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知的で強いシガニーの個性が新時代を拓いた
フェミニズムなどの影響で、女優に求められる個性が変わっていった70年代後半。ハリウッドで新しいタイプの女優、シガニー・ウィーバーがデビューした。初主演作『エイリアン』(1979)ではタフな宇宙戦士という役柄。エイリアンの襲撃で、船員たちがひとり、またひとりと消えていく中、彼女が演じるリプリーだけは最後まで生き残る。キリリとした知的な顔で、182センチの高身長。タフで頭が切れる戦士役を見事に演じて、〝戦う女〞という新時代のキャラクターを作り上げた。
1986年には続編『エイリアン2』でも再びリプリー役を演じ、初のアカデミー主演女優賞候補となる。リプリーはキャリアにおける最大の当たり役となり、『エイリアン3』(1992)、『エイリアン4』(1997)でも演じている。
戦う女の役だけではなく、大ヒット作『ゴーストバスターズ』(1984)ではコメディもできることを見せた。また、シリアスな『愛は霧のかなたに』(1988)では実在の動物学者、ダイアン・フォッシー役でアカデミー賞の主演女優賞候補、コメディ『ワーキング・ガール』(1988)では同賞の助演女優賞候補となり、主演も助演もこなせる幅の広さも見せている(ゴールデン・グローブ賞では両賞共に受賞)。
『愛は霧のかなたに』は博士役だったが、この役が評価されたせいか、その後ミステリー『コピー・キャット』(1995)、SF大作『アバター』(2009)等でも研究者の役を演じ、その知的な個性が生かされている。
また、『ワーキング・ガール』の役柄のせいか、〝元祖・女上司〞のイメージもあり、最新作『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』では出版エージェントの鬼上司役。最初は入社したての若いヒロインに厳しい態度で接するが、次第に彼女に心を許すようになる。ただ厳しさだけではなく、温かさもあるキャラで、特に過去の恋愛をめぐるエピソードでは秘めていた優しさや弱さも見え、シガニーの人間的な魅力が伝わる。
バリキャリ上司からイヤ~な女上司まで
ワーキング・ガール(1988)
新作『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』では出版エージェントのタフな女上司役で、かつてのヒット作『ワーキング・ガール』を思わせる。ここではニューヨークのやり手の女上司に扮したシガニーは女性の部下に優しく接しながら、実は彼女のアイデアを盗んでビジネスでの成功を狙う。そんな悪役的な役もピタリとハマる。
1949年10月8日、ニューヨーク生まれで、父はテレビ局の重役、母は女優という恵まれた環境で育ち、スタンフォードやイェールなど名門大学で学ぶ。ブロードウェイなど舞台経験も多く、「ハーリーバリー」(1984)ではトニー賞候補となる。
また、映画『アイス・ストーム』(1997)では英国アカデミー賞受賞、テレビ・シリーズ「ポリティカル・アニマルズ」(2012)ではゴールデン・グローブ賞候補となる。私生活では1984年に演出家のジム・シンプソンと結婚。1990年には女の子も誕生した。
シガニー強めキャラ5
『エイリアン』(1979)のリプリー
シガニー=強い女のイメージを決定づけた大ヒット作。エイリアンに襲撃される宇宙船の飛行士役で最後の壮絶な戦いに息をのむ。
『ゴーストバスターズ』(1984)のディナ
ゴーストに体を乗っ取られ、悪の化身となるヒロイン役。上品なクラシック音楽の演奏家から妖艶な悪魔へ。その変貌ぶりがスゴイ。
『愛は霧のかなたに』(1988)のダイアン
アフリカのマウンテンゴリラの保護に力を注いだ実在の博士役。途中から人間よりゴリラへの愛が深くなり、過激な行動へと走る。
『デーヴ』(1993)のエレン
孤独な大統領夫人役で、夫の影武者となった誠実な男に好意を抱く。ちなみにTV「ポリティカル・アニマルズ」は元大統領夫人役。
『スノーホワイト』(1997)の魔女・クラウディア
男爵の後妻役で、最初は義理の娘、白雪姫の良き継母になろうと考えるが、自分の子供が死産となった後は娘を殺そうとする。
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
公開中
90年代NYで作家を目指し出版エージェンシーに入社したヒロインが、夢と現実の狭間で葛藤する姿を描く。ウィーバーが演じるのはカリスマ的なボス。知性と洗練を纏い、厳しさの奥に優しさが覗く佇まいに魅了される。
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