カバー画像:「スーパーマン&ロイス」2022年4月3日(日)23:00よりNHK総合にて日本初放送
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杉山すぴ豊
アメキャラ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
クラーク・ケントを深堀りする「スーパーマン」のドラマたち
映画ではないですが4月3日からNHK総合で「スーパーマン&ロイス」のTV放送が始まりました! そう、アメリカで1年ほど前から放送開始となった最新のアメコミ・ヒーロー・ドラマであり一番新しいスーパーマン物です。
タイトルからわかる通りスーパーマンは恋人であるロイス・レインと結婚しており、双子の男の子をもうけている。2人はティーンであり、スーパーマンことクラーク・ケントは世界を救うヒーロー業と思春期の男の子たちの父親という究極の二重生活となります。ヒーロー物としての楽しさを味わわせてくれながら実はファミリードラマであり、また双子の成長を描いた青春ドラマでもある。スーパーマンというと映画のイメージが強いですが、実はTVドラマにも名作が多い。50年代の「スーパーマン」、90年代の「新スーパーマン」、そして2000年代に入って「ヤング・スーパーマン」です。3本とも面白いのですが、ちょっと描き方に差があるんですね。
スーパーマンは日頃デイリープラネットの新聞記者クラーク・ケントとして生活しています。50年代版はスーパーマンこそが彼の本質であり、クラークは世間を欺く仮の姿でした。ところが90年代版は原題が“LOIS&CLARK”であったことからもわかるように、スーパーマンこそが仮の姿でありクラークが主役。要はクラークという男が正体を隠してヒーロー活動をする時の世間を欺くアイデンティティがスーパーマンなのです。
この考えは「ヤング・スーパーマン」でもさらに深堀りされ、青年クラークの成長物語です。スーパーマンは無敵の超人です。しかしドラマというのは弱さを持った主人公でないと共感しにくい。この共感部分を担うのがクラーク・ケントとしての描写なんですね。今回の「スーパーマン&ロイス」の主人公は会社ではリストラされ、子どもたちから“ヒーローとして一流だけど父親として失格”と厳しいこと言われる。共感要素の塊のような人物です。
どちらの自分が、本当の自分?『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
さてこのヒーローである時と、そうでない時はどちらが本当の自分か?というのはアメコミ・ヒーロー物ではよく描かれるテーマです。まさにいま公開中の『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の主人公はバットマンとブルース・ウェインとしての住み分けがうまく出来ずにいらだっています。
ロバート・パティンソンも今度のブルース・ウェインはマスクをつけている時とそうでない時の差があまりないキャラとして演じたと言っています。“ヒーローである時は強く、人間であるときは優しく”この線引きがうまく出来ていないから、今回のブルースは迷走状態なのです。そういうブルースがいかに成長するのか?だから『ザ・バットマン』はちょっとビターな青春ドラマでもあるのです。しかし本作、ロバート・パティンソンが一切笑顔を見せず、さらにほとんど雨のシーンという暗さながら3時間一気に見せるのはさすが。この世界観で続きが観たいと思いました。
空でクロエが災難まみれ『シャドウ・イン・クラウド』
若者の成長と言えば『キック・アス』(2010)のヒットガールことクロエ・グレース・モレッツがしっかり大人になって出演する戦争ホラー映画『シャドウ・イン・クラウド』が公開されます。これは第二次世界大戦の時にパイロットたちの間で流行った伝説グレムリンに着想をえたもの。要は大空で飛行機を壊す怪物(小鬼)がいる、と。
今回第二次世界大戦を舞台にクロエ演じる女性空軍パイロットがあるミッションのため、男だらけの爆撃機に乗り込む。そこでセクハラ発言されるわ、敵の飛行機と空中戦になるわ、グレムリンが襲ってくるわ、というお話。
基本B級モンスター映画ですが『プレデター』とか『エイリアン』みたいなところがあって楽しめます。予告とかで姿が見えているのであえて書きますが、コウモリみたいなクリーチャーです。タイミング的にそれこそ『ザ・バットマン』が封切られ、ジャレッド・レトの吸血コウモリ怪人『モービウス』も公開。この春の映画館はコウモリ祭り状態なのです(笑)。