最新作『ナイトメア・アリー』絶賛公開中! そこで今回は、配信サービスでいま観れるギレルモ・デル・トロ監督作品をまとめてご紹介します。(文・よしひろまさみち/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『パンズ・ラビリンス』(2006)© 2006 ESTUDIOS PICASSO,TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

愛され監督が『ナイトメア・アリー』を解説!

ギレルモ・デル・トロ監督 プロフィール

1964年、メキシコ・グアダラハラ市出身。同世代の中でも、最もクリエイティブで先見性のあるアーティストとして、その独特なスタイルは世界中から注目を浴びている。『クロノス』で長編デビュー、2006年『パンズ・ラビリンス』でアカデミー賞の美術賞、撮影賞、メイクアップ賞を受賞。2017年に『シェイプ・オブ・ウォーター』が、アカデミー賞作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞を受賞。日本の特撮や漫画にも造詣が深い。

ノワール映画

「若い頃、どうしても撮りたいと思っていた2つのジャンルがありました。ノワールとホラーです。ずっとすごく惹かれていた最後の未体験ジャンル(ホラーとファンタジーは除く)に挑戦できて本当に嬉しかったです。この映画は、ノワール映画ではあるのですが、ノワールの常套手段を使わずに撮りました。大胆にも本作の製作に際して、ノワールというジャンルに関する常套手段は一切使わないと宣言しました。出来合いの映画にはしません、と。よくあるブラインドを使った視覚効果や、定番の独白はありません。中折れ帽をかぶった刑事に雨のそぼ降る裏通りを歩かせたりしません。原作の世界観を描きたかったのです── なまなましく、奇妙で魔法のような。不思議な、神秘的な魅力―そう、“神秘的”です。その路線を追求したいと強く思いました。

私にとって、『ノワール』とは“感覚”なのです。詩的な堕ちてゆく感覚です。悲運の感覚です。『郵便配達は二度ベルを鳴らす』と『愛のセレナーデ』とレイモンド・チャンドラー小説の登場人物が出会ったら、これはもうハッピーエンドはあり得ないですよね。」

グレシャムの小説

「当初から小説の世界観を描こうとしました。しかし、まるで万華鏡のような、非常に特殊なニュアンスがあり、原作をそのまま撮ることはほぼ不可能でした。もし忠実に撮るなら、主観を変えながら、あれもこれもやらなくてはならないので、計6時間のシリーズものになってしまいます。小説を基本にし、既存映画のリメークではなく、新解釈の作品にしたかったのです。

原作に戻りフロイトやユングや形而上的要素を取り戻そうとしました。本に忠実にというより、本を読んだ内容や、本から感じた精神性になるべく忠実であろうとしました」

舞台となる見世物小屋

「映画の時代(映画の年代は1939年)が第一次世界大戦直後という点が重要です。というのは、復員した男たちの多くが薬物中毒にかかっていたからです。中毒者の中には薬物のために生きた動物を喜んで食らう者もいました。この見世物はかなりきわどい興行をしています。この出し物は多くの州で違法でしたが、小規模な一座ではそれでも見せていました。人目をはばかりながら、捕まるまで掛け続けました。クレム・ホートリー(ウィレム・デフォー)が体現したのはこのような見世物です。

とてもいかがわしい世界です。見世物は驚くほど緊密で外部の影響を受けない社会です。ここでは秘密は守られます。逃亡中の犯罪者や過去を捨てたい人たちも多くいます。だからこそ一致団結しているのです。この世の縮図とも言えます。誰も彼もが騙し合っています。ですが同時にお互いを求めあっています。だからお互いを守り合うのです」

カーニバルのセット

「見世物のセットに関して美術のタマラ(・デヴェル)と撮影監督のダンとまず決めたことは、実物を建てようということでした。ブルーバックで見世物を撮った映画を観ましたが、画が死んでいました。私たちのロケーションでは風が吹くため、テントがうねり、はためき、鼓動のようなリズムがありました。それで、「よし、いちかばちか建ててみよう」となりました。風雨にさらされる大きなリスクがありました。ロックダウンの前に建てたので、撮影中断の期間に大いに風雨にさらされました。持ちこたえたものもありますが、吹き飛ばされたものもあります(笑)」

監督のこぼれ話

クリーチャー愛

画像: クリーチャー愛

監督がいつも手にするノートには、脳内イメージをイラスト化したものがたんまり。『シェイプ~』来日時に見せてもらうも、イメージそのまま映画に使われていること判明。

常連さん俳優

画像: 常連さん俳優

ロン・パールマンをはじめ、ギレルモ・デル・トロ監督作には常連俳優が何人も。なかでもオキニはダグ・ジョーンズ。『ミミック』からの常連で、クリーチャーの中身はほぼこの人。

アカデミー賞

デル・トロ監督のアミーゴこと、アルフォンソ・キュアロンとアレハンドロ・G・イニャリトゥに続き、『シェイプ~』でメキシコ人史上3人目の監督賞を受賞。映画に国境なし!

ピノッキオ

画像: Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』12月より独占配信開始

Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』12月より独占配信開始

オスカー獲得後、やりたい企画ができる自由を手にしたデル・トロ監督。次回作はストップモーション・アニメーションでミュージカルにした『ピノッキオ』!

Photos by Getty Images

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