基本設定を再度確認しよう!
『マトリックス レザレクションズ』の物語は、『マトリックス』三部作に直結している。三部作の出来事の後、世界がどうなったのかが描かれていくので、三部作の【基本設定】を確認しておこう。
まず、三部作で描かれたのは、人類が人工知能との戦いに負けた後の世界。人類は、睡眠装置ポッドに接続されて人工知能に生体電気を提供しているが、自分ではそれに気づかず、人工知能が作った仮想現実世界=〝マトリックス〞で暮らしている夢を見て、それを現実だと思っている。しかし、一部の人間はポッドから逃れて〝現実〞で暮らしており、装置を使って〝マトリックス〞に侵入し、他の人間たちを真実に目覚めさせる活動をしている。また、人間の間には、〝救世主が現れて人類を救う〞という言い伝えがある。
さらに、三部作では以下の事実も判明。『レザレクションズ』のストーリーもこれらの事実を踏まえている。
- マトリックスでは、コンピュータ・プログラムが人間の姿をして行動している。オラクルのように、同じプログラムが別の姿で現れることもある。
- マトリックスの基本は、システムのバランスを保とうとするプログラム〝アーキテクト(建築家)〞と、バランスを崩そうとするプログラム〝オラクル(預言者)〞によって成り立っている。
- アーキテクトの発言によれば、マトリックスでの救世主の役目は「システムの基本プログラムに新たな初期プログラムを書き込むこと」。ネオは6人目の救世主で、救世主はこれまで5人いた。
- ネオも、変化した後のエージェント・スミスも、マトリックスが生み出したアノマリー=例外的な事象。
マトリックスも現実も〝変化〞〝進化〞している
『レザレクションズ』は三部作の後の世界なので、〝マトリックス(仮想現実世界)〞も〝現実〞も進化や変化を遂げている。まず、本作では、三部作にも登場した白い仮想空間の名称が明かされる。さらに新たなアイテムの数々、仮想現実中の独立した空間〝モータル〞、アナリスト(分析者)が自在に操ることができる人間たち〝ボット〞や、その集団〝スウォーム〞などが出現。また、三部作のプログラムも登場するが、同じ姿ではなく、改良されたり劣化したりしている。
大きな変化は、三部作で起きた出来事はみな、ネオが作った「コンピュータ・ゲーム」になっていること。このゲームが大ヒットして続編企画が進行中という設定が、映画の続編が製作された〝映画の外の現実世界〞を反映していたり、『マトリックス』映画自身が映画『マトリックス』について語るという、メタフィクション的な要素が加わっているのも『レザレクションズ』の新たな魅力だ。
そして、〝現実〞にも大きな変化がある。ポッドから解放された人間たちが住む地下都市ザイオンは名称が変わり、今はアイオ。将軍は、前シリーズに登場したナイオビに。人工の空があり、果実も育ち、機械とも共存している。
再登場するキャラクターを振り返り
三部作から再登場する人物は、本編ではあまり紹介されないので振り返っておこう。
ネオとトリニティー
強い愛で結ばれ、第1作ではトリニティーがネオを死から甦らせ、第2作ではネオがトリニティーを復活させたほど。第3作でトリニティーは死亡し、ネオはエージェント・スミスとの死闘の後に倒れたが……
モーフィアス
ネオを救世主だと信じ、指導者的役目を果たす。三部作ではローレンス・フィッシュバーン、『レザレクションズ』ではヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世が演じる。
エージェント・スミス
エージェントは、シークレット・サービスの姿をしたマトリックスの監視プログラム。スミスはそのリーダー的存在だったが、ネオが救世主として覚醒するのと並行して、他のエージェントとは異なる例外的な性質を備えていく。第3作のネオとの対決で消滅したかに見えた。三部作ではヒューゴ・ウィーヴィング、『レザレクションズ』ではジョナサン・グロフが扮する。
ナイオビ
第2作、第3作に登場したモーフィアスの元恋人で、ホバークラフトのロゴス号の船長。ホバークラフト操縦の名手。今回は将軍に。
メロビンジアン
マトリックスの最古のプログラムの一つ。第2作、第3作では、豪華なレストランで食事し、美しい妻と多数の部下を従えていた。罵倒するときはフランス語。
サティー
第3作でネオがマトリックスと現実との間に捕われていた時に出会った、インド人の少女の姿をしたプログラム。彼女の父親は、オラクルが娘の面倒を見てくれると語っていた。『レザレクションズ』では彼女がオラクルの役目を果たしているようにも見える。
アナリスト(分析者)
『レザレクションズ』の初登場キャラだが、その行動を見ると第2、3作の〝アーキテクト(建築家)〞と同じような役割か。
変化/進化する「アイテム」「引用」を探そう
三部作でおなじみのアイテムが、別の形で登場する。第1作ではネオがモニターに表示された「白ウサギを追え」の言葉に従い、ウサギのタトゥーをした女性の誘いに乗ってクラブに行くが『レザレクションズ』では、新キャラ、バッグスの肩にウサギのタトゥーが。また第1作で黒猫が横切る光景が反復され、デジャヴ(前にも同じものを見た気がする感覚)はマトリックスのバグだと説明されるが、今回はアナリストがデジャヴという名前の黒猫を飼っている。
第3作でネオが交渉した、マシンの統合知性体デウス・エクス・マキナは、今回はネオが働くゲーム会社の社名デウス・マキナになって登場。第1作のネオは溶ける鏡に覆われて真実を発見するが、今回は溶ける鏡を通り抜ける。そして大ネタなのが、今やキアヌ主演の『ジョン・ウィック』シリーズを監督するチャド・スタエルスキ。三部作ではキアヌのスタントを演じたが、今回は本名と同じチャドという役名で、マトリックス世界でのトリニティーの夫役で出演。これもメタ・フィクションっぽい。
そして、引用が楽しいのは今回も同じ。新キャラのバッグスは、アニメのウサギ、バッグス・バニーと同じだというセリフがあるが、パソコン用語のバグ(ソフトウェアの不具合)に似ているのは偶然ではないだろう。彼女が船長のホバークラフトの名、ムネモシュネは、ギリシャ神話の記憶をつかさどる女神の名前。他の引用も探してみよう。
マトリックス レザレクションズ
公開中
監督:ラナ・ウォシャウスキー
出演:キアヌ・リーヴス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット・スミス、ニール・パトリック・ハリス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世
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