少女まんが雑誌『りぼん』で連載された、柊あおいの名作『耳をすませば』が清野菜名と松坂桃李をW主演に迎えて実写化され、10月14日に公開される。“完全オリジナルストーリー”となる10年後の物語に原作の世界観を見事に再現した中学生時代の物語を加えた二重構造で描く。なぜ今、実写映画化したのか、原作やアニメとどこが違うのか。企画を立て、撮影に同行した西麻美プロデューサーにその思いを聞いた。(取材・文/ほりきみき)

音と世界観にこだわった撮影と編集

──雫の心の音を水が落ちる音と映像で表現されています。

子どもの頃は小説を読んだり、バロンに会ったりするとぽちゃんという音が聞こえていました。それが次第に聞こえなくなります。

中盤くらいに大人の雫が編集長から「園村先生に作品を直してもらって来い」と言われて、本意ではない直しをお願いするシーンがあります。カメラが喫茶店のカウンターの内側からテーブル席に向かい合って座る雫と園村を捉えたカットがあり、手前のコーヒードリッパーからコーヒーが落ちるのが映っていました。変わった画角だなと思っていたところ、完成した作品には濁った感じの落ちる音が付いていたのです。雫の心が濁って音が聞こえなくなったのを表現していました。平川さんと音響効果の大塚智子さんがかなりこだわって調整したのですが、緻密さに驚きました。

ぽちゃんの音は水が落ちるシーンでないところでもこっそり入れています。雫の心が動いたときにちゃんと聞こえるのです。耳をすまして、ぜひ探してください。

また、音で季節感を際立たせています。中学生の雫が杉村と神社で話すシーンには風の音や小川のせせらぎが付いています。中学生パートは大人が思い出しているという設定。人間って美しい思い出は美化されがち。映像として小川が映っているわけではないですが、楽しかった過去がフラッシュバックするような感じを音でつけています。

──地球屋のロケーションは作品の世界観そのままで驚きました。よく見つかりましたね。

とにかくいろいろなところを見に行きました。基本的にはかわいい雑貨屋さん。次第に範囲を広げて、耳すまファンの方がやっているジェラート屋さんにも行きました。しかし、なかなか「これだ!」というところが見つからず、「外観もセットを組むしかない」と話していたときに、平川監督が検索で佐倉マナーハウスを見つけ出しました。

行ってみるとアプローチやまわりの草木の感じがイメージ通り。もちろんCGで草木を足していますが、ほぼ完璧でした。雑貨屋さんなので内装もそのまま使わせていただこうと思ったのですが、置いてある雑貨が地球屋のものとは雰囲気が違う。「全部、入れ替えるくらいなら」と内装はセットを組みました。

美術の相馬直樹さんには原作のイメージでデザインを描いていただきましたが、中学生の雫の夢の世界に入り込んだ感じがすごくよく出ていました。猫の人形のバロンは人形作家の奥田拓郎さんに作ってもらいました。作るにあたって、原作を参考にしていますが、柊先生がバロンのモデルにした猫の人形の写真も見せていただいています。

画像: 音と世界観にこだわった撮影と編集

歌詞とストーリーの親和性で選んだ「翼をください」

──主題歌は杏さんがカバーする「翼をください」ですね。遠距離恋愛をする雫と聖司にぴったりだと思いました。

原作は画家設定なので音楽は関係なく、アニメでは「カントリー・ロード」が使われています。自分たちも作品に合う曲を見つけたい。カーペンターズなどいろんな案が出たのですが、普通の中学生が「一緒に歌おう」というときに洋楽ではハードルが高すぎる。みんなが特別なことをしなくても触れたことがある、合唱コンクールで歌うような曲がいいのではないかとなりました。

「翼をください」は歌詞とストーリーの親和性で選びました。他の作品でも使われていますが、この作品に合うアレンジをすればいいのではないか。編曲を武部聡志さんにお願いし、郷愁感を念頭に置いて80年代感を出してもらいました。

──なぜ杏さんだったのでしょうか。

杏さんは音楽活動もされていて、以前、『おかえり、はやぶさ』でイメージソングを歌っていただいています。直近でもCMで名曲をカバーされ、すごく澄んだ歌声が素敵でした。もちろん、本業の歌手の方も考えましたが、それ以上に杏さんの透明感のある歌声と表現力が魅力的だったのです。

──これから作品をご覧になる方に向けてひとことお願いします。

『耳をすませば』は不朽の名作です。私もファンの1人ですから、“雫と聖司の物語は中学生で終わっているから美しい”という意見もよく分かります。実写映画化に賛否両論が出るのは覚悟しています。それでも“10年後、2人はどうなっているのか”という夢物語みたいなことを考えてしまいます。もちろん、答えがこれしかないとは思っていません。大人の杉村が言っていますが、1つ1つ選択して、自分たちの今がある。2人が選択した先にこういう未来があってもいいんじゃないかという1つの形として面白がって観ていただければ嬉しいです。

PROFILE
西麻美

1987年生まれ、福岡県出身。
テレビドラマのプロデューサーを経て『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(18/柴山健次監督)で劇場映画プロデューサーデビュー。ほか代表作に『居眠り磐音』(19/本木克英監督)、『記憶屋 あなたを忘れない』(20/平川雄一朗監督)など。

映画『耳をすませば』10月14日(金)公開

画像: 映画『耳をすませば』本予告【10.14 ROADSHOW】 www.youtube.com

映画『耳をすませば』本予告【10.14 ROADSHOW】

www.youtube.com

<STORY>

月島雫は読書が大好きで元気いっぱいな中学生の女の子。図書貸出カードに自分より先に書かれている天沢聖司という名前が頭から離れなかった。

あるきっかけで2人は“最悪の出会い”を果たすものの、聖司の優しい一面を知り、雫は次第に惹かれていく。大きな夢がある聖司に背中を押され、雫も自分の夢を胸に抱くようになる。

ある日聖司から夢を叶えるためイタリアに渡ると打ち明けられ、離れ離れになってもそれぞれの夢を追いかけ、また必ず会おうと誓い合う。

それから10年の時が流れ、雫は児童書の編集者として出版社で働きながら、作家になる夢を追い続けていたが、思うようにいかずもがいていた。もう駄目なのかも知れないという気持ちが大きくなる度に、遠く離れたイタリアで奮闘する聖司を想い、自分を奮い立たせていた。

一方の聖司も順風満帆ではなかった。戸惑い、もどかしい日々を送っていたが、聖司にとっての支えも同じく雫だった。

ある日、雫は仕事で大きなミスをしてしまい、仕事か夢のどちらを取るか選択を迫られる。答えを見つけに向かった先は―――。

『耳をすませば』
2022年10月14日公開
原作:柊あおい「耳をすませば」(集英社文庫<コミック版>刊)
監督・脚本:平川雄一朗
出演:清野菜名 松坂桃李
山田裕貴 内田理央 / 安原琉那 中川翼 荒木飛羽 住友沙来
音尾琢真 松本まりか 中田圭祐 小林隆 森口瑤子 / 田中圭
近藤正臣
主題歌:「翼をください」杏(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松竹
©柊あおい/集英社 ©2022『⽿をすませば』製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/mimisuma-movie/

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