呪いのビデオとそこに映る
謎の女性“貞子”の怖すぎる設定
観た者が一定期間ののちに必ず死に至る呪いの映像。日本を代表する恐怖のアイコンになった“貞子”がこの世に生まれてから、四半世紀近くの時間が過ぎた。ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100」にも選出されるなど時代と国境を超えて支持されるホラー・ヒロインも珍しい。ここでは『貞子DX』に至るまでの過去作品全11本を振り返り改めてその恐怖の歴史を訪ねてみよう。
貞子は1998年、『リング』と『らせん』のヒットともに映画界に現われた。原作は共に鈴木光司の人気小説。演出は中田秀夫(『リング』)と飯田譲治(『らせん』)で、“デュアル・ホラー・ムービー”と題されての二本立て公開がされた。
共通している登場人物もいるが、前者はホラー・ショッカーとして呪われた存在=山村貞子の運命を強調した因縁話になっており、後者は被害者の死体から発見された未知のリング・ウィルスをめぐるSFタッチの装いになっている。もちろん両者ともに死の伝搬者である貞子は登場するが(『リング』では伊野尾理枝が、『らせん』では佐伯日菜子が演じた)、二本立て興行だったこともあり、対照的なアプローチがなされた作品になっているのだ。
ズリズリと這い寄ってくる貞子の気味の悪さ、荒れた映像で捉えられる井戸の様子などシリーズならではのトピックとなったビジュアルはこのあとのシリーズを特徴づけるものとなった。
もうひとつ、『リング』が生みだした大きな特性は原作では男性だった主人公を女性に変えたことだろう。これによってヒロイン(多くは我が子を守る存在)が怨念のモンスター、貞子に追われ、その謎を解かんとする存在となった。
『リング』では松嶋菜々子が、『らせん』では主人公の安藤(佐藤浩市)が知り合った高野舞(中谷美紀)がストーリーを引っぱってゆく。以降の作品はすべてヒロインが恐怖と対峙する物語となった。貞子の歴史は戦う女性を描くヒロインのそれでもあるのだ。『リング』には第一の犠牲者として公開当時17歳だった竹内結子も出演している。