最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』がいよいよ公開! ウェスの第10作目にあたる本作は、いつにも増して、芸術的な映像美や愛情溢れるこだわりでいっぱい。可愛くて独特なウェス・アンダーソンの世界を紹介します!(文・渡辺祥子/デジタル編集・スクリーン編集部)

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これが10作目の監督作。細部に凝ったドラマと映像の表現で見る者を誘惑、偏愛ファンを作ってきたウェス・アンダーソン映画の10作目、お洒落で凝りに凝って芸が細かく、しかも出演者は個性派の超大物ばかり!

フランスの(架空の)街アンニュイ=シュール=ブラゼに編集部を構えるアメリカの新聞「カンザス・イヴニング・サン」の別冊・雑誌が「フレンチ・ディスパッチ」。政治問題からアート、ファッション、美食まで扱ってアメリカの雑誌で言えばニューヨーカー誌のように洗練され、知的で変化にとんだ内容を誇って執筆者は超一流。その創刊者で編集長のアーサー・ハウイッツァー・Jr(ビル・マーレイ)が仕事中に急死。彼の遺言で「フレンチ・ディスパッチ」の廃刊が決定。その前に編集長への追悼の思いをこめた最終号が作られ、レポートが1つと3つのストーリーの掲載が決まった。

ということで米テキサス州出身のウェスがはじめて訪れて以来、大好きになったフランスへの熱い思いをこめて創作したはずの架空の町、アンニュイ=シュール=ブラゼをエルブサン・サゼラック(オーウェン・ウィルソン)が自転車に乗って案内して始まる。

それをオープニングにして続くのが美術界を知り尽くしたJ.K.L.ベレンセン(ティルダ・スウィントン)による〝美術と絵画の肖像〞編の「ストーリーその1」。「ストーリーその2」はジャーナリスト魂のかたまり、ルシンダ・クレメンツ(フランシス・マクドーマンド)による〝学生運動の日記〞編。「ストーリーその3」は美食を愛する孤独な記者ローバック・ライト(ジェフリー・ライト)による〝警察署長の食事室〞編。

それら3つのストーリーをジャン・ルノワール監督が核になったフランス映画のエッセンスを他国者の覗き見のようにアーティストとして表現した、とウェスが言えば、フランス人の音楽担当アレクサンドル・デスプラは、監督の頭を通したイメージだから少し歪んだフランスだが、でもこれはたしかにフランスなのだそうだ。

架空の町アンニュイ=シュール=ブラゼとしてロケの本拠地になったのはヌーヴェル=アキテーヌ地区。ウェスは大のセット好き。130ほどのセットを組み、カット毎にセットを変えた、とウェスの『ダージリン急行』(2007)以来、『犬ヶ島』(2018)まで美術を担当してきたアダム・ストックハウゼンは言う。

さまざまなことに知的好奇心を抱き、どこまでも追求する監督と組むスタッフは大変だが、その先には幸福なお楽しみが待っていることをこの映画は証明している。

本作に込められたウェスの偏愛

1.フランスへの憧れ

画像: 1.フランスへの憧れ

本作はフランスの映画、文学、文化を愛するウェスのフランスへのラブレター。米テキサス州に生まれ、高校時代から映画の自主製作をしていた彼は草創期からヌーヴェルヴァーグ時代に至るフランス映画に夢中だった。

2.極度の雑誌マニア

ヒューストンの高校1年だったときウェスが出会ったのが表紙がイラストの『ニューヨーカー』だった。図書館に置かれていて、いつも読むようになり、繰り返し出てきた記者たちの名前を覚え、すっかりハマっていた。

3.デル・トロをイジリたい!

画像: 3.デル・トロをイジリたい!

ウェスが長年一緒に仕事をしたいと願っていたのがベニチオ・デル・トロ。彼が演じるのは殺人罪で50年の刑に服役する画家。そのイメージを作るためにウェスはルノワール監督の『素晴らしき放浪者』を勧めた。

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