今年の春は、何やらフランス映画の界隈が賑やか。カンヌ国際映画祭で話題をさらった新作から名匠たちの特集上映まで、毎週のように新作&名作と出合えます。前編に引き続き、後編では映画祭常連&新星監督の新作をピックアップ! 春の訪れはフランス映画とともにやって来るようです。

\どの作品も攻めてます!/
映画祭常連&新星監督の新作が目白押し

期待の新星 シルヴィー・オハヨン
『オートクチュール』

画像: 期待の新星 シルヴィー・オハヨン 『オートクチュール』

Pick up!!
現役クチュリエールが衣装監修したドレスやディオール直筆のスケッチ画など、眼福モノアイテムが登場。アトリエのシーンではドキュメンタリー映画『ディオールと私』(2014)にも出演したお針子たちが美技を披露している。

広告業界出身で小説家でもあるシルヴィー・オハヨンの長編2作目は、世界最高峰メゾン、クリスチャン・ディオールのアトリエを舞台とした人間ドラマ。監督の友人がオートクチュールのメゾンで見たお針子の姿が原点になっているという。孤高のお針子役にはフランスが誇る大女優ナタリー・バイ、彼女によって才能を開花させていく少女を『ガガーリン』など話題作への出演が続く新星リナ・クードリが演じる。

ディオールのアトリエ責任者エステル(ナタリー)が引退間近に出会った、移民二世の不良少女ジャド(リナ)。彼女にドレスを縫う才能を見出したエステルは見習いとしてアトリエに招き入れる。反発し合いながらもショーに向けて準備を進める中、エステルが倒れてしまう。

オートクチュール
公開中

フランス/2021/1時間40分/クロックワークス、アルバトロス・フィルム
監督:シルヴィー・オハヨン
出演:ナタリー・バイ、リナ・クードリ、 パスカル・アルビロ、クロード・ペロン、クロチルド・クロ
© 2019 - LES FILMS DU 24 - LES PRODUCTIONS DU RENARD - LES PRODUCTIONS JOUROR

期待の新星 フィリッポ・メネゲッティ
ふたつの部屋、ふたりの暮らし

画像: 期待の新星 フィリッポ・メネゲッティ ふたつの部屋、ふたりの暮らし

Pick up!!
1980年生まれのメネゲッティ監督はデビュー作らしからぬ成熟した演出で、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞の新人監督賞を受賞。リュミエール賞では新人監督賞とバルバラとマルティーヌが揃って最優秀女優賞を受賞した。

アパルトマン最上階の向かい合う部屋に暮らす2人の女性。表向きには仲のいい友人だが、実は長年恋愛関係にあり…。LGBTQ+に関する映画が増える中、本作が長編デビューとなるフィリッポ・メネゲッティが生み出したのは、他に類を見ない個性的な物語。独仏を代表する女優バルバラ・スコヴァとマルティーヌ・シュヴァリエの圧倒的な演技によって、扉を隔てて密かに愛し合う70代のカップルのラブストーリーが次第にスリラーの様相を呈していく。

南仏モンペリエを見渡すアパルトマンで互いの部屋を行き来するニナ(バルバラ)とマドレーヌ(マルティーヌ)。長年愛し合ってきた2人の望みは、アパルトマンを売却し、ローマへ移住すること。しかしマドレーヌはすでに独立した子供たちに真実を伝えられずにいた。

ふたつの部屋、たりの暮らし
2022年4月8日(金)公開

仏=ルクセンブルク=ベルギー/2019/1時間35分/ミモザフィルムズ
監督:フィリッポ・メネゲッティ
出演:バルバラ・スコヴァ、マルティーヌ・シュヴァリエ、レア・ドリュッケール
© PAPRIKA FILMS / TARANTULA / ARTÉMIS PRODUCTIONS – 2019

映画祭常連 ミア・ハンセン=ラブ
『ベルイマン島にて』

画像: 映画祭常連 ミア・ハンセン=ラブ 『ベルイマン島にて』

Pick up!!
主人公カップルは年齢的にも、ミアと元パートナーのオリヴィエ・アサイヤス監督を思わせる設定。ちなみに劇中劇に登場するアンデルシュ・ダニエルセン・リーはアサイヤス作品『パーソナル・ショッパー』(2016)に出演していた。

