コリアンムービーの“今”を辿る
音楽も映画も、今や韓国が流行の中心と言っても過言ではない昨今。とくに映画はアジア映画初のアカデミー賞作品賞まで上り詰めた『パラサイト 半地下の家族』(2019)を頂点に、韓国映画のクオリティの高さを世界にアピール!
……とはいえ、本国・韓国の映画界は今、『パラサイト〜』でピークを作ってしまったがゆえに「これでいいのか、韓国映画!」と、新しい方向性の打ち出しに躍起になっているのもたしか。だって、ピークがあったら、あとは下り坂というのが世の常人の常。別のピークを作らなきゃ未来はない、というのも、これまた真理というもので。
だからか、ここ近年の韓国映画はめちゃくちゃ多様なジャンルに挑戦しているんですよ。たとえば、『パラサイト〜』と同年に興行成績トップだった『エクストリーム・ジョブ』(2019)はアクション・コメディ+国際犯罪、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)は大ヒットしたゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)の続編ながら、実態は移民問題ネタ。
はたまた現在公開中の『サムジンカンパニー1995』は実際に起きた企業汚職事件をベースにしながらも、じつは女性の社会進出問題を取り上げた社会派コメディだったり。ネトフリで配信中の『スペース・スウィーパーズ』なんて、ハリウッドもびっくりのSFアクション!?ほんの一部だけ挙げても、表面上のジャンルだけではない、深イイお話がたんまり。おそらく、こんなことを余裕でやっているのは、韓国以外だったら映画大国の英米くらいでしょう。
そもそも韓国映画で得意とされていたのは、超ベタだけど泣けるラブロマンスと、人がマジで死んでるんじゃないかというくらいに激しいアクション、朝鮮半島ならではの政治的問題を扱ったスリラー。アクション&政治は、古くは『シュリ』『JSA』から、最近では『鋼鉄の雨』。恋愛は『猟奇的な彼女』や『私の頭の中の消しゴム』などありましたよね。
それらのジャンルで極めた映画人たちが成長し、さらなる平野を求めて行った結果、脚本やVFX、アクション・コーディネートなど、今の世界で戦えるエンタメには欠かせない映画技術も高めていったわけ。
その点、『白頭山大噴火』は韓国映画界が近年新しく挑んできたことを全部盛り。冒頭の噴火に伴う天変地異シーンなんてエメリッヒの『2012』ばりの迫力でつかみはOKだし、Wスパイを使ったミッションという引きも最高。硬派な北側協力者と退官日に新任務でイヤイヤ大尉とのコミカルさというのも韓国映画らしく、韓国系アメリカ人の大学教授が韓国を救おうとする(けど、難あり)というのは、現代韓国らしい見事な設定。
『英語完全征服』なんて「英語コンプレックスがデフォ」という作品から20年弱しか経ってないのに、この爆速の成長ぶりですよ! 韓国映画を追い続けている玄人はもちろん、最近ハマったという人まで全方位で楽しめるのが『白頭山大噴火』!