21年前の冬に日本に上陸し、賛否両論を巻き起こした衝撃作『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)が4Kデジタルリマスター版として劇場に帰ってきます。2022年6月に国内上映権が終了するため、泣いても笑っても今回が最後の劇場上映。ただし人生を変えてしまう(かもしれない)ほどの影響力を持つ本作、くれぐれも鑑賞にはご注意を。(文・大森さわこ/デジタル編集・スクリーン編集部)

『ダンサー・ イン・ザ・ダーク』とは?

〝究極の悲劇〞をミュージカル形式で描き、それまでのミュージカルの概念を完全にひっくり返したのが、ラース・フォン・トリアー監督の異色ミュージカル『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。2000年のカンヌ国際映画祭ではパルムドール賞と最優秀主演女優賞(ビョーク)を受賞。日本でもその重くて暗い展開をめぐって賛否両論が巻き起こり、最終的には興収24億円を超える大ヒットとなった。そんな世紀の問題作の日本最後のロードショー公開が行われる。

映画の舞台は60年代のアメリカで、主人公はチェコ移民のシングルマザー、セルマ。工場で働きながら、息子と暮らす彼女は遺伝のせいで失明寸前。同じく先天性の遺伝を継ぐ息子は手術を受ければ、永遠の視力を獲得できる。そこで手術費を貯金しているが、ある時、その大切なお金が消えてしまう。現実のセルマの暮らしは辛いが、ミュージカル好きの彼女は夢の中で音楽の流れに身を任せていると幸せな気分に浸れる。

彼女の願望を映像化したミュージカル部分と過酷な現実生活が交互に映し出されることで、むしろ音楽の素晴らしさが浮かび上がる。『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)、『キャバレー』(1972)等、過去のミュージカルの名作も引用されている。

主演のビョークはアイスランド出身の天才的な歌姫で、オリジナルの楽曲も担当。爆発的な歌声とパフォーマンスはまさに鳥肌もの。トリアー監督の妥協なき演出と天才ミュージシャンとの出会いによって本物の力を放つ傑作となっている。

DITD(ダンサー・イン・ザ・ダーク)が伝説と呼ばれる4つの理由

その1:重いストーリーvs ミュージカル

画像: その1:重いストーリーvs ミュージカル

ハリウッドのMGMミュージカルで分かるように“明るくてハッピーな物語”がミュージカル映画のお約束事。ところが、ここでは重くて暗いストーリーが描かれる。普通のミュージカルとは真逆の展開の異色作だ。

その2:歌姫ビョークの圧倒的な音楽

画像: その2:歌姫ビョークの圧倒的な音楽

映画の軸になるのはビョークの音楽。アイスランドの歌姫として知られ、聴く人を圧倒するパワフルな声の持ち主。そんな彼女の音楽が堪能できる。サントラではレディオヘッドのトム・ヨークとのデュエットも披露。

その3:舞台出身&高い歌唱力を誇る俳優が競演

画像: その3:舞台出身&高い歌唱力を誇る俳優が競演

『シェルブールの雨傘』(1964)の大スター、カトリーヌ・ドヌーヴ、『キャバレー』(1972)のオスカー俳優、ジョエル・グレイに加え、『グリーンマイル』(1999)のデヴィッド・モース、『ファーゴ』(1996)のピーター・ストーメア等、共演者たちも多彩。

その4:パルムドール受賞! トリアーの演出力

画像: その4:パルムドール受賞! トリアーの演出力

デンマーク出身の鬼才監督ラース・フォン・トリアーはこの作品で2000年のカンヌ国際映画祭パルムドール賞受賞。ささやかな物語でも、スケールの大きな映像で描ける才人。ロックにも造詣が深く、音楽&映像の見事な融合を実現した。

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