ダイアナ元妃を主人公にした新作『スペンサー ダイアナの決意』では英国王室の知られざる側面が描かれていますが、本作をもっと理解するために見ておきたい英国王室の映画をリコメンド。脈々と受け継がれてきたロイヤルファミリーの長い歴史の中には愛や欲望など様々な感情・策略・絆を経て、いまの王家に繋がることを考えながらこうした作品を見ていくと、これまで以上に英国の歴史に興味がわいてくるかもしれません。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:© 2008 GK Films, LLC. All Rights Reserved.

『ダイアナ』(2013)

画像: ©2013 Caught in Flight Films Limited. All Rights Reserved.
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監督: オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演: ナオミ・ワッツ、ナヴィーン・アンドリュース

ここで描かれるダイアナの物語は、チャールズとの離婚を決意してプリンセスから一人の女性へと自立していく時期が中心になっている。そんな時に出会った心臓外科医との秘めた恋。弱者の気持ちを理解し人道支援に走る姿など自分の足で人生を歩き始めたダイアナだったが、容赦ないパパラッチの追跡は止まらず、運命の時は刻一刻と迫っていた……。王子たちとは自由に会うこともできず、孤独と闘うダイアナが次の生きる目的を掴もうとする姿は、続編的意味合いを込めて『スペンサー ダイアナの決意』に続けて見てみたい。

『クィーン』(2006)

画像: © 2006 Granada Screen( 2005) Ltd./ Pathe Renn Productions SAS/ BIM Distribuzione
© 2006 Granada Screen( 2005) Ltd./ Pathe Renn Productions SAS/ BIM Distribuzione

監督: スティーヴン・フリアーズ
出演: ヘレン・ミレン、マイケル・シーン

こちらはダイアナ急死の悲劇を先日亡くなったエリザベス女王側から見るとどうなるか?という作品。悲劇の直後、英国民の関心はたびたび噂されたエリザベス女王とダイアナの不仲説に向けられたが、何の反応も見せない王室に民衆の不信感は増大する……。事故後の1週間の間に見せたエリザベス女王の本当の姿、ダイアナへの複雑な想いを捉える。

『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』(2015)

画像: © GNO Productions Limited.
© GNO Productions Limited.

監督: ジュリアン・ジャロルド
出演: サラ・ガドン、ベル・パウリー

1945年5月8日、ヨーロッパ戦勝記念日。勝利に沸くロンドン市内に当時19歳の王女だった時代のエリザベス2世がお忍びで外出した一夜の物語を実話を基に描く。まだ無邪気だった王女が次の女王になる自覚と覚悟が芽生えるきっかけともなった逸話として、比較的重厚で悲しいトーンの多い英国王室映画の中では珍しくワクワクするような人間賛歌。

『英国王のスピーチ』(2010)

画像: © 2010 See-Saw Films. All Rights reserved.
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監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ

先般亡くなったエリザベス2世の父であるジョージ6世を主人公にしたアカデミー賞4部門受賞作。かつてから吃音に悩んでいたジョージ6世は、“禁じられた恋”のために王位を捨てた兄エドワードに代わって国王になるが、ナチス・ドイツとの開戦を前に国民の心を一つにするためのスピーチを行うことになる。困難を克服していく王の姿が感動を呼ぶ。

『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』(2011)

画像: © 2011 W.E. COMMISIONING COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
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監督: マドンナ
出演: アンドレア・ライズボロー、ジェームズ・ダーシー

1998年のニューヨークに暮らす女性が1936年、英国王エドワード8世が自らの地位を捨ててまで愛を選んだ米国人女性ウォリスに魅了される、時を超えたWヒロインもの。マドンナ監督は『英国王のスピーチ』(2010)では“困った人”として描かれたエドワードが選んだウォリスの知られざる素顔を探り、スキャンダルが世紀のロマンスに変わる瞬間を捉える。

『Queen Victoria 至上の恋』(1997)

画像: Photo by Mark Tillie
Photo by Mark Tillie

監督: ジョン・マッデン
出演: ジュディ・デンチ、ビリー・コノリー

エリザベス2世の高祖母に当たり、その在位はエリザベスに次いで長いヴィクトリア女王。夫アルバート公死去の後、ふさぎ込む女王を公務に戻すため、アルバート公の使用人であったジョン・ブラウンに白羽の矢が立つが、女王は思いがけず型破りなブラウンを寵愛する。デンチは後に『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(2017)で再度同女王を演じた。

『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)

画像: © 2008 GK Films, LLC. All Rights Reserved.
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監督: ジャン=マルク・ヴァレ
出演: エミリー・ブラント、ルパート・フレンド

