日本が誇る豪華クリエイター陣が紡ぎだすアニメーション映画が登場! 舞台は室町時代。だけど響き渡るのはロックにヒップホップ? 自由な表現で魅せる唯一無二の世界をご覧あれ!(文・横森文/デジタル編集・スクリーン編集部)

自由を求め、純粋に表現を追求していった者たちの物語

画像: 自由を求め、純粋に表現を追求していった者たちの物語

とてつもないアニメーションが現れた!! 監督は2004年に『マインド・ゲーム』で長編監督デビューを果たし、その自由な発想と表現力で“天才”の異名をゲットした湯浅政明。後にTVシリーズの「四畳半神話大系」「ピンポン THEANIMATION」や映画『夜明け告げるルーのうた』(2017)『きみと、波にのれたら』(2019)などでアヌシー国際アニメーション映画祭長編部門グランプリほか様々な賞を獲得し、日本よりむしろ世界に名が知れ渡っている感がある。

そんな湯浅監督を中心に、脚本の野木亜紀子、音楽の大友良英、キャラクター原案には「ピンポン」の松本大洋と才気あふれるメンバーが集結。このメンバーの名を聞いただけでも期待感大、ワクワクモード大全開だというのに、そこに声優にも人気バンド「女王蜂」のアヴちゃんや森山未來、柄本佑、津田健次郎、松重豊とユニークなメンバーをプラス。想像以上にぶっ飛んだ世界観を構築したアニメーションに仕上がっているのだ。

【チェックポイント】歌も演技も驚異的な主演コンビ!

画像: まさに最強バディな森山未來(左)とアヴちゃん(右)

まさに最強バディな森山未來(左)とアヴちゃん(右)

犬王と友魚の声をアテたのは、バンド「女王蜂」のボーカリストであるアヴちゃんと森山未來。なんといっても驚かされるのは犬王役のアヴちゃんのカリスマ性を感じさせる迫力のボーカル。なんでも自分で歌詞なども書き下ろしたとか。もちろん野心を抱く犬王の声の演技もバッチリ。森山三來は真摯に役作りをすることで知られているが、今回は琵琶まで習って友魚の役になりきっていった。だから琵琶を弾きつつの歌声にも臨場感タップリ。

舞台となるのは室町時代。生まれながらに呪いを受け、異形の姿で生まれた少年(後の犬王)とやはり呪いで視力を失った少年・友魚(後に友一、友有と名を変えていく琵琶法師)が、友情を育みながら互いにパフォーマンスを高め合い、唯一無二のスターとなっていくというストーリー。お互いを認め合い、切磋琢磨することで、想像もできないようなスゴい世界観を高めあっていく2人の姿にこちらも胸が高なってしまう。

とんでもないと言ったのは、そんな22が魅せる“表現”。今見る能や狂言の表現に収まらず、MGM時代のミュージカルのような場面もあれば、クラシック・バレエ風のものもあり、マイケル・ジャクソン調もあれば、ラスベガスで展開しているシルク・ド・ソレイユの舞台のような表現にも行き着く。かたや琵琶法師たちがかき鳴らす音楽も、時にロックであり、ヒップホップであり、でもそこに琵琶の音も練りこまれ、相当にアバンギャルドな曲となっており、まさに“自由”を謳歌できる開放感あるものとなっている。

つまりこれは自由を求め、純粋に表現を追求していった者たちの物語。保守的な人間たちがそれを認めないという形を描くことで、どうしたら「互いが互いを認められるか」という戦争の根源ともいうべき問題を提示していくのだ。だからこそ映画全体にも自由な表現が展開する。その豊かな表現力に圧倒される、現代の問題にも通じるすごい作品なのだ。

コラム1:心身震わすフリーダムな音楽

音楽は連続テレビ小説「あまちゃん」などの大友良英。今回は自由な表現を求めて、音楽も能にこだわらずにロックやヒップホップがガンガンにかかりまくる! 湯浅監督はビートルズが出てきた時の熱狂を意識して演出したそうな。

コラム2:野木亜紀子脚本が紡ぐ心地よさ

実在の能楽師・犬王をモデルに紡ぎ上げた古川日出男の小説「平家物語 犬王の巻」を脚色したのは野木亜紀子。TVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」や映画『罪の声』(2020)を手がけた彼女の、心地よい語り口が映画の土台を構築。

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