武士道精神や愛国心、正義をテーマに武道に長けた女子大生が日本を滅亡の危機から救おうと戦いに挑む姿が描かれる『愛国女子ー紅武士道』(公開中)で監督を務める赤羽博。主人公と同じく、剣道経験を持つ赤羽監督が武士道精神、大和魂を語る!(文・タナカシノブ/写真・奥田耕平(THE96)/デジタル編集・スクリーン編集部)

『愛国女子─紅武士道』あらすじ

画像: 武士道精神、大和魂を語る! 『愛国女子─紅武士道』赤羽博監督&西岡德馬インタビュー

ある日、街で芸能事務所にスカウトされた大学生の大和静(千眼美子)は案内された事務所で武器を手にした4人の男たちに襲われる。しかし、幼い頃から大和一心館10代目道場主の父に鍛えられ、剣道4段、全国大会優勝の腕前を持つ彼女は瞬く間に彼らを倒してしまう。身構える静の前に現れた芸能事務所社長の高山悟志(田中宏明)は、自身が国を守るための活動をしていることを告げる。高山との出会いを機に、静は日本滅亡の危機をめぐる激しい戦いに身を投じていく──。

── 精神性やメッセージを伝えるために、キャストの方たちにはどのようなディレクションをしたのでしょうか?

映画では剣の道に絞って、テーマやメッセージを描いています。剣を持って立ち回ること、殺陣の表現は役者であれば一種の舞踊と同じで練習をすればある程度の形にはなります。ただ、自分も剣道をやっていたので分かるのですが、防具をつけて竹刀を持った瞬間、竹刀をひと振り、素振りした瞬間に本当にやっているかどうか一目瞭然なんです。2年くらいかけてきっちり素振りを続けていかないことには、本当の剣道の形にはなりません。

しかも、今回千眼さんが演じる大和静は、剣道4段・全国大会優勝の腕前を持つという設定なので、かなりがんばって練習していたようです。剣道5段の先生にみっちりついてもらって、リハーサルの段階である程度形になっていたことに驚いたと同時に、改めてここに精神性をつけることの難しさを実感しました。

── なかなかハードな課題ですね。

ちょうどリハーサルのときに製作総指揮の大川隆法総裁がいらっしゃって、日本刀を持った相手と向かい合ったときの心構えについてご教授してくださいました。竹刀で相手を倒すのではなく、日本刀の場合は命をかけてそこに立っているのだから、心構えは違ってきます。

ただ、手にするものが日本刀であっても竹刀であっても、それを構えて向かい合えば、気迫みたいなものが伝わるものなんです。だからこそ、精神性を理解したうえで剣を振り回してもらうことが重要でした。ご教授いただいた後のリハーサルでは、役者の動き、佇まいに変化があったので、よい機会だったと感謝しています。

── 静の父で、大和一心館の10代目道場主役の西岡德馬さんは、またさらに上の精神性を表現するという役どころです。

西岡さんには、今の日本に憂いを持っているという点で“自分にぴったりの役”だとおっしゃっていただきました。剣の道を極める役どころで、映画の中でも“斬った先のものを見ろ”とか“今、お前は何を斬ったんだ”とか禅問答のようなことを口にします。剣の心を本人がわかっていなければ、相手にも伝わらない。剣を持った人たちが、剣と相手とどういう気持ちで向き合わなければいけないかを、切に願いながら問いかけていくキャラクターです。

何気ない日常シーンからも大切なことに気づける映画

── 赤羽監督自身も剣道経験者ということで、何か感じることや響くことなどはありましたか?

高校から始めて大学で剣道部に入って膝を痛めて辞めてしまいましたが、3年ほどやっていました。経験者と呼ぶには年数的には短いかもしれませんが、割と強くて。ちょっと自慢になりますが(笑)、高校3年生のときにインターハイ出場のための選出試合で準決勝までいきました。準々決勝の相手が有名な強豪だったのですが、2本続けてとって勝つことができたんです。すごくうれしくてガッツポーズをして笑顔で試合場(コート)をおりてきたら、顧問の先生に道場の裏手に連れていかれて。強豪を倒したことを褒めてくれるとばかり思っていたのですが、開口一番“なんだ、あの態度は”と怒られてしまったんです。そして“今すぐ相手に謝ってこい”とも言われました。顧問の先生はしっかりとした武士道精神を持った方だったんです。次の試合もすぐあるし、大事な準決勝なので“後で謝ればいいや”くらいの気持ちでいたのですが、物の見事に負けました。うまくできているなあなんて思ったりもしました。

── 悔しがるよりも、冷静に試合結果を受け止めているように感じます。

負けた瞬間に頭に浮かんだのは“県代表にならなくて済んだ”ということでした。準々決勝でガッツポーズまでしてよろこんでいたのに、何を言ってるんだと思うかもしれませんが、ちょうど高校3年の夏休みの大会だったので、勝ち抜いて大会に出続けていたら受験勉強もままならないという気持ちがどこかにありました。勝ったらどうしようなんていうバカなことを考えた途端に見事に負けたので、うまくできていると思いました。試合に集中していないし、相手に対しても失礼だし、何より剣道の精神がなってないですよね。

そんなことを思い出し、キャストには自分の苦い経験も話しました。構えたときの目の位置や精神のようなものを伝えるのはなかなか難しいので、十分に伝わったのか不安もありましたが、キャストはよくがんばってくれたと思います。

画像: 何気ない日常シーンからも大切なことに気づける映画

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