俳優の新たな魅力を発見できる作品多数
インディペンデント系の映画会社で、近年、最も勢いがあるのがA24。設立は12年で、『ムーンライト』(2016)ではアカデミー作品賞も獲得。その後は『ミッドサマー』(2019)や『ミナリ』(2020)などの話題作を作ってきた。俳優たちが意外な魅力を見せる作品も目立ち、『スイス・アーミー・マン』(2016)のダニエル・ラドクリフや『アンカット・ダイヤモンド』(2019)のアダム・サンドラーは大胆な演技を披露。『カモン カモン』ではホアキン・フェニックスの新しい顔に驚かされる。
これまでのホアキンは出世作『グラディエーター』(2000)やオスカー受賞の『ジョーカー』(2019)のように狂気に突き動かされる役が得意だったが、今回は等身大の中年男の役。ラジオ・ジャーナリストの彼は妹の息子を預かるが、独身で子育ての経験がなく、最初、甥にどう接していいのか分からない。
しかも、その子がすごく風変わりで、急に“母のない子”のふりをしたり、街の中で姿をくらましたり、行動が予測不能。子育てに戸惑いながら、甥と取材旅行を続ける役をホアキンがじっくり演じる。一緒にレスリングごっこをする時の彼はまるで大きな子供で、いつになく無邪気で優しい顔を見せる。大人びた表情と子供の不安定さの両方を持つ天才的な子役、ウディ・ノーマンも彼と互角に渡り合う。
監督のマイク・ミルズはA24製作の『20センチュリー・ウーマン』(2016)のように家族の映画が得意で、今回は自身の子育てにヒントを得て脚本を執筆。ロサンゼルス、ニューヨーク、ニューオリンズなど、舞台が変わり、人物たちは自分の内面も見つめ直す。それぞれの心が近づき、新しい希望を見出す姿が美しいモノクロ映像で描かれ、哲学的な奥行きも感じさせる。そして、最後は生きづらい時代に“前に進む勇気(=カモン・カモン)”をもらえる。全米では作品も演技も高い評価を得て、A24作品のクオリティの高さを改めて印象づけた。
登場人物
ジョニー(ホアキン・フェニックス)
ジェシーの叔父のラジオ・ジャーナリスト。独身を通し、甥との新しい関係に悩む。
ジェシー(ウディ・ノーマン)
ジョニーの妹の息子。ちょっと風変わりな性格で、面倒を見るジョニーを翻弄する。
ココもポイント| 兄妹の関係
ジョニーの妹ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)はジェシーの母親。兄妹の母が他界後、2人の関係には溝もあったが、久しぶりに再会して関係を見直す。
カモン カモン
2022年4月22日(金)公開
アメリカ/2021/1時間48分/ハピネットファントム・スタジオ
監督:マイク・ミルズ
出演:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン
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アメリカを飛び回るラジオ・ジャーナリストのジョニーは妹ヴィヴが家をあける間、甥っ子、ジェシーの面倒をみることになった。最初は彼の奇妙な性格に驚き、子育ての大変さを思い知るが、やがて絆が生まれる。