高校の授業で見た音楽映画の名作とは?
音楽映画というと、思い浮かべるのはミュージカル? ノンノン、それはミュージカル映画。音楽映画というのは、音楽を主軸にした映画のこと。たとえば、アレサ・フランクリンの半生を描いた『リスペクト』やジュディ・ガーランドの晩年を描いた『ジュディ 虹の彼方に』(2020)などに代表されるミュージシャンの伝記映画や、プレイリスト化できるほどサントラが優れた『ベイビー・ドライバー』(2017)や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)など。はたまたロックバンドのグルーピーと音楽ジャーナリズムを描いた『あの頃ペニー・レインと』(2000)や、使用楽曲の歌詞が物語を代弁する『ハーツ・ビート・ラウド』(2018)や『はじまりのうた』(2013)などなど。音楽がないと物語が成立しない、もしくは音楽を手掛けた人々を描いた映画のことをいいます。
ちなみにミュージカル映画は、登場人物が歌って踊って物語を進行させるやつね。だから同じ伝記映画でも『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)は音楽映画で、『ロケットマン』(2019)はミュージカルというわけです。この差が微妙なもんで、勘違いさせる紹介サイトが乱立しているのをみて歯がゆい思いをしている映画ファンは多いはず。
ということで、音楽映画について、よしひろが偏愛する作品を3つ。
まず『5つの銅貨』(1959)。戦前に活躍したコルネット奏者、レッド・ニコルズの半生を描いた伝記映画で、アカデミー賞で歌曲賞、作曲賞などにノミネートされました。これ、なにがすごいかって、レジェンド級ミュージシャンがばんばか関わってるんですよ。ルイ・アームストロングが本人役で出てきてトランペット吹いてたり、そもそも主演がダニー・ケイだったり。おまけに、撮影は『ウエスト・サイド物語』(1961)のダニエル・L・ファップで、衣装デザインは『ローマの休日』(1953)のイーディス・ヘッドよ!いや〜、これを高校の授業で見せてくれた音楽の先生に感謝。
2作目はみんな大好きジャック・ブラックの『スクール・オブ・ロック』(2003)。ロックの楽しさをクラシック音楽しか知らない小学生の子供達にたたきこむ破天荒先生の騒動を描く名作よ。この映画で改めてロックの歴史と素晴らしさに酔いしれましたわ。何度観ても、いつ観ても気分のアガる大傑作。
そして3作目は『バーレスク』(2010)。崖っぷち経営のナイトクラブに、歌手を目指して上京した女性がやってきたことから生じたマウンティングの嵐とクラブ立て直し劇を描いた作品ね。これ、舞台設定70年代ですか?ってくらい古臭い話なんだけど(ちなみに思い切り現代劇です)、なんつっても新旧ディーヴァのW主演ってのが強烈で。だって、シェール先生とアギレラですよ! 個性と個性のぶつかり合いで、歌唱シーンはもはや情報大渋滞。シンプル過ぎる物語がちっとも頭に入ってこなくなるほどの珍共演なんです。
しかも、楽曲はどれもオリジナル。特にシェール先生が「私の出番増やしなさいよ!」と言ったか言わなかったかはともかく、忖度でしかないだろ、という「You Haven’t Seen the Last of Me」のシーンは、アギレラものけぞるド迫力(ちなみに、その次の歌唱シーンはアギレラの見せ場「Bound to You」で、見えない火花がバチバチしてるのを感じます)。いやー、ミュージカルじゃないのに、小躍りしたくなる働く女性映画でもありますわ。
ぜひともこの3作、チェックしてくださいませ。さて映画音楽も、ということですが、映画音楽で偏愛するのはミュージカルなのよね……。ちなみに「すべての山に登れ」(『サウンド・オブ・ミュージック』)、「美女と野獣」、「虹の彼方に」(『オズの魔法使』)なんですが。それはミュージカル映画を紹介する機会に、また〜。
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