10代で女優デビューし、初めて手掛けた長編映画『すべてが許される』(2007)、続く『あの夏の子供たち』(2009)が相次いでカンヌ国際映画祭で絶賛されたミア・ハンセン=ラブ。ベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた『未来よ こんにちは』(2016)以来の日本公開作は、巨匠イングマール・ベルイマンが愛したスウェーデンのフォーレ島を舞台に紡がれる、あるカップルの物語。ベルイマン作品ゆかりの品々や風景も合わせて楽しみたい。

公私ともに停滞気味の映画監督カップル、クリス(ヴィッキー・クリープス)とトニー(ティム・ロス)は、敬愛するベルイマンが作品を撮影したフォーレ島で創作活動を兼ねてひと夏を過ごすことに。島の持つ力も手伝って、クリスは自身の初恋を基にした脚本を書き始めるが…

ベルイマン島にて
2022年4月22日(金)公開

仏=ベルギー=独=スウェーデン
2021/1時間53分/キノフィルムズ
監督:ミア・ハンセン=ラブ
出演:ヴィッキー・クリープス、ティム・ロス、ミア・ワシコウスカ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー
© 2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma

映画祭常連 ジャック・オディアール
『パリ13区』

画像: 映画祭常連 ジャック・オディアール 『パリ13区』

Pick up!!
オディアールが感銘を受けたエリック・ロメールの『モード家の一夜』(1969)との関係が深い本作。その影響は会話シーンの多さや、登場人物たちが人生について学び取っているように見える点などに表れている。

カンヌ国際映画祭の常連であり、『ディーパンの闘い』(2015)で念願のパルムドールに輝いたジャック・オディアールが、新作のテーマに選んだのは多文化が共生する“新しいパリ”。アメリカのグラフィック・ノベル作家エイドリアン・トミネの短編を基に、ミレニアル世代の男女4人の人間模様をスタイリッシュなモノクロームの映像で描く。

脚本は『燃ゆる女の肖像』(2019)でカンヌの脚本賞とクィア・パルムをなど多数の映画賞を受賞したセリーヌ・シアマ。フランスを代表する名匠と気鋭の女性監督によるコラボレーションに注目だ。

パリ13区に暮らす、台湾系のエミリー(ルーシー・チャン)と高校教師のカミーユ(マキタ・サンバ)、大学に復学した33歳のノラ(ノエミ・メルラン)とポルノ女優のアンバー(ジェニー・ベス)。2組のカップルが紡ぐ愛の行方とは。

パリ13区
2022年4月22日(金)公開

フランス/2021/1時間45分/ロングライド
監督:ジャック・オディアール
出演:ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン、ジェニー・ベス
©PAGE 114 - France 2 Cinéma ©︎ShannaBesson ©PAGE 114 - France 2 Cinéma

\2022年はすでに3本が日本公開/
リナ・クードリが気になります。

画像: \2022年はすでに3本が日本公開/ リナ・クードリが気になります。

“彗星のごとく”という表現は彼女のためにあるのではないかと思わせるほど、フランス映画界に颯爽と現れたリナ・クードリ。22年の幕開けと同時に、ウェス・アンダーソン監督の『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2021)、気鋭監督のデビュー作『ガガーリン』(公開中)、そして『オートクチュール』と3か月連続で出演作が日本公開された、今のフランス映画界を語る上で欠かせない新進女優だ。

画像: 主人公が思いを寄せる快活な少女ディアナを演じた『ガガーリン』(公開中) ©2020 Haut et Court – France 3 CINÉMA

主人公が思いを寄せる快活な少女ディアナを演じた『ガガーリン』(公開中)

©2020 Haut et Court – France 3 CINÉMA

どこか神秘的な雰囲気をまとうイザベル・アジャーニやソフィア・ブテラと同じく、アルジェリアにルーツを持つリナは、2014年にTVシリーズで俳優デビュー後、内戦下のアルジェリアが舞台の『パピチャ 未来へのランウェイ』(2019)でセザール賞新人俳優賞を受賞。日本でも公開され、知る人ぞ知る存在に。

