「Dr.コトー診療所」は東京から僻地の離島に赴任してきた外科医“Dr.コトー”こと五島健助の奮闘を描いたドラマシリーズです。医療ヒューマンドラマの原点として語り継がれ、今なお人々に愛されています。そんな人気シリーズが16年ぶりに映画『Dr.コトー診療所』として新たな物語を紡ぎました。蒼い空と美しい海に囲まれ、雄大な自然を内包する島で、今もなお、そこに生きている人々。時を経て変わるもの、変わらないもの、そして何よりも尊い“人と人とのつながり”を丁寧に描いています。公開を前にドラマシリーズでも演出を務めた中江功監督にインタビューを敢行。主人公を演じた吉岡秀隆さんについて、作品のテーマなどについて語っていただきました。(取材・文/ほりきみき)

ある孤島にいる医師と島民の話を0から作る

──映画化する際に何か意識されたことはありましたか。

一作品として誰もが見られることを意識し、ある孤島にいる医師と島民の話を0から作りました。僕はずっとドラマをやってきたので、連ドラを見ていないと話がわからないという風にはしたくはなかった。“あの時の〜”という話は見ていた人は楽しめますが、連ドラを見ていないと見ちゃいけないのかと思われてしまいます。

テレビは気楽に見られるだけに、途中でチャンネルを変えられてしまうリスクがあります。お金を払って見る映画は余程のことがない限り、途中で席を立つことはありません。だからこそ、一回見始めたら最後までその世界観に浸ってもらいたい。スクリーンで見るので、単純に映像の広さ、美しさはドラマとは違う空気感で見せられるだろうなと思って、その点はいろいろ研究しました。

音作りもテレビや配信で見るのとは違うようにしたいと思い、かなり気を使いました。島独特の鳥やヤモリなどの鳴き声を上手く活かしています。優秀なスタッフに助けられました。

画像4: ©山田貴敏 ©2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

©山田貴敏 ©2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

──今回の映画化は今後のドラマ作りに何かプラスになりましたか。

今回の経験で得たことはあると思います。ただ、その場にならないとわからない気がします。合成の技術はテレビでもやっていましたが、映画は規模が違う。最近、合成のレベルがぐんと上がって、カメラもよくなっているのを体感しました。それはドラマにも活かしていきたいと思います。

主題歌「銀の龍の背に乗って」はヒーローの歌

──舞台となった与那国島には変化がありましたか。

自衛隊が島に入ったので、基地や宿舎ができて、島としては人口が増えていました。Wi-Fiが通じるようになり、ホスピタリティもよくなっていました。ただ、ドラマで使っていたロケ地が使えなくなってしまったところがあったのです。例えば、コトー先生が自転車で走っている姿を空撮で撮っていたところ。道の横が全部基地になり、今回は残念ながら、一切撮れませんでした。でも、島の空気感は変わっておらず、ほっとしました。

画像5: ©山田貴敏 ©2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

©山田貴敏 ©2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

──中島みゆきさんが歌う主題歌「銀の龍の背に乗って」はシリーズの代名詞と言っても過言ではありません。なぜ、中島みゆきさんに主題歌を依頼されたのでしょうか。

このドラマの少し前に「親愛なる者」というドラマをやり、途中の回と最終回にみゆきさんが出演されました。僕はチーフ助監督だったので、現場で話をする機会も多かったのですが、みゆきさんの女優としての佇まいに圧倒されたのです。しかも、お父さまが産婦人科医だったこともあって医者に対して思い入れがあり、打ち合わせで「医者を演じるならこういうことを言わなきゃいけないのではないか」という話をされたのです。

その考えをうかがい、「歌以外のお仕事に対してもポリシーがある方だな」と感じました。そんなこともあって、この作品は医者が主人公なのでみゆきさんに頼んでみようと思ったのです。吉岡さんが「北の国から」に出ていたので、勝手に北海道繋がりのイメージもあったのです。良く考えると繋がってないのですが(笑)。

さっそく、みゆきさんのところにお願いにうかがったのですが、「お久しぶりです。南雲律子です」と言われて驚きました。「親愛なる者」のときのみゆきさんの役名です。言葉を紡ぐ人は違うなと感じました。主題歌の件は快諾していただき、脚本を読まれたみゆきさんから「これは傷ついたヒーローの話ということでいいですか」と聞かれたので、それでお願いしました。素晴らしい歌を作っていただいたと思っています。

