カバー画像:『慰めの報酬』(2008)
『カジノ・ロワイヤル』(2006)
ジェームズ・ボンドが真の007になるまでの物語
ある任務に成功し00課への昇進を果たしたジェームズ・ボンドは、大型旅客機爆破計画を入手し、これを阻止した。それは世界中のテロ組織から資金を預かりマネーロンダリングをしているル・シッフルという男が旅客機を爆破して製造会社の株の空売りを企んだものだった。
窮地に立たされたル・シッフルが失った巨額の金の穴埋めにカジノポーカーで一攫千金を狙うことを知ったボンドは、財務省のヴェスパー・リンドと現地へ向かう。
『慰めの報酬』(2008)
いよいよボンドの宿敵“スペクター”がその影を落とす
本作は前作のラストからスタートし、ル・シッフルが違法取引に使用していた紙幣を持つ人物の情報をつかんだボンドが慈善団体のリーダー、グリーンと出会うことに繋がっていく。グリーンの裏の顔は謎の組織クアンタムの一員で、ボリビア元独裁者の将軍と結託し、天然資源の採掘利権を独占するという陰謀があった。
将軍に復讐心を燃やす女性カミーユと計画阻止に向かうボンドは、クアンタムが実は強大な犯罪組織スペクターだと知る。
『スカイフォール』(2012)
知られざるボンド自身の過去が少しずつ明らかになっていく
トルコでのミッション遂行中に負傷したボンドは、スパイとして生きることに疑問を持ち行方をくらませていたが、MI6本部が爆弾テロに襲われたことを聞き復帰を決意する。
そのテロの黒幕で、Mに見捨てられたと一方的な恨みを持つ元00ナンバーの持ち主だったサイバー・テロリスト、シルヴァに行きついたボンドは、Mを擁護しつつ自身の生家のあるスコットランドのスカイフォールへ向かう。そしてそこにシルヴァは現れるが……
『スペクター』(2015)
“スペクター”の首領はボンドに関係する人物だった
メキシコシティで命令外の騒動を起こし新任Mから謹慎を命じられたボンドはローマに向かい、メキシコで殺害した人物の妻から情報を得たある犯罪組織の会議に出向く。その組織の首領オーベルハウザーはボンドの旧知の人物でもあった。
ボンドはこの組織の一員だった仇敵の娘マドレーヌに接近。彼女は組織の名がスペクターだと知っていた。オーベルハウザーを追ってモロッコに飛んだボンドとマドレーヌ。その頃MI6でも異変が……
6代目ジェームズ・ボンド、ダニエル・クレイグの功績
6代目ボンドにダニエル・クレイグが選ばれたと発表されたとき、世間一般的にはあまり彼を歓迎するような雰囲気はなかった、というのが本当だろう。「ボンドの軽妙なイメージと違う」「金髪のボンドなんてありえない」「悪役顔のボンドなんて」などなど批判的な意見が多く、今度の人選は失敗?と思われたが、クレイグ版第1作『カジノ・ロワイヤル』が公開されるや、そんな反対意見はすっかり消え去り、全く新しいボンド像の誕生にほとんどのファンが納得したはずだ。
それまでのボンドは粋でスタイリッシュでユーモアもあるダンディーな男という印象だったが、クレイグ版ボンドは、まだ荒々しさやギラギラした若さが残る、いわば未成熟なスパイ。次に何をしでかすかわからない危険な香りがする新生007だった。
これは製作側の思惑でもあり、初代ショーン・コネリーから5代目ピアース・ブロスナンまでは同一人物という設定だった従来のヒーロー型ボンドに終止符を打ち、リアルな人間としてのボンドを再構築したかったのだ。そこにはクレイグのような確かな演技力と未知数の魅力を持ったアクターがどうしても必要だったのだろう。その期待に見事に応えたクレイグはトレーニングによって体型も変え、シャープなアクションもこなすアクターに成長した。
これによって『007』シリーズは新たなファン層も獲得。半世紀を超える長寿シリーズであるにも関わらず世界的ヒット規模も拡大し、『スカイフォール』では全世界興行収入が11 億ドルにも上る新記録に。これはクレイグ・ボンドの大成功を意味し、彼の5度目となるボンド役を世界中が待ち望む理由でもある。