昨年7月のカンヌ国際映画祭では、ウェス・アンダーソン監督&ティモシー・シャラメと共にフォトコールに登場し、ヘルシーかつチャーミングな笑顔で会場を魅了した。数ある待機作の共演者が、ジャン・デュジャルダン、エヴァ・グリーン、ヴァンサン・カッセル、ロマン・デュリス…とフランスを代表する面々であることからも期待値の高さはお墨付き。「ELLE」「L'OFFICIEL」といった有名雑誌の表紙を飾るなど、ファッションアイコンとしても目が離せない。

画像: カンヌ国際映画祭にウェス・アンダーソン監督&シャラメと登場

カンヌ国際映画祭にウェス・アンダーソン監督&シャラメと登場

ほぼ隔週!?
フランス映画史に輝く名作&傑作の特集上映

4月8日(金)〜 4月28日(木)
ジャック・リヴェット映画祭@ヒューマントラストシネマ渋谷

画像: 4月8日(金)〜 4月28日(木) ジャック・リヴェット映画祭@ヒューマントラストシネマ渋谷

配給:マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム

『美しき諍い女』(1991)などで知られ、ヌーヴェルヴァーグを支えた巨匠ジャック・リヴェットの映画祭がヒューマントラストシネマ渋谷にて開催。傑作ファンタジー『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974)をはじめ、『デュエル』(1976)※ポスター画像などの日本劇場初公開作を含む5タイトルがデジタルリマスター版で上映される。

上映作品
『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974)『デュエル』(1976) 『ノロワ』(1976) 『メリー・ゴー・ラウンド』(1981)『北の橋』(1981)
© 1976 SUNSHINE / INA.Tous droits réservés.
※下線は日本劇場初公開

4月15日(金)~
勝手にしやがれ&気狂いピエロ@ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

画像1: 【2022春】いま観たい! 最新フランス映画まとめガイド(後編)
画像2: 【2022春】いま観たい! 最新フランス映画まとめガイド(後編)

配給:オンリー・ハーツ

昨年9月に逝去したフランスの名優ジャン=ポール・ベルモンドへの哀悼をこめ、ジャン=リュック・ゴダール監督と組んだ『勝手にしやがれ』(1960)と『気狂いピエロ』(1965)が劇場公開。レストアで鮮やかに蘇ったヌーヴェルヴァーグの重要作を劇場で堪能しよう。

上映作品
『勝手にしやがれ』(1960)60周年 4Kレストア決定版(日本初公開)『気狂いピエロ』(1965)50周年 2Kレストア版

©STUDIO CANAL

\4月以降もまだまだ続きます!/

4 月29日(金)〜 5月12日(木)
シャンタル・アケルマン監督特集

画像: 『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル 1080、コメルス河畔通り23番地 』 © Chantal Akerman Foundation

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル 1080、コメルス河畔通り23番地 』

© Chantal Akerman Foundation

上映作品
『ジャンヌ・ディエルマン』(1975)『私、あなた、彼、彼女』(1974)『アンナとの出会い』(1978)『囚われの女』(2000)『オルメイヤーの阿房宮』(2011)

5月13日(金)〜
エリック・ロメール監督【四季の物語】@ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

画像: CONTE D'ETE © 1996 Les Films du Losange
CONTE D'ETE © 1996 Les Films du Losange

配給:マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム

6月24日(金)〜7月14日(木)
生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険
@角川シネマ有楽町ほか全国順次公開予定

画像: 6月24日(金)〜7月14日(木) 生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険 @角川シネマ有楽町ほか全国順次公開予定

ヌーヴェルヴァーグの旗手トリュフォーの生誕90周年を記念し、『大人は判ってくれない』(1959)『二十歳の恋(短編)』(1962)『夜霧の恋人たち』(1968)『家庭』(1970)『逃げ去る恋』(1979)の<アントワーヌ・ドワネルの冒険>シリーズ初の4Kデジタルリマスター版ほか、トリュフォーの代表作を上映予定。

提供・配給:KADOKAWA

※特集タイトル・上映内容等、変更となる場合があります

Photos by Getty Images

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