18歳で即位し19世紀英国を最強国家に導いたというヴィクトリア女王の若き日を描く。特にここでは彼女の心の支えともなったアルバート公との出会いと恋の芽生え、幾多の困難を越えて二人の愛が大きく強く育っていき、華麗なるヴィクトリア朝が生まれる過程を捉える。ちなみにヴィクトリアの孫のジョージ5世がエリザベス2世の祖父に当たる。

【チェック】ドラマでも英国王室を描く秀作が

画像: 2022年9月8日死去したエリザベス2世 Photo by Getty Images

2022年9月8日死去したエリザベス2世

Photo by Getty Images

これらの映画以外にもドラマでまず見るべき作品に挙げられるのが「ザ・クラウン」( Netflix)だろう。9月8日に亡くなったエリザベス2世の治世を描くこのシリーズでは、まずフィリップ公との結婚から父ジョージ6世の死により女王即位、戴冠式などが描かれ、シリーズを追うごとに徐々に現代へと近づいてくる。これまでエマ・コリンが演じたダイアナ役はシーズン5から「TENET テネット」(2020)のエリザベス・デビッキが引き継ぐ。また2023年配信予定の最終第6シーズンは女王崩御に敬意を払い製作延期になる可能性もあるとか。

この秋、こんな英国映画の新作も劇場でファンを待っている!
「Kino Festival 2022」

2年ぶりに開催が決定した「Kino Festival 2022」(9月30日~)では厳選された様々なジャンルの外国映画を12作連続公開(各作品1週間ずつ)。その中でイギリス映画もファン注目の3作が劇場で上映されます。

9月30日(金)より
『シークレット・ガーデン』(2020)

監督:マーク・ミュンデン 
出演:コリン・ファース、ジュリー・ウォルターズ、ディキシー・エゲリック

有名なバーネット女史の「秘密の花園」を映画化。両親が亡くなり、血の繋がらない伯父の元に預けられることになった孤独な少女メアリー。伯父の家の広い屋敷を散策するうちに、閉ざされた庭園を見つける。そこに従兄弟のコリンや友人のディコンも加わり、荒れ放題だった庭園の秘密を解き明かしていく。ファースは伯父クレイヴンを演じている。

10月14日(金)より
『チルドレンズ・アクト』(2017)

画像: 10月14日(金)より 『チルドレンズ・アクト』(2017)

監督:リチャード・エアー
出演:エマ・トンプソン、フィン・ホワイトヘッド、スタンリー・トゥッチ

夫ジャック(トゥッチ)との結婚生活が苦境にある中、高名な裁判官のフィオナ(トンプソン)のもとに信仰から輸血を拒む青年アダム(ホワイトヘッド)の審判が持ち込まれる。成人には治療を拒否する権利があるが、彼は成年となる18歳まで数か月足りなかった。面会を通じて青年との間には不思議な絆が生まれていく。

11月4日(金)より
『シックス・ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』

画像: 11月4日(金)より 『シックス・ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』

監督:アンディ・ゴダード
出演:エディ・イザード、カーラ・ジュリ、ジェームズ・ダーシー

第二次世界大戦前夜。ナチス・エリートの子女たちが通う英国の海岸にある寄宿学校から英語教師がカメラと共に姿を消した……その数日後、新しい英語教師としてこの学校に就任したミラー(イザード)だが、そこで元教師の死体が発見され、ある疑惑が浮上する。ベテランのジュディ・デンチ、ジム・ブロードベントも共演。

INFORMATION

「Kino Festival 2022」ではこれらのイギリス映画の他、各国から様々なジャンルの9作もラインナップ。今年はkino cinéma横浜みなとみらい、kino cinéma立川髙島屋S.C.館、kinocinéma天神の全国3会場で開催される。各作品1週間限定上映。

  • 『ブレイキング・ニュース・イン・ユバ・カウンティ』(アメリカ/アリソン・ジャネイ主演)10月7日より
  • 『イントゥ・ザ・ラビリンス』(イタリア/ダスティン・ホフマン主演)10月21日より
  • 『スモール・カントリー』(フランス=ベルギー/ジャン=ポール・ルーヴ主演)10月28日より
  • 『ロスト・プリンス』(フランス/オマール・シー主演)11月11日より
  • 『バーデン』(アメリカ/ギャレット・ヘドランド主演)11月18日より
  • 『パラダイス・ヒルズ』(アメリカ/エマ・ロバーツ主演)11月25日より
  • 『マイ・ドッグ・ステューピッド』(フランス/イヴァン・アタル主演・監督)12月2日より
  • 『パーフェクト・ナニー』(フランス/カリン・ヴィアール主演)12月9日より
  • 『ワンダー・ボーイ』(フランス/オリヴィエ・ルスタン主演)12月16日より

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