもリモートインタビューのおかげでしょうか。

終始、優しい心で語ってくださったマルジウ監督は、本物のパリジャンでアーティストでした。

それにしても、コロナ以前の、病に打ち勝った監督が自分へのプレゼントとして作った映画が、『マーメイド・イン・パリ』だったとは驚きでした。

映画がコロナ禍が長引く世界を救う!、日本の日常を癒してくれる。パリからの、この素敵な贈り物。映画の力を知って、ぜひ、癒されてみてください。

画像: 『マーメイド・イン・パリ』予告編(90秒) youtu.be

『マーメイド・イン・パリ』予告編(90秒)

youtu.be

『マーメイド・イン・パリ』

2021年2月11日(木・祝)より、新宿ピカデリーほか全国公開

原題/Une sirène à Paris
監督/マチアス・マルジウ
出演/ニコラ・デュヴォシェル、マリリン・リマ、ロッシ・デ・パルマ、ロマーヌ・ボーランジェ、チェッキー・カリョ
2020/フランス/カラー/102分
提供・配給/ハピネット 
配給協力・宣伝/リージェンツ
後援/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

©2020 – Overdrive Productions – Entre Chien et Loup – Sisters and BrotherMitevski Production – EuropaCorp - Proximus

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