6カ月にわたる撮影は大変だったけれど、役者としてのやりがいはとても大きかった(ティモシー・シャラメ)
ティモシー・シャラメ プロフィール
1995年12月27日米・ニューヨーク生まれ。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた『君の名前で僕を呼んで』(2017)でブレイク。次回作はウェス・アンダーソン監督と組んだ『フレンチ・ディスパッチ』(2022年日本公開)。
この映画を手掛ける最初の監督だと思い込むことで、どうにか重圧をしのいだんだ(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 プロフィール
1967年10月3日カナダ・ケベック州生まれ。アカデミー賞監督賞にノミネートされた『メッセージ』(2016)に続いて『ブレードランナー 2049』(2017)を手がけ、SF映画の名匠として確固たる地位を確立。本作では脚本・製作も兼任。
── フランク・ハーバートが創造した壮大なSF叙事詩を映画化する上で、もっとも大変だったことは何でしょう。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
ハーバートは架空の文化を一から創り、驚くほどの精密さで語っている。その豊かな世界を出来る限り判りやすい形でスクリーンに移し替えるというのが最大のチャレンジだった。映画を観ながら、あたかも原作小説を読んでいるかのように学んでもらいたいと考えたんだ。誰でもがついて行けるように語りかけたつもりだよ。
ティモシー・シャラメ
僕は最初、原作のことを知らなくて、ドゥニが夢中になっている原作小説はどんなんだろうと思い、周囲の人たちに訊いてみたんだ。驚いたよ。「大好き」という人だけでなく、人生の支えになっているという人までいたからだ。それから原作を読んで納得したんだ。確かに、この原作は凄いって。
── ティモシーはドゥニのファンだったと聞いていますが、どうなんでしょう?
ティモシー・シャラメ
そう、大好きなんだ。もちろん、ドゥニの作品は全部観ていて、いつか彼の作品に出演したいと思い続けていた。原作について調べたのも、ネットでドゥニが愛読書だという情報を読んだから。別にオファーもされてないのにね!(笑)
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
私のほうこそティモシーの大ファンなんだよ。今回、もし(出演を)断られたら、プロジェクト自体がつぶれる恐れだってあったくらいだから。彼がOKを出してくれて本当によかった。
ティモシー・シャラメ
『デューン』について初めて話したときのこと憶えてる?
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
確か3年くらい前のカンヌ映画祭だったよね?
ティモシー・シャラメ
そう。実はそのまえにも会っているんだけど、そのときは『デューン』のこと、話してないから。で、ドゥニは、ホテルの部屋で片手に原作小説、片手に脚本を握り、とうとうとこのプロジェクトについて喋っていた。もうアイデアが次から次へと湧き出る感じで、一刻も早く撮影したいと情熱的に語っていたんだ。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
そのときオファーしたんだっけ?
ティモシー・シャラメ
オファーはそのあとだったけど、僕はすっかりやるつもりで、もし正式オファーがなかったらどうしようかって、あとから怯えちゃったんだ(笑)。これでやっと、ドゥニの作品に出られるって大コーフンしちゃったから。というのも、役者としての夢のひとつがドゥニの作品に出ることだったので、以前もオーディション、受けていたんだよ。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
そうなんだ。ティモシーは『プリズナーズ』のとき、ヒュー(・ジャックマン)が演じた役のオーディションを受けていたんだよ! 私は「申し訳ないが、今回はちょっと無理だね」って(笑)。だってお父さん役なんだから。でも、今回はティモシー以外は考えてなかった。私たちにとってポール・アトレイデス=ティモシー・シャラメ。彼が出演してくれて、本当に感謝している。
── ティモシー、こういう大作は初めてですね。撮影はいかがでしたか?
