「電波少年」シリーズでは人気バラエティー番組を演出・出演。欽ちゃんのドキュメンタリー映画では監督も務めるなど、今なお幅広い活躍をしている、伝説の「Tプロデューサー(T部長)」こと土屋敏男さんが、幾多のTVドラマから映画を紐解くおすすめのお話などや予測不可能な未知なお話等、テレビと映画がこれからどうなっていくのか?を中心にさらに熱く、紹介していきます。今回はカルト的人気ドラマ「ブラック・ミラー」について。必見です。

土屋 敏男

今年9月末で日本テレビを退社。日本テレビ社長室R&Dラボ社外アドバイザー。ひまわりネットワーク(株)アドバイザー。WOWOW(株)新規事業アドバイザー。みんなのテレビの記憶(同)代表社員。Gontents(同)代表社員。1964TOKYO VR(社)代表理事。

僕がお薦めする年末年始見てもらいたい作品「ブラック・ミラー」とは

今回は編集長からリクエストをいただいた。

「年末年始に見るのをお勧めする作品」なるほど!

大学の授業で映像業界を目指す学生に薦めるならば、見ておいた方がいいと思う映画を羅列することになるだろう。それも絶対「早回しで見るな!」と注文をつけて。例えば『ガープの世界』(1982)とか『イージー・ライダー』(1969)、はたまた先日安楽死をしたゴダールの『勝手にしやがれ』(1960)も映像を志すなら見ておかなくてはならないだろう。

日本では『青春の殺人者』(1976)『太陽を盗んだ男』(1979)の長谷川和彦監督ものは見ておくべきだしもちろん黒澤明監督もの等々まあ際限はないがつらつらと挙げることになるだろう。がしかし、この「スクリーン」の読者に向かって今更そんなことをする必要もない。

ということで『年末年始、大掃除も最近はしないしおせちも宅配で配達される、ひっきりなしにお客さんが年始の挨拶に来るなんてこともない。近所の神社にお詣りしたらもう特にやることはなし。テレビも「紅白歌合戦」も知らん歌手ばかりだし…とお嘆きの諸兄に“そんなに重くもなく感情を号泣するほど揺さぶられる訳ではないが「ん?」と思ったり、「なるほど!」とか視聴後の感想がストンと胸に落ちそうな、餅が喉に引っ掛かる可能性がある時期なので腹落ちしそうなセレクト作品”をお送りいたします。』

ジャンルは近未来もの。そして連続ものではなく1話完結。ネ? 1話完結の方がこういう時期にはいいですよね。なんと5シーズンもあって全作品数が22エピソード。平均1時間だから全部見ても22時間。年末年始にちょうどいい感じではないでしょうか?

さて! その作品の名前はNetflixの「BLACK MIRROR(ブラック・ミラー)」。

画像: 僕がお薦めする年末年始見てもらいたい作品「ブラック・ミラー」とは

「ブラック・ミラー」
Netflixシリーズ「ブラック・ミラー」シーズン1~5独占配信中

テレビ映画部門、6つのエミー賞に輝くSFシリーズで2011年から放送されている英国のカルト的人気シリーズ。進化を遂げるテクノロジーがもたらす世にも奇妙な世界を1話完結のオムニバスで綴るSF作品。現在シーズン5まで配信中。

さてここでなんで僕が「近未来もの」が好きなのかという話を一つ。この話で興味を持ってくれる人もいるかもしれないからね。

「近未来もの」とは「パラレルワールド」の話である

映画にはSF映画というジャンルがあって古くは『月世界旅行』(1902)から最近では『アバター』もそうだし映画史的には『猿の惑星』のインパクトもすごかった。つまり明らかに絵が現代ではないという設定のもの。多くは別の惑星だったり宇宙船の中であったり。

それに対して「近未来もの」は絵は現代とあまり変わらない。服装も全身メタルになっていないし街並みもそんなに変わらない。しかし突然中空にキーボードが現れたり「ん?」というようなシーンが入って「あ、これは近未来なのだな」と見ている人にわかるという入り口が常套手段。

つまり今にはない“何か”が発明されて、それによって違う世界のルールが構築され、違う習慣が当たり前になっている世界。つまり「今」僕たちがいる世界との違いは“たった一つのテクノロジー”だったりするのが「近未来もの」であり、つまりそれはこれからあるかもしれないが、それと同時に“そのテクノロジーが発明された”もう一つの世界。パラレルワールドだということなのだ。

そしてこのパラレルワールドは僕たちが生きているこの世界もその一つだと思うとこのジャンルの作品に興味が湧くし、まさに僕がこのジャンルを好きな理由ってそれなのだ。

今僕たちが生きているこの世界もパラレルワールドである理由

例えばスティーブ・ジョブズが『iPhoneを生み出していなかったら』と考えると今の世界が全く変わっていたと想像することは容易だ。インターネットは相変わらずPCで扱われせいぜい携帯はBlackBerry(ブラックベリー)程度だとしたら世界の全てが手のひらから入ってくるという世界はなかった訳だし僕がいた地上波テレビ業界もこんなに追い詰められることはなかった。

じゃあジョブズがiPhoneを生み出したのは歴史の必然かというと彼は知っての通りAppleを一度追い出されている。彼がカムバックしてなかったら、そのためにはAppleが経営危機になることが必要で…などと考えると今のこの世界は非常にレアな確率の上に立っていることがわかる。

アインシュタインが相対性理論を確立していなかったら?という大きなものから欽ちゃんが「テレビはリアルだ」と見つけてなかったら? 全ての今の世界を成立させている「ある天才による発明」がなかったら全く違う世界になっていたのだ。

だからこの「BLACK MIRROR」は僕たちにとって“あり得たかもしれない世界”のお話です。例えばシーズン3の「ランク社会」はSNSでの評価が日々の生活を支配する社会のお話で主人公が評価を上げようとするために起こる悲喜劇の物語ですが本当にすぐ隣にある話だと思いませんか?

年末年始によろしかったらご覧ください。

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