少女まんが雑誌『りぼん』で連載された、柊あおいの名作『耳をすませば』が清野菜名と松坂桃李をW主演に迎えて実写化され、10月14日に公開される。“完全オリジナルストーリー”となる10年後の物語に原作の世界観を見事に再現した中学生時代の物語を加えた二重構造で描く。なぜ今、実写映画化したのか、原作やアニメとどこが違うのか。企画を立て、撮影に同行した西麻美プロデューサーにその思いを聞いた。(取材・文/ほりきみき)

チェロケースを背負う松坂桃李のカッコよさ

──聖司は原作では絵を描くのが好きで、アニメではヴァイオリン職人を目指し、本作ではチェロ奏者です。

脚本も最初は原作に倣って画家志望で、松坂(桃李)くんにオファーしたときは画家志望でした。その後、平川監督に入ってもらったところ、「実写なら画家は違うよ、音楽だよ」と言われたのです。絵を描いて楽しいということは、実写映画のダイナミズムとして伝わりにくい。音楽の方がより観客に伝わるのではないかと。しかし、ヴァイオリン職人はジブリさんのオリジナル設定なので同じにするわけにはいきません。「じゃあ、ヴァイオリン奏者にしますか」と話しているときに、「松坂桃李がチェロケースを背負って、イタリアの街並みを歩いていたらカッコいいんじゃないか」という話になり、柊先生に確認をしたところ、無事OKをいただきました。

画像1: チェロケースを背負う松坂桃李のカッコよさ

──ということは、その段階で松坂桃李さんのキャスティングは決まっていたのですね。

一般的には企画書と脚本を渡してオファーしますが、松坂さんは企画書だけで「耳すまをやります。10年後を描きます。聖司くんは松坂桃李さんしかいません。よろしくお願いします」とオファーしました。普通なら断られますが、すぐに受けていただけたので、ほっとしました。

清野さんはそれよりは一拍後くらい。「半分、青い。」「今日から俺は!!」で注目され始めた頃でした。お二人とも紆余曲折のあった稿も読んでいて、松坂くんから「チェロ奏者になったんですね」と言われました(笑)。

画像2: チェロケースを背負う松坂桃李のカッコよさ

──大人の雫と聖司を清野菜名さんと松坂桃李さんにお願いした決め手は?

雫と聖司は圧倒的な透明感と好感度の高さが必要。そう考えるとこの2人しか浮かびませんでした。10年の遠距離恋愛にリアリティを持たせる説得力がこの2人にはあると思ったのです。

とはいえ、松坂桃李さんは『娼年』辺りから聖司とはまったく違うタイプの役をやっています。それでも聖司に戻ってこられるのは、彼の内面から来るまっすぐさ、松坂桃李たる所以ですね。もちろん、「10年も遠距離恋愛が続くわけないだろう」という人はいるでしょう。でも清野さんと松坂さんでなかったら、そう思う人がもっと多くなっていたと個人的には思います。

──左利きの松坂さんが楽譜に書き込みをしたり、手紙を書いたり、食事のときは右手を使っていました。

クランクイン前に利き腕をどちらにするかという話がありました。以前、ご一緒した映画『居眠り磐音』に殺陣や鰻をさばく場面があり、「あの時代なら左利きは矯正させられていただろう」ということで右利きになってもらったのです。ご本人も含めて、今回はどうするかという話をし、「聖司くん像に近づけるには右利きの方がいい」ということになり、右利きとして演じてもらいました。結構、苦労されたと思います。

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