今年のアカデミー賞演技賞候補者の特徴の一つは、初ノミネート組が多く、多様性に富んでいること。受賞最有力といわれるチャドウィック・ボーズマンをはじめ、特にこの5人に注目です。

チャドウィック・ボーズマン

受賞すれば故人の俳優としては史上3人目

『マ・レイニーのブラックボトム』で主演男優賞初ノミネート

チャドウィック・ボーズマン

生年月日:1976年11月29日
出演作品:「42 ~世界を変えた男~」(2013)、「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」(2014)、「ブラックパンサー」(2018)、「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019)、「21ブリッジ」(2019)

2020年8月、43歳の若さで帰らぬ人となったチャドウィック・ボーズマン。闘病中であることを周囲に明かさぬまま撮影した『マ・レイニーのブラックボトム』が彼の遺作となり、最初で最後のアカデミー賞主演男優賞ノミネート作品となった。

画像: Netflix映画『マ・レイニーのブラックボトム』独占配信中

Netflix映画『マ・レイニーのブラックボトム』独占配信中

演じたのは“ブルースの母”ことマ・レイニーのレコーディングに参加するトランペット奏者レヴィー。口が達者で自己主張が強い自惚れ屋、その一方で壮絶な過去の人種差別のトラウマを抱える重層的なキャラクターだ。

明らかにやつれた様子に病魔の影を感じないわけにはいかないが、鬼気迫る中盤の独白シーンをはじめ、その覚悟と不屈の魂が宿った名演に心を揺さぶられずにはいられない。名優が並ぶ主演男優賞部門にあって紛れもなく最有力候補。

受賞すればアカデミー賞を受け取った故人の俳優としてはピーター・フィンチ、ヒース・レジャーに続く史上三人目。黒人俳優としては史上初の偉業となる。

アンドラ・デイ

伝説的歌姫ビリー・ホリデイに成りきった

『The United States vs.Billie Holiday(原題)』で主演女優賞初ノミネート

生年月日:1984年12月30日(36歳)
出演作品:「マーシャル 法廷を変えた男」(2017)、「カーズ/クロスロード」(2017・声の出演)

アンドラ・デイの名前を初めて聞く人も多いかもしれない。『The United States vs. Billie Holiday(原題)』は彼女の映画初主演作。初主演にしていきなりアカデミー賞主演女優賞に初ノミネートされた映画界の「大型新人」なのだ。

画像: 『The United States vs. Billie Holiday(原題)』(日本公開未定)

『The United States vs. Billie Holiday(原題)』(日本公開未定)

もともと彼女は、かのスティーヴィー・ワンダーに見出され、2015年にメジャー・デビューを果たした歌手。本作では壮絶な生涯を歩んだ伝説的ジャズシンガー、ビリー・ホリデイ役に抜擢され、単なるモノマネに終わらない演技や歌唱力で「本人の魂が乗り移ったようだ」と絶賛を浴びた。

アカデミー賞の前哨戦ゴールデン・グローブ賞では主演女優賞(ドラマ部門)を獲得。これは『カラーパープル』のウーピー・ゴールドバーグ以来、黒人女性として史上2人目の快挙となった。

ヴァネッサ・カービー

死産という悲劇に見舞われたヒロインを熱演

『私というパズル』で主演女優賞初ノミネート

生年月日:1988年4月18日(33歳)
出演作品:「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」(2013)、「エベレスト 3D」(2015)、「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」(2018)、「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」(2019)

本年度ゴールデン・グローブ賞のテレビ部門で最多受賞に輝いた話題作『ザ・クラウン』でエリザベス女王の妹マーガレット王女役を演じ、今もっとも注目される女優の一人になったヴァネッサ・カービー。

『私というパズル』では、自宅出産の末に子どもを失うという悲劇に見舞われるヒロインを演じ、2020年ベネチア国際映画祭女優賞受賞を経て、アカデミー賞主演女優賞に初ノミネートを果たした。

画像: Netflix 映画『私というパズル』独占配信中

Netflix 映画『私というパズル』独占配信中

冒頭の長回しの出産シーンに始まり、バラバラになった心を抱えながらも光を見出していくラストまで、繊細かつ迫真の演技が見る者の心を切なく締めつける。強力なライバルひしめく主演女優賞部門にあって今回はダークホース的な存在だが、今後の躍進がもっとも期待される存在でもある。

リズ・アーメッド

名バイプレイヤーがついに檜舞台へ

『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』で主演男優賞初ノミネート

画像: 名バイプレイヤーがついに檜舞台へ

生年月日:1982年12月1日(38歳)
出演作品:「グアンタナモ、僕達が見た真実」(2006)、「ナイトクローラー」(2014)、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(2016)、「ヴェノム」(2018)、「ゴールデン・リバー」(2018)

『ナイトクローラー』『ローグ・ワン』『ヴェノム』などで数々の魅力的なキャラクターを演じ、名バイプレイヤーとして活躍してきたリズ・アーメッド。

『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』では聴覚を失っていく主人公のドラマー青年を演じ、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)にノミネート、さらにアカデミー賞主演男優賞初ノミネートという栄冠を手にした。

画像: 『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』  Amazon Prime Videoで独占配信中

『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』

Amazon Prime Videoで独占配信中

耳が聞こえなくなりミュージシャンとしての人生が終わったと絶望する青年の葛藤を、ドラムや手話などもマスターし、説得力あふれる表現で魅せたアーメッドの名演は、批評家からも絶賛評を獲得。ムスリムとしてアカデミー主演男優賞にノミネートされたのはこれが史上初だ。

スティーヴン・ユァン 

アジア系アメリカ人として史上初の候補者に

『ミナリ』で主演男優賞初ノミネート

画像: アジア系アメリカ人として史上初の候補者に

生年月日:1983年12月21日(37歳)
出演作品:「オクジャ/okja」(2017)、「バーニング 劇場版」(2018)

アジア系アメリカ人として初のアカデミー賞主演男優賞ノミネートという金字塔を打ち立てたのは『ウォーキング・デッド』などで知られるスティーヴン・ユァン。80年代のアメリカ南部にやってきた韓国の移民一家を描くA24の話題作『ミナリ』で、農業での成功を夢見て我が道を突き進む不器用な父親を演じた。

「子ども世代の幸せのために親の世代が懸命に生きる」という意味がタイトルに込められた『ミナリ』。そのテーマの化身であり物語の要として作品をけん引するユァンの存在感が深く印象に残る。

画像: 『ミナリ』(現在公開中)

『ミナリ』(現在公開中)

主演男優賞をはじめとしてアカデミー賞計6部門でノミネートされた『ミナリ』が、昨年のオスカーを制した『パラサイト 半地下の家族』に続きアジア・パワー旋風を巻き起こすか注目だ。

Photo by William Callan/Contour by Getty Images, Myriam Santos via Getty Images, Michael
Kovac/Getty Images for AFI, Rich Fury/Getty Images for PRADA, John Phillips/Getty Images

This article is a sponsored article by
''.