最新作『貞子DX』の公開で再び脚光を浴びるホラー・ヒロイン“貞子”。これだけ恐ろしいにもかかわらず、観客を楽しませ、何度も蘇る人気の秘密は何でしょうか? これまでのシリーズ過去作品を振り返り、貞子や犠牲者たちを演じたヒロインの変遷などもまじえながら、日本が誇るホラーの歴史を紐解いてみましょう。(文・久保田明/デジタル編集・スクリーン編集部)
日本を飛び出してハリウッドでも製作され大ヒット
つづく『貞子vs伽椰子』(2016)は白石晃士監督による貞子と伽椰子という2大ホラー・キャラが登場するクロスオーバー作品だ。その呪いを受けた山本美月と玉城ティナが、貞子と伽椰子の怨念を激突させて両方を消滅させようとする奇手を考える。こうなると『キングコングVSゴジラ』だが、互いの怨みの存在はそう簡単には滅びないのだ。
『貞子3D』と『貞子vs伽椰子』が方向転換したためか、つづく『貞子』(2019)は久々に中田秀夫を監督に迎え、シリーズを本来の路線に戻した怪異譚だった。
SNS時代の貞子の呪いという装いはあるが、『凶悪』(2013)や『日本で一番悪い奴ら』(2016)を手がけた今井孝博の撮影が、ねっとりとした海面の様子やヒロイン、池田エライザの瞳の奥の光をみごとにとらえてムードたっぷり。『貞子』の物語は呪うほうも呪われるほうも互いに運命を抱いた存在であることを教えてくれる。ヒロイン、池田エライザの大きな瞳も、貞子役の南彩加のアンニュイなムードもシリーズをよく盛り上げている。
最後にハリウッドで製作された連作3本に触れておこう。『ザ・リング』(2002)と『ザ・リング2』(2005)はナオミ・ワッツ主演のヒット作。3作目の『ザ・リング リバース』(2017)を含め、元の『リング』をよく研究している。けれど、サマラ=貞子はただの悪の化身ではないんだよなあ。これは文化の違いなのかもしれない。それも含めていろいろ考えることのできる陰鬱なホラー映画ではあった。