エミー賞とは? 近年の傾向
米国ドラマ界におけるアカデミー賞、それがエミー賞だ。始まったのはアカデミー賞より20年遅く、1949年のこと。しかしアカデミー賞と同様、小さなセレモニーはスケールアップし続け、TV中継までされるようになるなど、米国のエンターテインメント界を代表するビッグイベントに育っていった。
ユニークなのは映画以上にジャンルやフォーマットが多彩なTV番組が対象とあって、作品賞だけでも「ドラマ部門」「コメディ部門」「リミテッド・シリーズ部門(1シーズンだけで終わるドラマが対象)」「TVムービー部門( TV用に作られた映画が対象)」と、部門が多いこと。しかし、ネットでたくさんの新作ドラマを楽しめるようになったこの時代、これは秀作を探す上で便利だ。
筆者はロサンジェルスでエミー賞の授賞式を取材したことがある。確かにアカデミー賞級の大物スターは少なめながら、視界のどこかに必ず、見たことがあるスターがいるのは壮観だった。彼らが共演陣・スタッフと醸すファミリー感、それはひょっとしたら映画人同士以上に親密なのではないかと思った。
昔から海外ドラマを楽しんできた筆者は近年、世界中のドラマが見られるようになったことに感謝しているが、さすがに数が増え過ぎて(米国では飽和状態に達したという意味で「ピークTV」と表現されることも)、海外ドラマに興味はあるがどれから見たらいいのか分からない人も多いだろう。でも大丈夫。その答はいつもこのエミー賞にある。
近年の傾向だが、TV界の最先端を走ってきたHBO( 米国では動画配信サービスのHBOMaxも展開中)と、動画配信の雄、Netflixという2大ブランドの対決が最大の見もの。しかし今年は、Apple TV+、ディズニープラスなど、他の動画配信の新作も順調にノミネートされ、ますます混戦模様に。だが、かつて米国のドラマが日本で見られるようになるまで何年もかかったことを考えると、多くのノミネート作品がすでに日本でも見られることはとてもありがたい。
今年はロサンジェルスのマイクロソフト・シアターで開かれる授賞式は、日本ではU-NEXTが独占配信をするという。華やかな演出、感動の受賞シーンに期待したい。エミー賞は今後も、多様化(ダイバーシティー)という世相を受け入れながら、新しいドラマを見つけたい、世界の人たちにとって頼もしい味方であり続けるにちがいない。
ココに注目! 第74回エミー賞
今年もHBO対Netflixが激闘を展開
エミー賞の常連だった全米TV界のプレミアムチャンネルHBOだが、ここ数年、ネット配信のNetflixに激しく追い上げられている。第70回と第72回でNetflixは最多のノミネーションを獲得し、ついに第73回、44部門で受賞して頂点に立った。今年、HBOは「メディア王~華麗なる一族~」などでまたも頂点に返り咲けるのか!?
2年連続は最年少記録!
ゼンデイヤが再び主演女優賞にノミネート
ノミネートされたスター陣を見渡すと、「ユーフォリア/EUPHORIA」シーズン1での好演により、第72回でドラマ部門・主演女優賞を史上最年少で受賞したゼンデイヤが、シーズン2で同部門に再びノミネートされたのが要注目。つらい毎日を送る少女ルー役を熱演し、世界中の若者の共感を呼んだゼンデイヤならば2度目の受賞も狙える。
アジアドラマ初!
「イカゲーム」がドラマ部門・作品賞の候補に
韓国の「イカゲーム」がドラマ部門・作品賞など計14個のノミネーションをゲット。従来、非英語作品は別のエミー賞、“国際エミー賞”の対象だったが、多様化を推進する世相を受け、本家のエミー賞でいきなり大量ノミネート。『パラサイト 半地下の家族』(2019)がアカデミー賞で起こしたような一大現象がエミー賞でも起きるか。