【専門家解説】『ドライブ・マイ・カー』が海外との相性バツグンな理由
文・よしひろまさみち
理由1:原作者・村上春樹の絶大なる海外人気
村上春樹
デビュー作『風の歌を聴け』が群像新人文学賞を受賞。『ノルウェイの森』や『IQ84』などの長編はベストセラーはもちろん、社会現象に。
村上春樹がノーベル文学賞に一番近い作家と言われ続けて、はやン年。今や世界の大作家だ。なんなら芥川賞も直木賞も受賞歴がない彼が、40年以上第一線で、しかも国際的評価が高い日本人作家でいるのか。それは、インテリが書くインテリ向けの文章ではなく、高度に文学的な物語を平易な文章で読ませるところにある。しかも、ほとんどが都会に生きる一般の人が主人公。それはどんな国の都市部暮らしの人にも刺さるのだ。
理由2:西島秀俊の魅力が世界にバレてしまった!
西島秀俊
1971年東京都生まれ。1994年『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。名匠アミール・ナデリ監督の2011年『CUT』で国際的評価を得たのをきっかけに、活動の幅は拡大。個性の強い作品で定評を得る。
『ドライブ・マイ・カー』での家福役は、寡黙ながら知的で感情たっぷりの芝居と米国各メディアで大絶賛。「ニューヨーク・タイムズ』誌が選ぶ“GreatPerformers / The Best Actors of2021” の一人に選ばれ、バラク・オバマ氏などのポートレートを手掛けたルーヴェン・アファナドール撮り下ろしがこれまた……。ついに世界にバレちまいましたよ……西島秀俊がグローバルにかっこいいことが!
理由3:三大国際映画祭を制した濱口竜介の才能
濱口竜介
東日本大震災の被害者へのインタビューから成る『なみのおと』、『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』を共同監督。以後、各国映画祭で監督作、脚本担当作が絶賛を浴びる。
『ドライブ・マイ・カー』ばかりがフィーチャーされているものの、じつは最初からすごいぞ、濱口竜介! と声を大にしていいたい。そもそも彼が映画作りに興味を抱いたのは、東京大学在学時。映画研究会に入会してから、知識と経験を一気に積み上げていく。その意欲は、東大文学部を卒業の後に、東京藝術大学大学院映像研究科に進学したことを考えても明らか。しかも、大学院の修了作で監督した『PASSION』は、いきなり東京フィルメックスのコンペ入りを果たしている。
彼の才能がブレイクしたのは、300分超の超大作『ハッピーアワー』がロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した2016年。そこからは破竹の勢いで、初の商業映画『寝ても覚めても』がカンヌ国際映画祭コンペ部門正式出品、脚本家として参加した『スパイの妻〈劇場版〉』がヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞受賞などなど、国際的評価を一気に高めていく。
彼のすごみは、巧みなストーリーテリングとそれを自ら映像で表現できるという強みだ。完全分業化しつつあった日本映画界において、この器用さは唯一無二。『ドライブ〜』は、村上御大の原作のみならず、短編小説を3時間弱の大長編に仕上げて、原作を超える解釈の深さと感動を描ききったことにある。
濱口竜介監督のほか受賞作品をチェック!
ベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員グランプリ)『偶然と想像』
(監督・脚本:濱口竜介)
元カレと親友の間で揺れる心理を描く「魔法(よりもっと不確か)』。50代にして芥川賞を受賞した大学教授と既婚の女子院生の心の交流「扉は開けたままで』。20年ぶりの偶然の再会に喜ぶ「もう一度』が収録された短編集。
ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞『スパイの妻』
(監督:黒沢清、脚本:濱口竜介)
2020年6月にNHK BS8Kで放送された同名ドラマをスクリーンサイズや色調を新たにし劇場公開。1940年の満州。恐ろしい国家機密を偶然知ってしまった優作(高橋一生)は、正義のためにその顛末を世に知らしめようとする。
『ドライブ・マイ・カー インターナショナル版』Blu-rayコレクターズ・エディション(2枚組)
2022年2月18日より発売開始!
7,150円(税込)
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:TCエンタテインメント
©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会