『ヒットマンズ・レクイエム』の後日譚ともいえる『イニシェリン島の精霊』
──『ヒットマンズ・レクイエム』の役に比べると、愛想が少ないと思えますが。
グリーソン:映画の脚本がコリンとの普段の関係にも影響するのではないかと心配でした。以前、役に入りすぎて、誰も近寄らなくなり、話かけられなくなったことがあったのです。今回は役になりきろうとし過ぎないほうがよいだろうと思っていました。
ファレル:一人になりたいときは誰にでもあります。そう思っている人のところにわざわざ行って、「撮影以外のときは仲良くやっていきましょう」なんてずうずうしいことは言いませんよ。
ブレンダンに再会できたことはうれしかったです。心が安らぎました。ただブレンダンが脚本をどう解釈して、役をどう突き詰めようとしているかが伝わってきていたので、「どこまで怖い感じでいくのかな」とちょっと心配していました。でも、その勇気は大事。私もそうあらねばと思いつつ、踏ん切りがつかずにちょっと緊張していました。
それにしても、『ヒットマンズ・レクイエム』であれほど一心同体だった2人が、今回は喧嘩別れになるなんて面白いですね。『ヒットマンズ・レクイエム』はぶっ飛んでいるものの、心からの敬意と友情、そして究極の愛の物語でした。
『イニシェリン島の精霊』も愛と友情の物語ですが、その全てを失うことがあるかもしれないと問いかけています。設定は『ヒットマンズ・レクイエム』の90年前になっていますが、実は10年後くらいの後日譚なのです。愛と友情が失われた後の暗黒面を描いています。
グリーソン:撮影のときに自分の世界に入り込む人と、「そんなことは意味が無い」と考える人がいます。私の場合は、その人のやり方で呼吸を合わせようとしてくれる人の方がやりやすい。コリンが撮影に合流したとき、「そんなに、よそよそしくしないでくれよ」と言ったことを覚えています。日中、ずっと撮影しているときは違いましたけどね。
ファレル:毎日、砂浜に線を引いて自分の縄張りを描き、「立ち入るな」と心理学的なサインを発しても撮影は進みません。私がオフのときもありましたし、あなたがオフのときもありました。万事順調でしたね。
グリーソン:役者同士の馬が合わないからといって、誰かを映画から降板させる必要はありません。