ティモシー・シャラメ
これまでの作品の撮影は長くて3カ月だったので、6カ月に及んだ本作はかなり大変だった。まるでマラソンしている感じだよ。僕が演じるポールはさまざまな宿命を背負ったキャラクターだ。その緊張感を6カ月もの間キープし続けなくてはいけない。そういうバランスを取りながらの撮影は大変だったが、役者としてのやりがいはとても大きかったと思う。でも、僕の苦労なんて大したことない。ドゥニに比べればね!
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
映画の冒頭近くにポールが受けるテストにゴム・ジャッバール(その者の意識を試すために用いる毒針)が登場するが、まさに撮影中はずーっと、その毒針を突きつけられている感じだった(笑)。が、それでも一旦、撮影が始まると、恐怖を感じている時間や余裕がまったくなくなるんだ。プレッシャーはあるが、それは自分の内なる声に対してであって、外部からのプレッシャーはシャットアウト出来る。
ティモシー・シャラメ
そういうところがドゥニの凄さだよ。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
いやいや、そうしなきゃ、カメラを回すことすらできないからだよ。自分がこの映画を手掛ける最初の監督だと思い込むことで、どうにかしのいだんだ。そうじゃないと身動きできなくなってしまいそうだった。
── 本作もパンデミックの影響を受けて公開がずっと延びていました。やっとみなさんに披露出来ることになった今、どう感じていますか。
ティモシー・シャラメ
とても嬉しくてワクワクしている。ちょっと前に僕も完成版を観て、奇妙なフィーリングに陥ってしまった。いかに壮大なジャーニーだったか、それを次々と思い出してしまったからだ。でも、どうにかフィニッシュラインに行き着いたから、いまはみんなの反応が楽しみで仕方ない。これをIMAXの巨大なスクリーンで観ると、本当に素晴らしい〝体験〞になると思っているんだ。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
私は『デューン』を映画化出来て、映画の神様に深く感謝している。多分、この作品は僕にとってとてもパーソナルな作品なんだと思うんだ。というのも原作を読んだティーンの頃から、ずーっと映画化したいと思い続けた作品だからね。そして、その想いをちゃんと映画に反映出来たと確信している。早く観て貰いたいよ。
子どものころから日本の武士道に魅了されていたんだ(ジェイソン・モモア)
ジェイソン・モモア プロフィール
1979年8月1日米・ハワイ州生まれ。『アクアマン』のタイトルロール役でおなじみで、2022年には続編も公開予定。『ゲーム・オブ・スローンズ』のカール・ドロゴ役でも有名。Netflix映画『スイートガール』が今夏より配信中。
「ダンカンのキャラクターとオレは共通点が多すぎて自分でも驚いたほどだ。冒険好きで社交的。酒場で盛り上がって土産話に花を咲かせるタイプ。まさにオレだよ(笑)。
そんななか一番惹かれたのはポール(ティモシー・シャラメ)との関係だった。オレと息子のそれを思い出してしまったからだ。若い頃のオレの周りにも大人の男性がたくさんいて、彼らがまだ子どもだったオレを正しい方向に導いてくれたし、いろんな話をしてくれた。これはオレが息子に対してもやっていることで、ポールにとってのダンカンもそういう大人の存在でいて欲しいと思って演じていたからだ。
それに、ダンカンのいいところは、口先だけじゃなく実行も伴うところ。オレもそのつもりなんだけどさ(笑)。
なぜ、そういうタイプが好きかと言えば、おそらく子どものころから日本の文化に夢中だったからだと思っている。子どものころは、日本人と同じようにお辞儀をしていて、母親に呆れられていたくらいだ(笑)。
オレは武士道の「身を挺する」というスピリットが魅力的だと思っていて、それはまさにポールとダンカンの関係性に通じているんだよ。だから、このダンカンの役をドゥニ(・ヴィルヌーヴ)からオファーされたときはとても驚いたんだ。オレの大好きな監督のひとりであるドゥニに声をかけられただけでも最高なのに、オレのことをこんなに判っているなんて!って感じだよ。本当に今回の撮影はすべてが最高だった。出来上がった作品も本当に最高だった」
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