4K デジタルリマスター版先行上映会 参加レポート
ビョークの歌声を全身に浴びてきました!
日本上映権が来年6月で切れるため、4Kデジタルリマスター版が本邦最終上映となる。ロードショーは実に21年ぶり。先行上映会が2021年10月27日夜、新宿ピカデリーで行われた。
まずは「オーヴァーチャー」が流れ、いよいよ本編が始まる。最初は主人公セルマがプレス工場で働く場面が映し出され、やがて頭の中の幻想としてミュージカル場面が登場する。ビョークと大女優、カトリーヌ・ドヌーヴとのコラボ「クヴァルダ」に気分が高揚する。主人公と彼女に思いを寄せる男性(ピーター・ストーメア)が線路で歌う「アイヴ・シーン・イット・オール」はアカデミー主題歌賞候補にもなった名曲で、その切なさに胸がしめつけられる。
とにかく、映画館の大画面がすごく合う作品で4Kになることで映像や音のクオリティもアップ。工場や森の中など日常の延長ともいえる場所で物語が展開するが、映像に独特の奥行きとスケールがある。ヨーロッパ屈指の才人監督のひとり、ラース・フォン・トリアーの骨太の演出に圧倒される。
そして、ひとたび歌い始めると、大画面を縦横無尽にかけめぐるビョークのすごさ。不幸な境遇に置かれつつも息子を愛し、未来を信じるセルマを(演じるのではなく)生き抜いている。大音響の迫力もあり、彼女が歌うたびに涙が止まらなくなる。場内でも終盤では会場中からすすり泣きが聞こえた。
宣伝担当者の話では当日のアンケートでは7割以上の方が「感動した」という項目に〇をつけていたという。見るのは2回目以上という熱心なファンも多く、「音楽が素晴らしい」「見て勇気をもらった」との感想もあったそうだ。
コロナ後、厳しい状況や変化と向き合う場面が増えたが、そんな時代に見直すことでセルマ=ビョークのひたむきな強さが改めて観客に響く作品ではないだろうか。彼女を支える周囲の人々の温かさにも心を動かされる(筆者はかつてこの映画をその年のベストワンにしたが、今年公開でもベストワンにしたかもしれない)。唯一無二のセルマの世界をぜひ映画館で!
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
2021年12月10日(金)より新宿ピカデリー、12月24日(金)よりBunkamuraル・シネマにて《限定上映》。ほか全国順次公開。
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