脚本の読み方や撮影の仕方は「Dr.コトー診療所」にルーツ

──監督はこれまでにいくつものヒット作をドラマで撮られてきましたが、映画化されたのは「Dr.コトー診療所」が初めてです。この作品は監督にとって特別な作品なのでしょうか。

この作品をやったあとは“「Dr.コトー診療所」の”という肩書きをつけて紹介されることが多くなったので、「俺がやっているのは「Dr.コトー診療所」だけじゃない」と最初のころは反発する気持ちもありました。

元々、僕は連続ドラマを映画化することに否定的でした。テレビだから見られるもの、映画だから見られるものがある。ドラマはドラマ、映画は映画でやるべきだと思っていたのです。でも、今回は「コトー」からの最後のメッセージなので長く残る映画で伝えることができてよかったと思ってます。

「Dr.コトー診療所」で吉岡秀隆に出会って、役者の佇まい、作品への向き合い方、台本の読み方を教えてもらいました。今回、映画を撮ってみて、「Dr.コトー診療所」に僕自身の脚本の読み方や撮影のルーツがあり、ベースなんだと改めて感じました。結果的に特別な作品になりました。

画像: 映画『Dr.コトー診療所』中江 功監督インタビュー/吉岡秀隆に“Dr.コトー”として1つの区切りをつけさせたい

PROFILE
中江 功

1963年6月13日生まれ 宮城県出身
【主な監督・演出作品】
『冷静と情熱のあいだ』(2001年)監督
「Dr.コトー診療所」シリーズ(2003、2004、2006年/フジテレビ)演出
『シュガー&スパイス 風味絶佳』(2006年)監督
『ロック 〜わんこの島〜』(2011年)監督
「教場」シリーズ(2020、2021年/フジテレビ)演出・プロデュース

映画『Dr.コトー診療所』2022年12月16日(金)全国東宝系にてロードショー

<STORY>
日本の西の端にぽつんと在る美しい島・志木那島。本土からフェリーで6時間かかるこの絶海の孤島に、19年前東京からやってきた五島健助=コトー(吉岡秀隆)。以来、島に“たったひとりの医師”として、島民すべての命を背負ってきた。長い年月をかけ、島民はコトーに、コトーは島民に信頼をよせ、今や彼は、島にとってかけがえのない存在であり、家族となった。数年前、長年コトーを支えてきた看護師の星野彩佳(柴咲コウ)と結婚し、彩佳は現在妊娠7ヶ月。もうすぐ、コトーは父親になる。二人と共に暮らす彩佳の両親・正一と昌代、漁師の原剛利、ご意見番の重雄や漁師仲間、スナックを営む茉莉子、診療所を手伝う和田らが、今日もそこで静かに暮らしている。

2022年現在、日本の多くの地方がそうであるように、志木那島もまた過疎高齢化が進んでいる。現実を前にしながらも、コトーの居る診療所があればまあ大丈夫だろうと、皆心のどこかで思っていた。16年間経った今も蒼く広がる海や水平線、波の音、夜空の星の輝きは変わらないが、島は少しずつ変化している。そんな診療所の穏やかな日常にもある変化が忍び寄っていることを、誰もまだ気づいてはいない―

『Dr.コトー診療所』
2022年12月16日(金) 全国東宝系にてロードショー
原作:山田貴敏「Dr.コトー診療所」(小学館)
監督: 中江 功
脚本: 吉田紀子
主題歌:中島みゆき『銀の龍の背に乗って』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス/ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
出演: 吉岡秀隆、柴咲コウ、時任三郎、大塚寧々、高橋海人(King & Prince)、生田絵梨花、蒼井優、神木隆之介、伊藤歩、堺雅人、大森南朋、朝加真由美、富岡涼、泉谷しげる、筧利夫、小林薫
※高橋海人さんの「高」は正しい文字が環境により表示できないため、「高」を代用文字としています。
配給:東宝
©山田貴敏 ©2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会
公式サイト:https://coto-movie.jp/

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